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2019年9月11日水曜日

Hiro Kurosaki / Beethoven Complete Violin Sonats

バロック音楽なら、もう古楽器を用いた演奏の方が主流であり、バッハをモダン楽器で演奏しようという方が今では少数派。

古典の時代でも、例えばモーツァルトの古楽器演奏はかなり充実してきています。古典期の最後に位置するシューベルトの器楽曲や室内楽曲も、古楽器による演奏がちょこちょこと見つかるようになりました。

作曲家の作った音楽の本来の姿を楽しむという意味で、クラシック音楽を楽しむ上で、古楽器演奏を避けては通れなくなっています。

じゃあ、ベートーヴェンは? というと、CD一枚単位でならいくつかありますが、それなりに古楽器演奏でまとめあげたものが意外と見つけられない。

交響曲とピアノ協奏曲はまぁまぁある。やはり、ガーディナーの交響曲全集のヒットの影響が大きいのかもしれません。いずれも、きびきびした演奏で、モダン楽器のオーケストラも、古楽器奏法を取り入れる傾向にあります。

ピアノ独奏は、昨日紹介したブラウティハムとバドゥラ=スコダくらいしかありません。チェロ・ソナタは、もう古くなったビルスマの一択。ピアノ三重奏や弦楽四重奏については、全集化したものはたぶんないんじゃないでしょうか。

バイオリン・ソナタは数種類ありそうですが、先駆けとしてはヤープ・シュレーダーのものがあります。シュレーダーはアカデミー・オブ・アンシエント・ミュージックで活躍し、自分も好きな古楽三重奏のアトランティス・トリオを主宰しています。

ただし、演奏・録音ともに評価できる全集というとヒロ・クロサキくらいだろうと思います。ヒロ・クロサキはウイーン生まれの日本人。ヴィーラント・クイケンに師事し、ヴィーラント・クイケン、ウィリアム・クリスティなどのもとで活躍し、古楽奏法のバイオリン奏者として有名。モーツァルトのソナタもまとまってCD化されていて高い評価を受けています。

モダン楽器による「迫力」と比べると、聴き劣りする部分は否定できませんが、それだけモダン楽器による演奏が、作曲家が意図していた本来の音楽から修飾を施されたものということ。それを否定することはありませんが、それとは別の次元で古楽器演奏の意味と価値を見極めの事も大切です。