とりあえず、始めたのいいのですが、鈴木雅明率いるBach Collegium Japanによるカンタータ全集を聴き倒すという・・・要するに、作曲順に収録されたCDを順番に聴いて、自分のお気に入りのカンタータを選び出そうというもの。
ここで、全部で55枚あるCDをすべて紹介していくのは、かなり大変だということに、今さらながら気がつきました。バッハがのこした教会カンタータは、およそ200曲。名曲とされるものや、話題性のあるものだけでもかなりあるわけです。
ここでは、あくまで自分の気にいったものを選び出すことが目的だし、それを可能な限り他の演奏者のものと聴き比べてみたいというというのがそもそもの動機。
そこで、細かい事はきにせず、どんどん進んで行くことにします。BCJの全集の中身が知りたい方は、ネットでも簡単に調べられますので、各自の努力におまかせということで・・・
さて5枚目まで聴いて、耳に残るものはBWV4、BWV106、BWV18の三曲でした。大バッハの若かりし頃の作品で、ミュールハウゼン~ワイマール時代のもの。この時期の作品は、7枚目までに収録されています。
8枚目は、カンタータの公的な作曲の機会がなかったケーテン時代に、次のライブツィヒのカントル試験のために書いたものが出てきます。ここまでは、カンタータ作品としては初期に分類できそうです。
この時期、敬虔なプロテスタントであるバッハは教会のオルガン奏者としての仕事を通じて、「整った教会音楽」とは何かを考え始めていたわけです。しだいに自信をつけて、いろいろなことにチャレンジする精神がどんどん高揚していくのがわかる曲作りが目立ちます。
出だしは器楽曲のシンフォニアが配置されることが多く、またすでに後年意図的に組み込むコラールも随所に使用されていますが、けっこう凝った作りであることが多く、そういう意味では一つ一つが変わっていて面白い。
ただし、これは会衆との一体感という観点からすれば、どうだったんでしょうか。音楽としては楽しいのですが、イエスの教えをよりわかりやすく人々に伝えるというカンタータの教会での役割からすると、音楽が独立してしまっているのかもしれません。
BCJの演奏は、一般に「超真面目」と評されることが多いのですが、これは下手に曲調を上げ下げせずに、楽譜を丁寧に読み込んで演奏しているということなんでしょう。もちろん自分は、楽譜を片手にカンタータを聴くわけではありませんから、楽譜通りかどうかはわかりません。
ガーディナー盤は、基本全曲ライブ録音ですから、鈴木盤に比べて全体的な勢いがある。多少の間違いは許すから、どんどんイケイケという雰囲気が伝わってきますし、それが魅力。
BWV172「鳴りひびけ、汝らの歌声(1714)」は聖霊降臨祭第一日のためのもので、最初から管楽器も加わった大き目の編成で、高らかに華麗な合唱が素晴らしい。こういう曲では、合唱の強みはモンテヴェルディ合唱団はダントツです。
一方、5曲目はソプラノとアルトのデュエット。こういう曲では、鈴木盤の方がテンポも速く、むしろイングリット・シュミットヒューゼン(S)と米良美一(CT)のからみがうまく伝わってくる気がします。最後のコラールは、鈴木盤の方がゆっくりで、こういうところが「真面目」なところなのかもしれません。
OVPPの提唱者リフキンによる演奏を聴くと、こういう華麗な雰囲気な曲では合唱の弱さはどうしようもない。本来の姿がそうだとしても、こういう曲ではもう少し流動的な編成でもいいのかなと思います。