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2017年6月9日金曜日

Glenn Gould コンプリートを目指す

コンプリート、completeとは「完成する」ということですから、手に入る全てを収集し尽して初めて使える言葉。

グレン・グールドは、クラシック音楽界では特異なピアニストで、1982年にわずか50歳で亡くなってからずいぶん経ちましたが、いまだにマニア的な人気を誇る「カリスマ」であることは間違いありません。

亡くなっているということは、新録音は当然無い。しかも、比較的活動期間も短い。さらに、同一レーベルと生涯契約を結んだ関係で、正規録音は同じレーベルでまとめられます。さらに、有名な"Concert Drop-Out"があり、1964年以後はライブ演奏はまったく無し。

これだけ条件が揃えば、コンプリートは容易と思いたいところなんですが、これがなかなか簡単ではありません。

生前にリリースされた正規音源については、Columbia (CBS、現Sony Classical)にすべて網羅され、巨大ボックスCDセットとして発売されていますから、これについてはまったく問題はありません。

一人のアーティストの生涯の業績を、「わずか」数万円ですべて手に入れられると考えれば、けして高い出費ではないし、これだけ容易にコンプリートできることはそうそう無い。

ところが、このボックスセットは、「オリジナル」にこだわった関係で、生前にリリースされたものだけしか入っていない。グールドの最も力を注いだバッハの演奏だけは、死後に見つかった音源も含めたと謳う総集編があるのですが、実は抜けている物がある。

そもそも90年代にThe Glenn Gould Editionというタイトルのシリーズで、録音されたグールドの演奏を可能な限り集めたシリーズが正規盤として登場しました。

これはColumbiaレコードの、正規リリース分に加えて、グールドの主たる活躍の場となるカナダ放送協会でのラジオ、テレビ放送のための音源が大量に加わったもの。

オリジナル・フォームにはこだわらず、作曲家別のような、テーマ別のような、ややわかりづらい点がある曲順でまとめられており、CD10枚以上の巻があるかと思えば、1枚ものもたくさん含まれるという、大変混乱する構成です。

四半世紀前ですから、当然これらのタイトルは廃盤で手に入らない・・・はずなんですが、実は現行のタイトルの中に一部は含まれていたりするという不思議な状況です。

いずれにしても、大多数が廃盤ですから、資料がほとんど見つからない。そもそも一体全部で何枚のCDに収められているのかもよくわからない。何が第×巻に入っているというのも、中古品などが見つかるとわかる場合がありますが、それはごくわずか。

でもって、結局The Glenn Gould Editionで見つかった、初出の音源が一部を除いてその後はリリースされていないという困ったことになっているわけです。権利関係の問題があるんでしょうかね。

ですから、もう一度このシリーズが再発売されて、死後に単独でリリースされていくつかのアルバムを加えれば、特殊な「海賊盤」的なものを除いて「コンプリート」と呼べるコレクションが完成するんですけど・・・ということです。

そこで便利なはずなのが、「完全ディスクガイド」という2012年に発売された本。ただし、これが実にわかりにくい。

オリジナルフォームで紹介したり、Edition版で紹介したり、巻末に詳細なDiscographyを作曲家別、録音日時順、リリース別などで紹介しているのですが、ごちゃごちゃしすぎてわかりにくいこと極まりない。

労作であることは認めますけど、結局正確な資料不足なのか、現在でも簡単に入手できるアルバムのことしかわからない。これなら、現行の巨大ボックスセットに付属してくる豪華な解説本でもほとんどわかる。

そんなわけで、最近はグールドの中古CDをAmazon他を駆使して探し回ってみるわけですが、コンプリートが難航することも、マニア心をくすぐる要素の一つになっているのかもしれませんね。