聖母マリアというと、イエスのお母さん。神となったイエスのお母さんですから、当然マリア信仰というものもキリスト教にはある。ただし、イエスは自らの力で昇天し神になりましたが、マリアは人間ですから、神の力を借りて昇天するという違いがあるようです。
聖母マリアについては記念する日がたくさんあり、今日は「お告げの祝日」。お告げというのは、イエスを身ごもったということで、いわゆる受胎告知のこと。天使ガブリエルがやってきて、マリアに告げるシーンは、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画だけでなく、いろいろな絵画に描かれています。
「カンタータの森を歩む(東京書籍、2004年)」という本に詳しいので、詳細を知りたい方は是非そちらを一読されることをお勧めします。
とりあえず知っておくべきことは、バッハの属していたルター派では、聖書を信仰の源としていたので、積極的にマリア信仰を推奨はしなかったということです。ですから、祝日としては2月2日「清めの祝日」、3月25日「お告げの祝日」、そして7月2日「訪問の祝日」の3つだけになっています。
今日のためにバッハが作ったカンタータがあります。それが、バッハ作品目録の1番が冠され、時によってはカンタータ第1番という云われ方をするもの。
BW1 輝く暁の明星のいと美わしきかな (1725)
1724年の5月から始まるカンタータ第2年巻は、コラールを必ず挿入して、バッハが長年目指してきた「整った教会音楽」であるコラール・カンタータの群です。この曲は、第2年巻の最後を飾る作品という位置づけになります。
もうひとつが、ワイマール時代のもの。
BWV182 天の王よ、お迎えします (1714)
いずれも、実は「お告げの祝日」と「棕櫚の主日」が重なった年に作られています。特にBWV182は、内容もマリアとはあまり関係ないテーマ。
つまり、イエスのエルサレム入城を記念するとともに、受難週の幕開けとなる「棕櫚(枝)の主日」までは、ライブツィヒでは教会でのカンタータ演奏は自粛する慣わしだったわけで、唯一音楽を演奏してよかったのは「お告げの祝日」だけ。
そこで、バッハは1724年に再演した際には、「お告げの祝日」という「建前」を利用して、受難週の幕開けを飾る音楽としたらしい。翌年にBWV1を演奏する際は、最初からどちらともとれるような内容を盛り込む事で、保守的な批判を回避する事を狙っているようです。