ところが、ここに来ていまだ感染拡大の収束がみえない状況で、にわかに五輪問題が急浮上してきています。
最近、過去の五輪で活躍した方が、何が何でもやりたいというような主旨をテレビで発言していましたが、アスリートの立場としては当然の意見で理解できます。しかし、現実的にはどうかというと、夏までに日本は安心・安全と胸をなでおろせるのか微妙なところ。
国内イベントであれば可能かもしれませんが、五輪の主役はアスリート、しかも大多数は世界各地から集まる選手たちです。仮に日本がよくても、遅れてピークを迎えている世界各国がたくさんあることを考えると、夏の時点で世界中が安心できる状況は厳しいと言わざるをえない。
安倍首相は昨日、G7ビデオ会議の結果「完全な形」で五輪を実現することで意見が一致したと述べています。萩生田文科相は「完全な形」というのは無観客ではなく、参加国を減らさないことだと補足発言をしています。
いかにも自民党幹部が言いそうな言葉ですが、完全なというからには、もう一つはずすことができない「いつ」ということが含まれていません。逆に考えると、「完全な形」で実現できない場合は、延期・中止が有りうるということ。
この判断は大変難しい。経済的にも、あまり多くの事柄を含んでいるので安易に結論は出せないことは容易に想像できます。「アスリート・ファースト」とよく言われていますが、この点で五輪がアスリートを利用した国際的・大規模経済活動にすぎないことも露呈している。
数年後までいろいろな国際イベントは他にたくさんあり、各国の大規模スポーツ大会も山ほど予定されているわけですから、現実的に延期しようとしても簡単にいくはずがない。延期しようとしたら、おそらく4年後のパリをずらすか、その後の8年後、確実なのはさらにその後の12年後しかないように思います。
ということは、中止という選択肢にも現実味が出てくるわけで、その場合は数十兆円の損失といわれています。しかし、期日が近づくほどその額は増えるはず。旅行の場合は、間際になればなるほどキャンセル料は高くなるのに似ています。
世界、特に開催国の日本は中止になった場合の、払われる代価について相当な覚悟をしておく必要があるし、その代価は決定が早いほど少なくできるということも理解しておかねばならないと思います。