2009年12月27日日曜日

Glenn Gould / Mozart Complete Sonatas

ベートーヴェンのピアノ・ソナタにはまって、いろいろ聴いてみる。同じ譜面通りに演奏するはずのクラシック音楽なのに、演奏者の解釈や感性の違いがこんなにあっていいのだろうかと思うほどバラエティに富んでいるのです。

これまでにも何度か取り上げている話題ですが、こういうところにクラシックの楽しみ方があるわけで、なかなか尽きせぬ魅力がふつふつと沸いてくるところなのです。

「のだめ」でクラシックをかじった方も、是非せっかく首を突っ込んだのだから、もう少し深入りしてみてもらいたいものだと思います。今公開中の映画では、のだめのピアノ演奏の吹き替えをラン・ランが行っているそうです。

いえ、パンダじゃありません。

世界的に有名になってきた中国人のピアニストで、自分もCDを探しているときに何度かアルバムを見かけましたが、実はまだまともに聴いたことはありません。

自分が購入するものが、一作曲家の全集物、それも廉価版中心だからでしょうか。ただ、この前モーツァルトのトルコ行進曲をテレビで紹介していてちら聴きしたところ、めっほう早いのに驚きました。

テレビでは驚異の早さと言って持ち上げていましたが、ちょっと待ってください。これは仮にも「行進曲」という副題がつくくらいなのですから、早ければいいって物ではない。たいていの名だたる演奏も比較的早くて、これじゃ行進できないでしょう。

それで思い出すのは、グレン・グールドの演奏です。

グールドは全体的に早弾きのピアニストで、代表作のバッハのゴールドベルク変奏曲は、たいていの演奏家の半分くらいの時間で弾ききります。ただし、冗漫な繰り返しを省いたりして大胆にエッセンスを描き出すのが特徴なのです。

モーツァルトのソナタ全集も全体的には速いテンポ設定ではありますが、トルコ行進曲では逆に気が遠くなるような遅いテンポで演奏しているのです。最初に聴くと何かの間違いではと思ってしまいますが、何回か聴いているとこのテンポに妙になじんでしまうのです。

グールド嫌いの大御所宇野功芳ですら、これだけは認めているのも面白いところです。グールドは快楽的なモーツァルトを否定しているのですが、そこがクラシックを生き生きとさせているところなのかもしれません。