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2020年4月5日日曜日

新型コロナウイルスと関節リウマチ

https://experience.arcgis.com/experience/685d0ace521648f8a5beeeee1b9125cd

関節リウマチの患者さんにとって、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は大変に脅威だろうと思います。

最もよく使用されているリウマチ治療薬であるメソトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレートなど)は、一般に免疫抑制剤という呼ばれ方をしますので、COVID-19による疾病が重症化するリスクの一つにあげられます。

また近年、生物学的製剤と呼ばれる注射薬も多用されており、こちらも感染症は重大な副作用として使用にあたっては注意喚起していることも事実です。

関節リウマチをはじめとする、自らの身体に対して異常な免疫が生じる自己免疫性疾患では、これらを抑えることが治療につながるためこのような薬が開発され、実際に病気を鎮静化する効果が認められています。

COVID-19はまだ問題が大きくなって数カ月ですが、すでに膨大な症例報告が世界中から集まっていて、多くの研究者・臨床家により分析が進んでいます。ただし、3月末までの時点では、決定的に分かっていることは多くは無く、残念ながらほとんど手探りの状態です。

それらの報告の中で、今のところ重症化のリスクとして明確なものは、高齢者・糖尿病・高血圧であり、今のところ抗リウマチ薬が重症化に関与したとする報告は無いようです。また、以前のコロナウイルスによるSARSの場合にも、積極的なリスクにはなっていません。

通常の予防策である、人混みを避けること、徹底的に手洗いを励行すること、そしてできればマスクを着用することなどをしっかり実行することが重要であり、抗リウマチ薬をいきなり中止する必要はないと考えられます。治療を中断することで、関節リウマチが悪化することは、発症時の抵抗力を落とすことにつながることもありうると考えます。

関節リウマチに伴う呼吸器病変がある方、または普段からかぜをひきやすい方は、特に厳重な注意をしていただく必要があります。肺炎を起こした場合には、重症化のリスクは高いと言わざるをえません。

COVID-19の重症肺炎については、様々な治療経験が報告され、既存薬の中から治療に有益だった可能性が議論されています。

治療薬として、ウイルスそのものに対しては、予防としてのワクチン、そしてウイルスそのものを排除する新型コロナウイルスに特異的な抗ウイルス薬については、どんなに早くても1年程度はかかるでしょうから、現段階では使用できるものはありません。

ただし、他のウイルスに対する薬の一部が検討されています。新型インフルエンザ用のファビピラビル(商品名:アビガン)は、ウイルスが似たような構造であることから高く期待されています。

また、実は関節リウマチの治療に使われているトシリズマブ(商品名:アクテムラ)が、重症肺炎の治療に効果があったとする報告が相次いでいます。一見、逆のような話ですが、生物学的製剤はサイトカインと呼ばれる炎症を引き起こす物質をブロックする薬理作用があり、トシリズマブがターゲットにしているサイトカインの一つであるIL-6がCOVID-19の肺炎に関与していることを示唆しています。

300人近くでトシリズマブを使用した報告が出ていますが、特に中国では重症肺炎21名に投与して全員に改善効果があったとしています。なおIL-6をターゲットにした生物学的製剤としてサリルマブ(商品名:ケブザラ)も、同様に効果が期待されています。

一部の薬剤がCOVID-19の影響で出荷できなくなっている影響が出ていますが、アビガンもトシリズマブも、実は日本で創薬されたものであり、国内での流通に関しては比較的不安はありません。

トシリズマブについては、COVID-19に関連した需要が急速に広がった場合に、新規のリウマチ患者さんへの使用は難しくなる可能性は否定しませんが、現在使用中の方への供給が滞ることはないと考えますし、実際直接に製薬会社に確認したところでは現在のところまったく心配ないとのことでした。