「やっかさえき」と読みますが、医者の側から見るとほとんど死語に近い言葉。
薬の値段は厚労省が決めていて、病院・診療所は業者から購入して医療の現場で使います。そのとき、業者はできるだけ買って貰いたいので値引きをする。そうすると、その差額が医療機関にとっては利益になるというもの。
これが、薬漬け診療の根源にあるとして、医薬分業が進みました。院内処方よりも院外処方が優遇され、今ではほとんどの医療機関は患者さんに処方箋を渡して、院外の薬局ならどこでも薬を手に入れられるようにしています。
患者さんにとっては、わざわざ別の薬局に出向いて改めて待たないといけないという手間が増えました。そして、何よりも医療機関の利益はそのまま薬局の差益に転化されたというのが実態。
1999年に介護保険が半ば強引に始まった時も、医療費抑制のため介護保険に分離しただけ。見かけ上の医療費が減ったことを、ものすごい成果のように当時の政府は胸を張っていました。
まぁ、今でも薬価差益が無いわけでは有りませんが、もの凄い経費をかけて院内薬局を持つメリットはあまり無いわけで、特に外科系の医療機関は薬の使用は少なく、直接行う処置などの方が多い。
ところが、処置は一種の技術になるわけですが、日本の保険制度の中では技術というのはほとんど評価されていません。技術には個人差があるわけで、上手い医者と下手な医者がいるということ。ですから一定の値段が付き辛い。
もっとも、いくら上手いし評判でもやたらの高額な医者にかかりたいかと言うと、患者さんとしては躊躇する部分はあるでしょうし、現実にはブラックジャックや大門未知子のような存在はありえない。
リウマチ診療の中では、生物学的製剤と呼ばれる薬が登場してから、薬にかかる費用は爆発的に増加した事は事実です。最初に登場したレミケードは1本が当初約11万円で、通常1回に2本を使用しますので、3割負担の患者さんは窓口で6万円以上を支払うことになります。
ここで、差益があるかというと、正直言ってほぼ無い。実際、業者からの購入価格は1本10万円以上でした。特殊なフィルターが付属する高額な輸液セットの使用が義務付けられていて、しかも数時間かかる点滴の間の場所の占有、いろいろとチェックすることなどの手間を考えると、実質的には赤字と言ってもいいくらいです。
まぁ、結局ぐちみたいなものになってしまいますが、本当は話題のアップルウォッチの原価が安いというニュースから思いついた話。アップル製品の原価率は定価の29~38%の中にあったそうですが、一番安いアップルウォッチでは原価率は24%だそうです。
新製品ですから、いろいろな新しい経費がかかるための上乗せが必要ということで理解するしかありませんが、一番安くて42,800円するものが、中身のとしては1万円程度というのは、かなりガッカリ感は否めない。
薬価のように公的機関が基本価格を決めるわけではありませんから、資本主義の原則に則って価値を見出す方には高いものではないわけで、文句を言う筋合いはありません。
そのうち、こういうものがスタンダード化して、スマホのように普及する可能性はありますので、そうなったら購入を考えても遅くはないというところでしょうか。