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2012年7月8日日曜日
Bill Evans / Paris Concert Edition One & Two
コルトレーンにしても、エヴァンスにしても早死にしているだけに、残されたレコードに対する伝説的な感情が混在することはいたしかたがないところ。どれもが名作のような気がしてしまい、何枚かのアルバムを選ぼうと思うとかなり一人勝手に悩み込んでしまうわけです。
エヴァンスの場合、基本的なフォーマットはピアノ・トリオ。あらためディスコグラフィを眺めてみると、生涯にわたっていろいろな楽器の組み合わせに手を出しているにもかかわらず、結局名盤として推薦したくなるレコードはピアノ・トリオになってしまいます。
最初のレギュラー・トリオは、ベースのスコット・ラファロとドラムのポール・モチアン。まさに伝説のトリオです。60年代なかばは、ベースがチャック・イスラエル、ドラムはラリー・バンカー。
そして60年代後半にエディ・ゴメスというベーシストに出会って、エヴァンスは10年以上にわたってゴメスとのインタープレイを展開します。この時期は、ドラムはわりと出入りがあり、レギュラーを誰と決めにくい感じがします。
そういう観点から、ここまでに3枚のアルバムを紹介してきたのですが、実はエヴァンス自身がそれまでの最強のトリオと考えていたのは、ベースがマーク・ジョンソン、ドラムがジョー・ラバーバラというメンバー。その生涯最期の、わずか1年数ヶ月という活動期間しか活動できなかったのです。
ところが不幸なことに、このレギュラー・トリオは管楽器を加えたクインテットのアルバムは出したものの、エヴァンスの生前にはトリオのアルバムが無かった。そのため、生前はほとんど評価されることなく、エヴァンスの死と共に幻で終わってしまうかと思われました。
しかし、幸いなことに死後に無くなる一年前のパリでのライブが発表され、その圧倒的な3人の緊密な連携からくる世界観が初めてジャズ・ファンの耳に届くことができたのです。さらに、死の直前の大量のライブ音源も発売され、エヴァンスが最強という意味が認知されるようになりました。
正式なスタジオ録音がないことが今となっては悔やまれますが、少なくともこの最期のトリオによる唯一の正規のライブ録音、つまりエヴァンス自身か録音していること、将来発売するアルバムになることを前提に演奏されているという点で、2枚のパリ・ライブは、エヴァンスの生涯をしめくくる名盤としてはずすことはできません。