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寄生虫は、まさに他の生物に寄生している「虫」です。代表的な物は、アメーバ(赤痢)、蟯虫、回虫、アニサキスなど。ノミ、シラミ、ダニなども寄生虫の一種ですが、これらは寄生動物と呼ばれます。
真菌は、いわゆるカビ。人の細胞よりはちょっと小さめで、人の細胞に定着し菌糸が成長して分枝を繰り返して発育します。代表的な物は白癬(いわゆる水虫)、カンジダ。
細菌はほとんどは人の細胞の1/10程度の大きさで、1μm程度。体内に定着して、細胞分裂によって自己増殖します。人の細胞内に入り込んで破壊したり、毒素を出すことで細胞を障害することで病原性を発揮します。代表的な物はブドウ球菌、溶連菌、大腸菌、サルモネラ、コレラ、ボツリヌス、破傷風などなど。
さて、ウイルスはというと、決定的に違うのはウイルス単独では自己増殖できないという点です。大きさは人の細胞の数百分の一、数十nmです。生物と定義できる最小単位ともいえる遺伝子(DNA、RNA)しか有しておらず、それを包むエンベロープでのみ構成されています。
他の病原体が、自分を複製するための設計図と工場を自前で持っているのに対して、ウイルスは設計図(遺伝子)しか有していないため、他の生物の細胞内に侵入し自分の遺伝子を混入することで、一緒に複製してもらいます。
一般的に使用されるマスクの素材には、5μm程度の隙間があるため、ウイルスについては簡単に通過します(ただし、飛沫させる場合は水蒸気などの付着により粒子が大きくなるため拡散防止としては意味があると言われています)。
細胞内に入り込んでしまうため、宿主細胞を傷めずにウイルス単独に除去することが難しく、細菌そのものを障害できる抗生物質のような薬の開発が難しい。基本的にはワクチンによる免疫力をつけることで、予防することがウイルス対策の中心です。
コロナウイルスは、RNAの一本鎖ウイルスであり、一般的な風邪の主要な原因の1 つです。エンベロープにスパイクと呼ばれる突起が多数あるため、太陽のコロナに似ているというところから命名されました。
2002 年に中国を中心に広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2012 年以降の中東呼吸器症候群(MERS)の原因もコロナウイルスの一種であり、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)も似たような構造を持っています。
通常の風邪で死亡することはほとんどありませんが、SARSでは10%弱、MERSでは30%の発症者が死亡しています。COVID-19の場合は3月19日までに、無症状のウイルス陽性者を含む感染者数は全世界で234,073人で、死亡した人は9,840人で死亡率は4.2%です。
発生源と考えられる中国では4%、最近深刻なイタリアでは8.3%に及んでいます。中国はやむを得ないとしても、イタリアの状況は異常で、完全に医療崩壊しています。この2国を除くと、全世界の死亡率は2.8%です。
日本の状況は、感染確認者数は950人、死亡者数は33人で、死亡率は3.3%です。以前より、日本は検査を絞り過ぎという批判がありますが、全例を検査すれば確実に無症状の方も含めて感染者数も増えますが、死亡者数がそれほど増加するとは思えません。
つまり、日本の専門家会議の発表による「何とか持ちこたえている」という表現は妥当だと思いますし、現状の検査の実施状況が不適当だとまでは言えないと考えられます。とは言え、十分とするには程遠いことも間違い有りません。
少なくとも安心を得るために手あたり次第検査を行うことは、おそらく検査能力の限界を超えるでしょうし、医療機関側の余力も失くすことにつながります。現段階では、感染疑い者の重症度を考慮した序列により冷静に対応していくしかないと思います。