2017年6月29日木曜日

Trudelies Leonhardt / Schubert Works for Piano

レオンハルト・・・と言う名前で最初に出てくるのは、おそらく100人中99人までが、グスタフ・レオンハルトだと思います。

今更云わずと知れた著名なオランダの鍵盤楽器奏者であり、バロック音楽、特に古楽演奏の大家で、2012年に亡くなりました。

ただし、自分の場合は、少なくともこの1年ちよっと、レオンハルトと云えば、トルゥーデリースのこと。グスタフの実の妹さんで、日本ではほとんど知られていないフォルテピアノ奏者。

特にシューベルトをこよなく愛するトルゥーデリース・レオンハルトは、ソナタ全集をリリースしている一人。

シューベルトのピアノ・ソナタが大好きな自分は、まとまった数のソナタを録音した人をできるだけ集めているんですが、その中で出会ったわけです。

「全集」を最初に出したのは、60年代後半のケンプが最初。70年代に入って、ブレンデル、ツェリヒン、クリーンが続きますが、いずれもモダン・ピアノによるもの。

グスタフ・レオンハルトの功績の一つでもある古楽演奏の普及が始まり、70年代前半にバドゥラ・スコダによるフォルテ・ピアノによる初めての全集が登場します。

次にフォルテ・ピアノが登場するのは、知られているのは90年代で、バドゥラ・スコダの2度目のものとビルソン。そして21世紀になって、フェルミューレンがありますので、全部で4種類・・・と思われています。

しかし、実はこれらの隙間の80年代を埋めるのがトルゥーデリース・レオンハルトなんです。何でほとんど知られていないのか・・・

よくわかりませんが、おそらく「ハンマーフリューゲルのためのソナタ」というタイトルがついたためではないかと思います。一般的に使われるフォルテピアノはフランス語圏、英語圏での名称で、ハンマーフリューゲルはドイツ語圏で用いられます。そのため、今どきのネット検索ではひっかかりにくい。

そして、もう一つのポイントが、とにかくほとんど聞いたことが無いようなレーベルでばかりCDを出していることが大きいかもしれません。おかげで、とにかく集めるのは大変で、正直、コレクションのためにはかなりの時間と労力と経費がかかる。

しかし、80年代にLPレコードで9枚にわたり、「全集」と呼べるセットを出しているのはけっこう大きな業績だし、実に現在に至るまでマイペースで断続的に発売されたシューベルト作品集はCDで20枚以上になります。

先月、収集最大の難関だった数枚をイタリアのショップからの出品でイギリスのAmazonで発見しました。ところが、EU圏にしか発送しないというので、本当に大丈夫か心配だったのですが、転送サービスというのを利用して、無事に手に入れることができてコレクションが完成しました。

そんなわけで、けっこう大変な思いでトルゥーデリース・レオンハルトのシューベルト作品のコレクションがこのほどやっと揃いましたが、その魅力はというと・・・

まず、一貫して自宅で日頃から使用しているフォルテピアノの音色でしょうか。フォルテピアノというと、比較的響きが少なく、古色蒼然とした音を想像しますが、その中でもやさしく良く鳴るんですね。

そして、演奏のスタイルが、慌てず騒がず、一つ一つの音を大切にしていることがよくわかるところ。シューベルトには独特の間がありますが、それが生きている。また、その間が自分の感覚とぴたっとはまると、もう大ファンになってしまうわけです。

しかも、さらに新譜も登場して、彼女のシューベルトは全部でCD21枚です。知られたソナタもいいのですが、日の目を見ることが少ない小品が多数演奏され、その一つ一つが大切に扱われている感じがとても気に入っています。