2013年2月15日金曜日

いまどきの医学教育

昔と今では医学部の教育というのも、ずいぶんと違っているんでしょう。

自分が学生だった頃、つまり昭和50年代後半ですが、この頃はひたすら教授や助教授という偉い方々が講義にくる。それをひたすら聞いて、ノートを取り、本を読んで、そして試験を受けるの繰り返しでした。

本来、大学というところは特定の専門分野を教えたい人が、教わりたい人に知識を伝授するためのもので、ある意味偏った教育が許される場であるはずです。しかし、医学部は完全な職業訓練学校ですから、医師国家試験に合格してなんぼの世界。

偏った授業ばかりしていたら、国家試験の合格率が下がってしまいます。当然、国家試験予備校として、広く浅く勉強させることが求められることになります。

5年生の前半まで、通常の講義はほぼ完結して、臨床実習と平行して、各科の復習授業が始まり、6年生の夏までに全課程が終了しました。そして、最後の半年は完全なる試験対策の総復習。一度に3科目くらいを2週間で終了し試験という繰り返しで、いつの間にか卒業。

 しかし、開業医になる数年前から、医学教育というものもだいぶ変わってきたように思います。実際、自分もやったのですが、チューターというシステムがありました。これは、こちらから一つのテーマを与えて学生が自発的に勉強してきて、小グループでその成果について討論をするというもの。

チューターの役目は、学生たちの討論の方向性を修正しながら、最終的に習得させたい内容に導くというもの。ですから、基本的には口出しはしません。学生たちが自から考える力を培っていくことが重要で、あくまでもチューターはその手助けをするだけです。

必要とされる医学の知識が膨大になるにつれて、単純に教えられることには限界が出てきました。そこで、学生には考えることで、一つのことから十のことを学んでもらう力をつけてもらうということなんだと思います。

こういうシステムもすでに10年以上経ったわけですから、今も医学教育の中でどのような展開がされているかは自分にはわかりませんが、より重要性を増している部分なんだろうと思います。

また、卒後すぐの研修医に対しても、10年くらい前から指導医というものがつくようになりました。自分も泊まりがけの研修に参加して、資格を取りました。ここでも、指導するやり方について、できるだけ研修医が自ら考えて行動するようにすることが大事と言われました。

何にしても、自ら問題を発見し、努力して解決していく力というものが重視される時代になり、そういう力を持たない医師は淘汰されていくような時代になっているということなんだと思います。これから医学部を目指す、あるいは医学部で勉学に励んでいる学生の方には、その点を十分に認識しておいてもらいたいと思います。