教会暦に沿ってバッハのカンタータを聴き続けたのは、昨年春からです。今年の受難週~復活祭で一段落して、そこからはバッハの作曲した順番で収録された鈴木雅明/BCJの全集を、聴きたい時に聴きたいだけ聴くことにしました。
教会暦では、復活祭のあとちよっと一休みしますが、先週が昇天祭、そして来週が聖霊降臨祭にあたり、バッハにとっても再び忙しい時期にあたります。何しろ毎週日曜日のカンタータだけでも、作曲・譜面作成・練習で一杯のところに、特別な日のための曲まで用意しないといけないわけです。
もちろん、そんなことは頭では理解した上で、バッハはライブツィヒのトーマス・カントルに応募したのでしょうから、簡単には泣き言は言えません。しかし、家では、きっと好きなコーヒーをすすりながら、奥さんのアンナ・マクダレーナには愚痴を言っていたのかもしれませんね。
1723年春、「まぁ、バッハ君でがまんしとくか」というところで、何とかライプツィヒに職を得たバッハでしたが、そういう多忙な生活が始まり、一般市民に最初のカンタータが披露されたのは、5月30日、三位一体節後第1主日でした。
ここから、カンタータ年巻と呼ばれるシリーズが始まります。基本的に毎週1曲、待降節や四旬節のように音楽は休みの期間を除いて、1年間に40曲程度を用意しないといけないわけです。
特にバッハは、ライブツィヒ就任後、2年目の1年間はまとまった形式を強く意識していたと考えられるために、そこを軸にしてバッハ独自の「年度」が形成されるわけです。
BCJ全集のVOL.8~9で、カントル試験課題曲、そしてカントルとしてのデヴュー作を聴いた後、VOL.10~13では、季節はほぼ夏、長い三位一体節後の期間の半分を聴いていくことになります。
この中では、バッハの全作曲中、最も有名なひとつであるBWV147「心と口と行いと生きざまもて」 が登場します。最も、誰もが一度は耳にしたことがある有名なメロディは、2部構成のされざれの最後に通常するコラール、その伴奏の旋律です。
ですから、初めて聴くと、ちょっと拍子抜け。あの有名なメロディはいつでてくるのかと思っていると、じらされ続けます。しかも、主役はコラールですから、あくまで脇役ということに気づいて、ちよっとがっかり。
しかし、伴奏にしてもあのメロディが出てくると、気持ちがなごみますし、ゆったりとしたコラールの旋律も、ほっとする。全体としては、多少ゆっくりした演奏のほうが、その効果は大きくなりそうです。