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2015年3月23日月曜日

マタイ受難曲 Part 1 CD紹介

ついに来たという感じ・・・ついに、「マタイ受難曲」をタイトルにしてしまいました。

教会音楽を聴ぎだした最初の頃に、とりあえず聴かないといけない曲の一つとして取り上げたことがありますが、実はその頃はほとんど関係する地域はゼロの状態でした。

1年間、ほとんどこの手の音楽ばかりを聴いていたのですが、知れば知るほど「マタイ受難曲」のすごさというか、素晴らしさに圧倒されて、それについて何かを書くなんてことはためらわずにはいられませんでした。

 去年の待降節の時に、バッハの四大宗教曲について整理をしておこうと思ったのですが、ついにマタイだけは手を出せずに降誕祭を迎えてしまったのです。とはいっても、来週は聖金曜日が来てしまいますので、もうこれ以上先送りはできません。

断片的には、これまでにも少しずつ取り上げてきたわけですが、一般的には「人類最高の音楽遺産」というような賛辞が送られてきたのが、ヨハン・セバスチャン・バッハが作曲した「マタイ受難曲」です。

ドイツ・バロックの開祖、シュッツにも同名曲はありますし、バッハの同時代のテレマンも作曲しています。バッハの音楽がなぜそこまで讃えられるのか、きっちりと理解するのは本当に難しいことです。

幸いなことに、バッハ研究の第一人者である礒山雅氏の名著(マタイ受難曲、1994年、東京書籍)がありますので、実際のところこれを読めば、この曲に関するほぼすべてのことがわかることになっている。

当然、amazonの古書で手に入れて読みだしたのはいいのですが、キリスト教への理解が無い事には文面だけで理解しても、やはりピンっとこないものです。これは、この曲の最初の出会いから芽生えた苦手意識も関係しているのかもしれません。

クラシック音楽をそれほど集中して聴いていなかった頃に、最初に気に入った作曲家がバッハだったので、当然一番の有名曲ということで「マタイ受難曲」も聴いたのですが、これがさっぱりよくわからなくて、声楽に対しても避けるようになってしまいました。

最初に聴いたのは、メンゲルベルク指揮の1939年の録音で、この曲の録音としては「歴史的名盤」とされているものでした。古いライブ録音にも関わらず、観客がすすり泣く声も収録されているという有名な逸話があったりします。

ところが、やはりどうがんばっても戦前の音質がいいわけがない。当然、歌がたくさん出てくるのですが、ドイツ語の歌詞など理解できるわけもなく、何を歌っているんだかさっぱりわからない。そんな状態で、とにかくやたらと長くて重々しい演奏ですから、いやもう聴いているのが苦行のようですらある。

それを救ってくれたのは、やはりJ.E.ガーディナーの演奏でした。古楽器を用いたピリオド奏法で、早めのテンポで、てきぱきと進行するマタイは新鮮でした。また、歌詞の内容についても、日本語訳などを参考に多少は理解できるようになると、もうこれはすごい音楽だと思うようになりました。

ガーディナー盤を皮切りに、いくつかのセットを購入したわけですが、それを並べてみると・・・

カール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団・合唱団、1958年
ヘフリガー(福)、エンゲス(イ)、ゼーフリート(S)、テッパー(A)、フィッシャー=ディースカウ(B)

フリッツ・ヴェルナー指揮、プフォルツハイム室内管弦楽団、シュッツ合唱団、1959年
クレープス(福)、ケルヒ(イ)、ギーベル(S)、ギュンター(A)、ヴェルダーマン(B)

カール・ミュンヒンガー指揮、シュトゥットガルト室内管弦楽団・少年聖歌隊、1964年
ピアーズ(福)、プライ(イ)、アメリング(S)、ヘフゲン(A)、ヴンダーリヒ(T)、クラウゼ(B)

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、イングリッシュ・パロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団、1988年
ロルフ=ジョンソン(福)、シュミット(イ)、ボニー(S)、モノイオス(S)、オッター(A)、チャンス(CT)、クルック(T)、クルック(B)、ハウプトマン(B)

ヘルマン・マックス指揮、ダス・クライネ・コンツェルト、ライニッシェ・カントライ、1995年
プレガルディエン(福)、メルテンス(イ)、フリンマー(S)、ヴィンター(S)、ノリン(A)、ヨッヘンス(T)、ヴィンマー(B)


ジョス・ファン・フェルトホーフェン指揮、オランダ・バッハ協会管弦楽団・合唱団、1997年
テュルク(福)、スミッツ(イ)、ツォマー(S)、ショル(CT)、イェルク・マンメル(T)、コーイ(B)
 
鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン、1999年
テュルク(福)、コーイ(イ)、アージェンタ(S)、ブレイズ(CT)、桜田亮(T)、浦野智行(B) 

ジョン・バット指揮、ダンディン・コンソート&プレーヤーズ、2007年(SACD)
マルロイ(福)、ブルック(イ)、ハミルトン(S)、オズモンド(S)、ウィルキンソン(A)、ギル(A)、ベネット(T)、スコット(B)、ウォーレス(B)、ブライス(B) 

ゲオルク・クリストフ・ビラー指揮、ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団、聖トーマス教会合唱団、2006年
ゼルビック(S)、シュワルツ(A)、ベツォルト(T)、ヴァイヒェルト(B)、ラスケ(B)

ジギズヴァルト・クイケン指揮、ラ・プティット・バンド、2009年(SACD)
ゲンツ(福)、クラッベン(イ)、サーマン(S)、クイケン(S)、ノスカイオヴァ(A)、ハルト(A)、フンツィカー(T)、ニーダーマイア(B)、


ルネ・ヤーコプス指揮、ベルリン古楽アカデミー、RIAS室内合唱団、2012年(SACD)
ギューラ(福)、ヴァイサー(イエス)、スンヘ(S)、ローテルベルク(S)、フィンク(A)、シャピュイ(A)、
レーティプー(T)、トゥリュンピ(T)、ヴォルフ(B)、カタヤ(B)

・・・と、いったところ。リヒター、ヴェルナー、ミュンヒンガーはモダン楽器。いずれもゆったりした演奏ですが、リヒターが最も荘厳さを前面に出した演奏。超名盤となっていますが、自分的には重すぎでそれほどいいとは思えない。

それ以降は、すべて古楽器によるものです。合唱のすばらしさは、ガーディナーに勝るものはありません。しかし、今となっては特徴があまりない感じですので、30年近くたっていますから、是非再録音をしてもらいたいと思います。

マックスは圧倒的に短い。全体的には早いわけですが、聴かせるところはしっかり聴かせるので、聴きやすい演奏です。フェルトホーヘンはSACDの新録音がありますが、持っているのは旧盤。可もなし不可もなしというところ。鈴木雅明は、日本人としては期待して聴きましたが、大変真面目なマタイですが、やはり目立った面白味には欠けます。

21世紀になってからの録音は、なかなか面白いところを突いてくるものがそろっています。バットは1742年のバッハ自身の最終演奏版というもので、録音も優秀。演奏はほぼOVPPを採用して、マタイの骨組みがわかりやすくなります。

ビラーは現トーマスカントルであり、バッハと同じ聖トーマス教会の少年合唱団を用いています。面白いのは、バットとは逆に、1727年の初演時の形(BWV244b)での演奏というところ。ただし、中身はそれほど面白いものではありません。

クイケンは、何といってもほぼ完全なOVPPが特徴。歌手は全部で11名しかいないわけで、少年合唱に割り当てられるパートを一人のソプラノが歌うところなどが面白い。

ヤーコプスは、通常2群にわけられ左右に配置される歌手と器楽を前後に配置しました。これは、バッハの時代の教会の構造から前後が無理が無いという判断からで、SACDだからこそできる収録方法です。

4月には、エガーの率いるエンシェント室内管弦楽団による、1727年版のCDが登場します。ビラーのものが、多少消化不良君気味だったので、古楽の老舗による演奏は期待度大です。