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2015年5月3日日曜日

BCJで聴くカンタータの森 (1)

ついこの前まで、キリスト教の教会暦に従って、残されているバッハの教会カンタータ、約200曲を1年間かけて聴きとおしました。基本的には、教会暦順に収録されているJ.E.ガーディナーの全集CDボックスを順番に聴いたわけです。

聴いていくうちに、バッハの音楽だけでなく、キリスト教の知識、300年前のヨーロッパの歴史的なことにまで興味が広がり、けっこう自己満足度の高い期間を過ごせてよかったのですが、逆に今は大袈裟に言えば、物事を達成した後の虚脱感みたいなものがあります。

そうは言っても、昨年もう一つのカンタータ全集を購入していて、、こちらを無駄にするわけにはいきません。それが世界的に評価されている鈴木雅明のものですし、何しろ値段が半端なかった。

すでに、ガーディナー盤と比べるという聴き方は、昨年のうちから始めていましたが、鈴木盤はバッハの作曲順での収録なので、教会暦に合わせてなかなか曲を探すのが面倒。

そこで思いついたのは、鈴木盤を順に聴きながら、自分のお気に入りのカンタータをピックアップしていこうということ。テレビ番組風だと、題して「お気に入りを探せ!! 鈴木雅明と行くカンタータの森の旅」という感じでしょうか。

 さて、記念すべき第1巻は1995年の収録。ソプラノは栗栖由美子、カウンターテナーは太刀川明。収録曲はBWV4「キリストは死の縄目につながれたり(1708?)」、BWV150「主よ、われ汝をあおぎ望む(1708?)」、BWV196「主はわれらを御心に留めたまえり(1708)」の三曲。

当然、若かりしバッハのミュールハウゼン時代の作品ということになります。この中で、復活祭第1日のためとされているBWV4 「キリストは死の縄目につながれたり」は、バッハの生涯の中で見ても、圧倒的な存在感を放っています。

それは、この曲がコラール変奏曲という形式だからで、マルチン・ルター自ら作詞した復活節コラール全節が歌詞に用いられています。冒頭の短調のシンフォニアから一転して、復活の喜びを次から次へと繰り出してきます。たびたび出てくるハレルヤが印象的。

昨年6月のガーディナーの演奏がビデオで見ることができますが、合唱主体の楽曲だけに世界最強と云われるモンテヴェルディ合唱団を擁する演奏は、全編を合唱で押切圧倒的です。

第2巻も1995年の収録で、ソプラノは鈴木美登里、カンウターテナーは米良美一、テナーはゲルト・テュルク、バスがペーター・コーイ。曲はBWV71「神はいにしえよりわが王なり(1708/2/4))」、BWV131「深き淵より、われ汝に呼ばわる、主よ(1708?)」、BWV106「神の時こそいと良き時(1708?)」の三曲。

別名「哀悼行事(Actus tragicus)として知られる」BWV106「神の時こそいと良き時」が、やはり超有名で群を抜いています。1707年に母方の伯父の葬儀のために書かれたという説がありますが、詳細は不明。バッハの死後、多くのカンタータが忘れ去られる中、この曲は比較的たびたび演奏されていたという話があります。

伴奏は簡素ですが、冒頭のリコーダーの重奏はシンプルながらも、心を鎮めることができます。続いて合唱と四声それぞれのアリアが、次々に死に関連した内容を印象的に歌い上げ、最後にコラールで締めくくられます。

ピエロットのリチェルカール・コンソートは、OVPPでの演奏を聴かせてくれます。全体の構成がシンプルな曲なので、違和感は少なくバッハの実演に近いのかもしれません。