1972年、アメリカ映画。
監督はハバート・ロス。70年代アメリカ・ニューシネマを代表する監督ですね。たくさんのちょっと軽めの笑いを入れたロマンス物が得意で、「ボギー! 俺も男だ」も初期のかくれた傑作ではないかと思います。
原題は'' Play it again, Sam''で、「カサブランカ」(1942)の中でハンフリー・ボガートが酒場のピアノ弾きに言う台詞。このあとに有名なAs Time Goes Byがはじまるわけです。正確にはagainは入っていないので、これはこの映画に込められた思いということでしょう。
ということで、まさにこの映画は限りなく「カサブランカ」を中心としてハンフリー・ボガートに対するオマージュが詰まった映画なのです。そして、ダンディの代名詞のようなボガートに憧れるダメ人間を演じるのがウッディ・アレン。
アレンは実際に脚本も書いており、そういう意味でも、まさにボガートにリスペクトしているのはアレン本人。アレンはアメリカ・インテリ階級(ある意味ベトナム戦争によって病めるアメリカ人の代表)の象徴みたいなひとですからね。逆にがちな男っぽさを振りまくボガートには、本気で憧れていたのだと思います。
ダメ人間の主人公は「カサブランカ」の映画が大好きで、何かとカサブランカのハンフリー・ボガートが妄想に登場して、いろいろあおってくる。友人の奥さん(後に私生活でもパートナーになるダイアン・キートン)に恋をするが、空港で別れを告げかっこよく決めるわけです。
スタッフ、キャストともに70年代を代表する人たちによる、シリアス・コメディの傑作と言える映画です。元ネタの「カサブランカ」と共に、一度は見てもらいたい映画としてご紹介します。