2015年5月24日日曜日

新興感染症の呼び方

WHO(世界保健機関)は5月8日に、新たなヒトにおける感染症の呼称として、疾患名によって特定の国や民族などの印象が損なわれたり,経済活動に悪影響が及んだりしないように配慮するようにという指針を発表しました。

まぁ、確かに固有名詞を冠する病名と言うのは、特定の地域や人種に対して、ネガティブな印象を持たせる可能性があるわけで、少なくとも良い方向性にはいかないことは間違いない。

例えば、横浜市都筑区にだけ集中して、原因不明の症状が多発したとします。元から住んでいる人だけでなく、たまたま買い物で来ただけの人も発症し、原因がまったく不明。

当然、いつしかニュースになるわけですが、その時この状態を何と呼ぶかというと、一番簡単なのは「都筑区病」となる。一度報道されると、都筑区に入ってくる人はいなくなり、都筑区に住んでいるというだけで避けられてしまうかもしれません。

研究が進んで、原因が特定され排除でき、発症者は急速に減少。もう何年も都筑区では新たな発症は認められないとしても、世界中のどこかで同じ病気が見つかると、それは「都筑区病」と呼ばれる事が慣例化していまうわけです。

例えば「スペイン風邪」は、インフルエンザの一種で、1918~19年に世界中に大流行し死亡者が多発しました。これは、もとはいえばアメリカから始まったもの。たまたまスペインが、最初にニュースとして発信しただけという、もうスペインの方々にとっては言いがかりみたいな呼称です。

レジオネラ肺炎は、1976年にアメリカの在郷軍人会の会合の際に、原因不明の肺炎が参加者や会場周辺住民に多発したために、在郷軍人(legionnaire)に因んで付けられた名前。当然、在郷軍人の方々だからかかるわけじゃありません。

日本脳炎や日本住血吸虫といった、日本に関係した名前もあります。これらの、特定の地域に多発するものは、通常「風土病」という呼ばれ方をします。


最近、やっと収束宣言が出始めている「エボラ出血熱」も、コンゴのエボラ川周囲に発症者が多い事で付けられたネーミング。

いずれにしても、その名前に関係した人々は嬉しいことは何もありません。使わないにこしたことはないのですが、最初に名前をつける「誰か」にとっては、何と呼ぶか頭を悩ませることになりそうです。