2025年6月18日水曜日

水槽の引っ越し


うちのクリニックの受付で、けっこうな存在感があるのが水槽です。

もう10年以上前に始めた熱帯魚のためのものなんですが、今ではほとんど管理というほどのことはせず、必ずしも綺麗なアクアリウムとは呼べない状態ですが、患者さんの中にはそれなりに楽しんでくれる方もいたりします。

先日、受付がなんと「大洪水」状態になり、大騒ぎになりました。調べたら、水槽のガラスの継ぎ目の接着が経年劣化によりもろくなったための水漏れという結論になりました。

30L水槽でしたが、満水にするとさすがに一人で簡単に移動できる重さじゃない。それなりの水圧がかかり続けるわけですから、そりゃいつかは継ぎ目はダメになるのは当然といえば当然のこと。

この際、水槽を完全に撤去するという選択肢もあったんですが、それも寂しいことなので、10数年ぶりに水槽を新調しました。

引っ越しはなかなか大変です。完全に新しい水にすると魚へのダメージが心配ですし、そもそも水槽内のバクテリアがゼロになるのは避けたい。

そこで古い方から水を半分くらい移し替えてから魚を移しましたが、これも魚にとってはかなりのストレスだろうと思います。

今度は何とか一人でも動かせる20L水槽に格下げしました。小さくはなりましたが、引き続き楽しんでもらえればと思います。

2025年6月17日火曜日

本格インド・カレー

 


スパイスといえばカレー。

昨日のスパイスを見れば、勘のいい人はすぐ「あー、カレー作るんだ」とわかったと思います。

実は、けっこう昔からカレーは割とこだわって作っていたんです。ですから、今でもスパイス類は割とそろっていて、ふだんのルゥを使って作るにしても、いろいろ追加するんです。

ニンニクとショウガは絶対に追加しますし、クミン、カルダモン、コリアンダーは必須。

いろいろ混ぜて、オリジナルのカレー粉から作ったこともあります。

ただ、何でも入れればいいじゃんという感じだったので、この際、本格的なインドのカレーを作ってみることにしました。

YouTubeなどにたくさん動画がありますが、とりあえず家に買い置きがあるスパイスはすべてパウダーだったので、やや簡略化したレシピになっていると思います。

まずは「飴色タマネギ」作り。どれを見ても、ここを手を抜いてはいけないということらしい。出来たら、ニンニクとショウガ(チューブを使用)を入れて馴染ませる。

そしてカットトマトです。しっかりと水分を蒸発させて、温度を上げることで酸味を抑えられるので、全体がペーストになるまでしっかり炒めます。ここで塩を入れて味を調えます。

用意したスパイスをすべて投入して、塩・コショウで軽く下味をつけておいた鶏モモ肉を入れてよく混ぜる。後は水を入れて10分ほど煮込めば完成です。

今回はより本格を目指して、ライスはインドの長粒米であるバスマティライスを使いました。バスマティライスは炊くというより煮る調理法です。

30分ほど水につけておいて、あとは10分ほど煮る。笊にあけたら湯を切って鍋に戻し、10分くらい蒸しておけばOKです。実に簡単。独特の匂いがありますが、カレーとの相性はさすがにバッチリです。

タマネギとトマトを多めにしたので、思ったほどサラサラではなく、大変食べやすい。今回は鷹の爪を細かくしたものを入れたんですが、辛さはちょっと物足りない感じでした。でも、思った以上にカレーでした。

「ちゃんと」作ると、お家カレーが何段階もバージョンアップした感じです。スパイスさえ揃えば、やることはそんなに難しくないので、誰でもチャレンジできると思います。

2025年6月16日月曜日

スパイス


料理は科学だ!!

・・・と、声高に言える立場ではないことは重々承知なんですが、医学も同じで理屈だけでは割り切れない部分があるのも間違いありません。

特に料理では、「匙加減」という言葉があって、作るの人の直感で同じ材料を使っても出来上がりはピンキリです。

一番その匙加減が出来るところが、調味料じゃないでしょうか。調味料と言えば、真っ先に思い浮かぶのは砂糖・塩・酢・醤油・味噌などですが、その次に味を大きく左右するのがスパイスじゃないかと。

一般に香辛料と言っているのは、スパイスとハーブです。ハーブは主として植物の葉で香草とも呼び、スパイスは種子とか根・茎・皮とかというところが使われます。

・・・と、まぁ、前置きはこのくらいにして、さて、これは何でしょう?

スパイスです。

下から時計回りにクミン、コリアンダー、カルダモン、ターメリック、クローブです。

何に使うんでしょうか?

楽しみ、楽しみ。

2025年6月15日日曜日

浜の朝日の嘘つきどもと (2020)


あれ、ちょっと前にこのタイトルあったやん!! と思った方、ちょっと違います。ちょっと前のは2021年で、今回は2020年。正確には、ちょっと前のは映画版で2021年9月公開で、今回のはテレビ・ドラマ版で2020年10月の福島を皮切りに、2021年1月までに全国のローカル局で順次放送されました。

どちらも福島中央テレビの開局50周年として製作されていて、監督・脚本はどちらもタナダユキ。映画版は主役は高畑充希、準主役として大久保佳代子が重要な役で登場しました。ドラマ版では、高畑充希と竹原ピストルのW主演という形になっています。ストーリーの時系列では映画が先で、そのラストシーンがドラマ版の導入部につながっています。

福島県南相馬にある朝日座は古い映画館。突然やって来た茂木莉子と名乗る女性(高畑充希)の活躍で、何とか閉館の危機をくい止めることができましたが、困難な経営が続いています。ある日、朝日座の前に一人の男性が立っていました。彼は川島健二(竹原ピストル)という無名の映画監督で、唯一任された商業映画が大コケして、失意のあまり死に場所を探していたのです。

ここでもう一度だけ映画を見て感動したら死ぬのをやめようと思う川島に対して、莉子は900円の入場料のところを3500円とふっかけ、いい加減な嘘を織り交ぜてなんで高いのか説明します。川島は「もう俺はお金はいらない」と言い1万円を置いて館内に入るのでした。

映画を見終わって「感動しなかった」川島が出てくると、支配人の森田(柳家喬太郎)が話しかけてきます。川島は問われるがままに、何でここに来たのか話ます。そこへコンビニに行っていた莉子が戻って来て、皆で死に場所を探しに行こうということになります。しかし、山でも海でもしっくりこないという二人に振り回される川島でした。

最後に二人は、朝日座常連で映画愛が強い資産家未亡人の秀子(吉行和子)を川島に紹介します。秀子は川島の唯一の作品を見たことがあるといい、ダメな映画だったけど主人公が「本当にやりたいことをしなさい」というところだけは素晴らしいと褒めました。実はその場面だけが、川島が自分の意見を通したシーンだったのです。

秀子は「朝日座を使う」、「この町のためになる」、そして「自分がやりたいことをやる」という条件を出して、自分がスポンサーになって川島に映画製作を依頼します。莉子、森田、秀子らのぼんやりした説得により死ぬのをやめた川島でしたが、そう簡単には映画にするようなストーリーを思いつかず、それはそれで苦しむことになるのです。

公開順だとこのドラマが先ですが、これだけだと設定が謎だらけ。皆いい人なんですが、言っていることをどこまで信じていいのかわからないくらい自然な嘘を並べ立てています。このあと、前日譚となる映画を見ることで、すべてのやり取りに合点がいくという仕掛けになっている。自分は先に映画を見てしまったんですが、そうするとドラマのやり取りは自然で、むしろセリフにはない深い所を感じることかできて、それはそれで楽しい。

タイトルの「浜の朝日」は莉子の本名である浜野あさひと朝日座のことですが、「嘘つきども」というのは登場人物全員のことで、嘘をつくのは「映画の本質」ということです。町の人々は辛い現実を乗り越えるために「嘘」を使い、人生そのものをあたかも一本の「映画」のように楽しんでいるのかもしれません。

これは是非、ドラマと映画をセットで見るべき作品だと思います。それは、どちらもタイトルが同じというところにも、タナダ監督の強い意図が見て取れます。現在でも、ブルーレイ・ディスクあるいは各種の配信で視聴可能なので、コロナ禍で埋もれさせてはいけない優れた作品として強くお勧めします。

ちなみに川島が朝日座を始めて訪れた時に、上映していたのは「天使にラブソングを」と「ベルリン 天使の詩」の二本立て。このチョイスは映画好きならうなってしまうこと請け合い。どちらも生・死・嘘のキーワードが浮かんでくるところに監督のセンスが光ります。

2025年6月14日土曜日

68歳の新入社員 (2018)

フジテレビの2時間枠の単発ドラマですが、高畑充希と草刈正雄のW主演、オリジナル脚本は岡田惠和。岡田は多くのNHKテレビ小説をはじめ、「最後から二番目の恋」シリーズ、多くの映画を担当したヒットメーカーです。

以前の会社でたまたまヒット企画を出したことで周囲から妬まれ居づらくなった工藤繭子(高畑充希)は、老舗和菓子会社の羊堂本舗の社長(丸山智己)にヘッドハンティングされ、顧客層拡大のための新たに立ち上げられたチームのリーダーとして、会社のイメージアップのためのアイテム開発などの業務を行っていました。

アイテム自体は好評なのですが、和菓子の売り上げ増には直結していないことから、社長は和菓子そのものとの連携した企画を早急に提出して欲しいと言ってきます。しかし、菓子部門の上司は繭子のやっていることに否定的で、顔を見れば嫌味ばかりでとても協力できる雰囲気ではありませんでした。繭子は家に帰ると同居している恋人の小野諒(小瀧望)にぐちを言う毎日で、諒もがんばりすぎる繭子を心配するのです。

8年前に羊堂本舗を定年退職した68歳になる仁井本和夫(草刈正雄)もまた、日々の生きがいを見いだせず妻の文子(原田美枝子)にぐちを言う毎日。たまたま昔の同僚たちと話をしていると、それを聞いていた社長にすすめられて再就職することになりました。

仁井本はかつていた総務部復帰するのかと思っていたら、配属されたのは繭子の部署でした。初対面から繭子は「昔の自慢をして楽しみたいのか、まったくの新人として一から仕事を覚えたいのかどっちですか」と厳しい扱いをします。しかし、仁井本は不慣れなパソコンなども積極的に使えるように勉強して、こどもと同じような年齢の繭子や同僚たちから少しずつ信頼されるようになります。

新しい企画の〆切が近づくものの一向にアイデアがまとまらない繭子は、家に帰ると口癖のように言っていた「疲れた、疲れた」すら言えないくらい追い詰められていました。再び上司に呼び出され、企画はどうなんだと責められ、社長に媚びを売っているんだろうと言われる繭子でしたが、仁井本のことまで悪口を言われついに「ゲス野郎!」と怒鳴って殴ってしまうのでした。

定年後の人生をどう過ごすかは人それぞれだと思いますが、中には仁井本のように生活の張り合いをなくしてしまう人もいるかもしれません。そういう方が、新しい環境で働く場合、やはり「過去の栄光」を表立って持ち出すことは戒めないといけない。でも、「過去の栄光」はその人のベースとして、偉大な経験値になっているわけで、時代が変わってもいろいろな場面で役に立つことを教えてくれる作品です。

繭子は実力はありますが、経験は少なく自分に対しても絶対的な自信を持っているわけではありません。ですから、自分に対する誹謗中傷はいくらでも耐えることができるのですが、その矛先が自分以外に向いた時はそれをはっきりと否定する正義感を持っています。そして、詰め込み過ぎる思いを、うまく吐き出し受け止めてくれる恋人の設定が絶妙です。

性別、年齢、立場などが対照的な二人の主人公を通して、少しだけ生きていくためのヒントみたいなものを感じ取れれば十分に見る価値のあるドラマです。連続テレビドラマほど長すぎず、映画ほど気負っていないので、てきぱきとした進行がちょうどよい作品になっています。

2025年6月13日金曜日

忘却のサチコ (2018)

テレビ東京製作のドラマですが、まず2018年1月に1時間の単発ドラマが放送され、10月から1話30分の全12回の連続ドラマが放送されました。もともとは阿部潤によるグルメ・マンガが原作で、人気の「孤独のグルメ」系のドラマです。脚本は大島里美、狗飼恭子、山岸聖太が共同で担当し、主として山岸聖太が監督を務めています。

出版社の中学館で文芸誌「さらら」編集部に勤めている佐々木幸子(高畑充希)は、几帳面で冗談とは無縁、一切仕事で手を抜いたりせず、食事も栄養ドリンクで済ましてしまう生活。しかし、担当した小説家には全力で協力を惜しまないので、厚い信頼を得ていました。

そんな幸子にも彼氏がいて、恋人の俊吾(早乙女太一)とのいよいよ結婚式の日になりました。しかし、お色直しの間に俊吾は「すまない」というメモを残していなくなってしまうのです。鋼の心を持っているはずだった幸子も、さすがにショックが大きく仕事でミスをするようになってしまうのです。

幸子は「精神的につらくてもお腹は減るのだわ」と、通りかかった食堂に入ると鯖の味噌煮定食を頼みます。そして、これまで食に興味が無かった幸子は、あまりの美味しさに「美味しい物を食べれば一時辛いことを忘れることができる」ことに気がつきます。

それ以来、幸子は一癖も二癖もある小説家とのやり取りでストレスがたまった時、街中で俊吾っぽい人を見かけて心が乱れる時などには美味しい物を求めるようになるのでした。そして、本当に幸せそうに障子をする幸子を見て、誰もが幸子のファンになっていくのです。

編集長は吹越満、同僚は逢沢りな、重岡獏、上地春奈、生意気な後輩に葉山奨之、幸子の母親にふせえりなどがレギュラーで出演しています。小説家には、鹿賀丈史、長谷川朝晴、池田鉄平、大和田伸也らが登場します。

「孤独のグルメ」よりはドラマ寄りの進行ですが、登場する店は実在のもので、どれもが食べて見たくなるものばかりです。近江牛のすき焼き、刀削麺、温玉カレー、マグロ丼、ナポリタンなどの他、宮崎県に出かけてのご当地グルメなどなどが紹介され、よだれダラダラ請け合いです。

行方不明になった俊吾と再会し、恋の結末はいかに?! というストーリーも十分に楽しめます。それにしても、こういう際立ったキャラクターの女子を演じさせると、高畑充希の右に出る者はなかなか見つけられないくらい、突き抜けた演技はなかなか見事です。

2025年6月12日木曜日

浜の朝日の嘘つきどもと (2021)

最初は2020年に1時間もののテレビドラマとして福島中央テレビが開局50周年記念として製作した物。大震災によって経営困難になった地元の小さな映画館で、集まってきた人々の映画に対する愛をドラマ化しました。

モデルになったのは朝日座という実在する映画館ですが、実際には1991年に閉館していますが、震災後も地域の人々の数少ない娯楽として建物が存続し、いろいろな催事が行われています。

映画は、スタッフや出演者は同じで、テレビドラマの前日譚として朝日座が取り壊される計画を何とか阻止しようというストーリーになっています。監督と脚本は「マイ・ブロークン・マリコ」のタナダユキです。

南相馬の高校2年生の浜野あさひ(高畑充希)は、父親が震災成金と非難され家族がバラバラになってしまいました。ともだちも離れてしまい、東京に引っ越すことになったあさひは、学校の屋上で飛び降りるか悩んでいるところを、教師の田中茉利子(大久保佳代子)に止められます。茉利子はどうせ百年後には死んでいるんだから、ここで急ぐことはないと言って、あさひに自分が好きな映画の楽しみを語るのでした。

東京で母親はノイローゼになり、あさひも何で地元にいられなくなったのか知れ渡ってしまい、登校できなくなってしまうのでした。あさひは家出して、今は郡山にいる茉利子のもとを訪れ同居するようになります。茉利子は男にはだらしがなく、すぐに好きになってはふられてしまうのでした。

しかし、娘が家出したと評判になることを恐れた母親が警察に被害届を出したため、誘拐の疑いで茉利子が捕まってしまい、しかたがなくあさひは東京に戻ることにします。茉利子はあさひに高卒の資格を取って絶対に大学に行くようにすすめました。そして映画会社に就職したあさひのもとに、茉利子が病で余命宣告されたという連絡がはいります。

茉利子は南相馬の映画館は、自分が落ち込んだ時に光をもらえた場所で、経営難らしいから何とか立て直してほしいとあさひに頼みます。あさひも食べるものが一番大事だけど、その大事なものを作る農家の人たちにちょっとでも心が休まる時間を提供できる映画館は絶対に必要だと考えていました。

そして、茉利子が亡くなり、その遺志を実行するためにあさひは南相馬に戻ってきました。しかし、支配人の森田(柳家喬太郎)は続ける意欲を無くして映画館はすでに取り壊しが決まっていたのです。あさひは茂木莉子と名乗り、クラウドファンディングを立ち上げたり、町の人々を説得したり行動を開始するのでした。

最近はネット配給の映画が勢いを増し、映画館の存続は厳しい状況になっていますが、東北では大震災による人口減少、その上コロナ禍という絶望的な状況に置かれたことは容易に想像できます。いわゆる活動写真と呼ばれていた時代を知る人もほとんどいなくなり、他にも多種多様の娯楽が増えたことも大いに関係しています。しかし、確かに映画館という非日常的な場所で映画を鑑賞することは、そう簡単には消えない意義があることも否定できません。

そんな映画館の存亡をモチーフにして、東北の再興、そして家族の在り方を考えさせる優れた作品に仕上がっています。この映画もコロナ禍の最中に公開されたため、興行的にはまったく振るわない結果になっていますが、そんな時期でも制作をストップしなかった関係者の方々には敬意を払いたいと思います。これらの良作が埋もれてしまわないように、新作ばかりに注目せず、再評価できる流れがあっても良いと思いました。

ここでも演技者として高畑充希はさすがです。それにも増して印象深いのは大久保佳代子さんで、ふだんのバラエティのイメージも残しつつ、なかなか味のある役所を好演していますので見所になっています。

2025年6月11日水曜日

梅雨入り

 


昨日、関東地方も梅雨入りしたとみられる・・・という気象庁からの発表がありました。

毎年、ブログを書いているとネタ増しの作戦の一つとして、梅雨入りは必ず書くようにしているのです。

この何年かで言えば、この時期の梅雨入りはほぼ例年並みというところではないでしょうか。

ところが気象庁は「遅い」ということらしいのですが、数日の違いですから、あまり気にする必要は無いレベル。ちなみに去年は6月21日だったので、これはさすがに遅かった。

しばらくは洗濯物を干すにもいろいろと悩ましいわけですが、その後はきっと酷暑が待っていると思うと、それはそれでもっと気持ちが萎える。

雨なら雨で、何か楽しむようにできると人生の1/15くらいの時間が楽しくなるんでしょうけど、なかなかそこまで達観できません。

2025年6月10日火曜日

植物図鑑 運命の恋、ひろいました (2016)

有川浩の小説が原作で、高畑充希にとっては映画初主演作です。脚本は渡辺千穂で、「旅猫リポート」の三木康一郎が監督をしました。

不動産会社に勤める河野さやか(高畑充希)は、自分の事を幸運とは縁が無い女だと考えていて、仕事でミスをして上司に怒鳴られる生活を送っていました。料理は苦手で、昼もコンビニ弁当で済ませてしまっています。

2月のある日、今日も暗い気持ちでアパートに帰ってくると、駐輪場に男性(岩田剛典)が倒れていました。声をかけると、彼は「お腹が空いて動けません。噛んだりしません。しつけのできた良い子ですから、拾ってくれませんか」と言うのです。部屋にあげてカップ麺を食べさすと、3分待たずに固いまま頬張る姿にさやかは笑みがこぼれました。

翌朝、美味しい匂いで目を覚ますと、彼は朝食を用意していました。誰かにご飯を用意してもらうという初めての経験に感動したさやかは、しばらくここにいたらどうかと言うのです。彼は樹と名乗りましたが、苗字は嫌いだからと言いませんでした。樹は半年間同居させてもらうことになりますが、ちょうど半年後の8月15日はさやかの誕生日でした。

樹はさやかが帰るとコンビニでの夜勤のバイトに出るようになりますが、朝食とさやかの昼の弁当だけは毎日用意してくれました。そして、バイト代で購入した2台の自転車で、さやかを「狩り」と呼んで河川敷に連れ出すのです。そこで、樹は写真を撮りながらさまざまな雑草の名前を教えてくれて、食べれる草を持ち帰るのでした。

ある日、狩りで片足を濡らしてしまったさやかに、樹は冷えるからとハンカチを取り出して靴の中に入れました。それは女性物のハンカチで樹はバイト仲間にもらったと説明します。気持ちが乱れたさやかは、思わずバイト先を見に行ってしまいます。すると女性店員が樹のことを「日下部君」と呼んでいるのを聞いてしまいます。

さやかは帰ってきた樹に、「私は何にもあなたの事を知らなくて、あなたのことが好きだから悔しいけど、どうせただの同居人ですよね」と言ってしまいます。樹は「引き金を引いたね。僕が君を好きなことを見せないようにどれほど努力してきたと思っているんだ」と言うとさやかを抱きしめるのでした。

8月15日、約束の半年。さやかは不安な気持ちで家に帰ると、電気がついていません。でも、家に入ると電気がついて手作りの誕生日ケーキと立派な植物図鑑を用意した樹が待っていました。しかし、翌朝、机の上にはさやかを写した写真と狩りの成果のレシピノートが置かれ、樹の姿はどこにもありませんでした。

・・・もちろん安心してください。ハッピーエンドが用意されています。高畑充希と岩田剛典のW主演という形ですが、基本的にさやかの主観でストーリーは進行します。高畑充希はめちゃめちゃ可愛いし、草食系イケメンの代表格の岩田剛典とくれば、どう頑張ってもギドギドした展開はあり得ません。恋愛ドラマの王道みたいな作品です。

堅苦しいことを考えるような映画ではありませんから、素直に見て拍手したくなる佳作です。

2025年6月9日月曜日

ヲタクに恋は難しい (2020)

高畑充希主演の恋愛ミュージカル映画・・・ですか? これ。何かハチャメチャな設定のふじた原作の漫画が原作のコメディで、脇役で佐藤二朗とムロツヨシが登場する・・・といえば、そう、監督・脚本は福田雄一。福田流のギャグ(あまり好みじゃないけど)は、やや封印されヲタクがメインでその存在で笑わせる感じです。

桃瀬成海(高畑充希)はゲーム・ヲタクで、それが元で彼氏にふられ。前の会社も居ずらくなって転職。新しい職場には、偶然幼馴染でゲーム友達だった二藤宏崇(山崎賢人)いました。再びゲームで盛り上がり、付き合うことになります。

成海はゲーム以外でも、声優、コスプレも好きで自ら同人誌を作ってコミケで販売するヲタクっぷりですが、今回は職場で失敗したくないので周囲には隠していました。宏崇はゲーヲタを隠していませんが、周りから超陰性キャラと思われています。

ハワイへの出張のため、激コワ上司の樺倉(斎藤工)の元でいろいろミスをしてしまう成海は、宏崇に助けを求めたいのですが、突然連絡が取れなくなってしまいます。宏崇ははじめは成海のヲタク度を消すように協力するつもりだったのですが、むしろ一緒に楽しむために専門外の声優ヲタクになるための特訓をしていたのでした。

・・・という、まぁ、どうでもいいようなストーリーなんですが、一番は出演者の歌と踊り。高畑充希は、もともとミュージカルは得意ジャンルなので、まったく問題なくこなしています。驚くのは山崎賢人も1曲ソロがあり、踊りのシーンもある。さすがに歌はそれほどじゃないけど、ファンにはこたえられない。他に宏崇の上司で登場する菜々緒も、斎藤工も歌って踊るという大サービス。

宏崇の同僚でアニメ・ヲタクは賀来賢人で、例によってハイ・テンションの演技をしています。成海の同僚でちょっとだけ登場するのは、ブレーク前の今田美桜。後はその道では有名らしい声優さんとか、コスプレイヤーが大挙して登場しているらしいのですが・・・よくわかりません。

まぁ、どうでもいいと言うと語弊がありますが、高畑充希のミュージカル・スターとしての力量を再確認するには丁度良い作品というところでしょうか。

2025年6月8日日曜日

過保護のカホコ (2017)

高畑充希の初主演テレビ・ドラマ。高畑充希は高校生の時にミュージカル「ピーターパン」で歌唱力・演技力を評価され、2016年にNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で、全国的に知られるようにかりました。

日本テレビ制作のこのドラマは、「家政婦のミタ」の遊川和彦のオリジナル脚本で、過保護に育てられ何でも母親の言う通りに生きてきた主人公が、少しずつ自立していく「親離れ」を描いていますが、同時に母親の「子離れ」もテーマであり、大袈裟に言えば「家族再生」のコメディです。

両親に溺愛され育てられた大学生の根本加穂子(高畑充希)は、就活を始めたもののなかなか内定がきまらない。母親の泉(黒木瞳)は、何から何まで加穂子の生活を支配していて、誰に対しても主導権を譲らない性格。父親の正高(時任三郎)は、娘可愛さから母親に思っていることをまったく意見できません。

泉には二人の妹がいて、次女の環(中島ひろ子)は病気がちで、警察官の衛(佐藤二朗)と結婚したのも数年前でこどもはいません。弁当屋で働く三女の節(西尾まり)は看護師の厚司(夙川アトム)との間に娘の糸(久保田紗友)がいて、チェロ奏者として海外留学したい糸が生きがいでした。

三人姉妹の母親は大らかな並木初代(三田佳子)、父親はにぎやかですぐにすねる福士(西岡德馬)で、誰かの誕生日や祝い事があると、全員が並木家に揃って賑やかに食事会をするのを常としていました。正高の父親は根本正興(平泉成)でほとんど居眠りばかりをして、話しかけても「明日な」とはぐらかすのが口癖。母親の多枝(梅沢昌代)も正興にはあきれていますが、一番の心配事は出戻りで、無計画でいい加減な娘の教子(濱田マリ)のこと。

加穂子は大学のキャンパスで、画家を目指している麦野初(竹内涼真)と知り合います。初はこどものときに父親は亡くなり、母親は黙って出て行ってしまったため施設で長く生活していたのです。初はあまりに主体性が無い加穂子に対して、今まで誰も言わなかった意見をずばずばと言うので、加穂子は初めて「考える」ことを始めるのです。一方、加穂子は初の描くスケッチが人を感動させる力があるとお世辞抜きで褒めるのでした。

物語は糸が手の病気になり、チェロが弾けなくなったことから大きく動き出します。糸は家族全員が揃うのは嫌でしょうがない、何でこんな貧乏の家に生まれた、そして加穂子にもあんたみたいな苦労知らずは大嫌いだったと言うのです。母親にも親とは思っていないと言って、悪い仲間と遊ぶようになってしまうのでした。

それぞれの家族との関係がしだいに崩れていくことが悲しくてしょうがない加穂子は、まっすぐに何とかしようと動き出すのです。初代も加穂子の笑顔にはみんなをまとめる力があると応援します。お互いに好意を持ち始めた加穂子と初の関係も、次から次へと起こる家族トラブルの中で揺れ動くのでした。

というようなコメディとしては、ドタバタ調なところもありますが、とにかく高畑充希の突き抜けた演技がめちゃくちゃ楽しいドラマです。もちろん落ち込むときはあるのですが、回復が早く何事にもポジティブな加穂子の活躍は、見ていてすがすがしさを感じます。

こどもの意志を尊重して子育てをしてきたつもりの自分としても、いろいろと身につまされる部分があって、かなりデフォルメされているとはいえどこの家庭でも当てはまる話だろうと感じます。笑いの中に家族のエッセンスみたいなものが、ほどよく描かれているストーリーになっているのでお勧めです。

2025年6月7日土曜日

豆腐ハンバーグ


これもYouTubeネタを参考にしたレシピです。

最初に告白すると、はっきり言って失敗作です。

最初に一丁の木綿豆腐を用意して、上からまな板をおいて水分を抜きます。豆腐は、けっこう中に水が残っていますから、30分くらい放置しておきます。

ある程度水が抜けた木綿豆腐をビニール袋にいれます。さらにみじん切りのタマネギ1/4個、生卵1個、塩、コショウ、小麦粉大さじ1、ナツメグ少々を追加します。

袋の中で、全部をしっかり混ぜ合わせます。あとはそれなりの形にフライパンに絞り出して焼くだけ。

何しろ豆腐は大豆からできていて、大豆と言えば代替ミートの代表ですから、それなりのものになることは間違いない・・・・はずだったんです。

でも、とても完成作品をお見せできませんでした。

YouTubeはつくねみたいな感じだったので、ハンバーグとは多少違うのですが、それでもけっこうそれなりの出来になっていたんですけどね。

とにかく形がまとまらない。ひっくり返すときに、どうやってもバラバラになってしまいました。ですから、出来上がりは、ただただ豆腐を崩した中途半端なそぼろみたいな感じで、まったく美味しそうに見えませんでした。

だからと言って、小麦粉とかをおおめに入れるのも抵抗あるしなぁ・・・・

味としては、まぁ、こんなもんかという感じ。見た目が悪すぎて、箸が進みませんでした。

2025年6月6日金曜日

つばめ発見


ここは、クリニックのビルの地下駐車場。

機械式の立体駐車場になっているので、天井がけっこう高い。先日、急に黒い影が飛び回っていました。

つばめです。

とにかく動きが早いので、写真ではわかりにくい。

主として東南アジアで冬を過ごし、4月ごろには日本で巣作り、卵を産んで子育てをするのが一般的。

このようなコンクリートの壁でも平気で巣を作ることが可能で、数年前にもこの駐車場に巣が作られたことがありました。

今回は、見回してみても巣がありませんでしたが、おそらくそんなに遠くない場所にあるんだろうと思います。

きっと子つばめが大きな口を開けて親を待っているんでしょう。すくすく育って、無事に飛び立ってほしいものです。

2025年6月5日木曜日

ニュータンタンメン スタミナ玉子飯


ニュータンタンタメンは、たびたび登場する・・・けっこうはまる食べ物なんですが、いわゆる担々麵とは違い、たぶんニンニクがきいた鶏ガラベースに麻辣醤を混ぜて、パラパラのひき肉と卵とじが入ったスープが超くせになる。

近くの店が閉店してしまったので、家で再現に挑戦したこともあるんですが、カップ麺が出た時は残念感が強かった。袋麺はかなりの再現度で大満足だったのですが、スーパーに並んでいたのは一時だけで、その後見かけなくなってしまいました。

今回見つけたのは「スタミナ玉子飯」ということで、ご飯にかけて食べるバージョンのレトルトです。

そもそも、店のニュータンタンメンも、最後にスープを残してご飯を入れて食べ終えるのが定番で、これが最高に旨い。

レトルトですから、味には問題ないと思い、早速食してみました。

御飯にかけると、量的には十分。色、香りはまさにニュータンタンメン。期待が膨らみます。

・・・モグモグ、・・・パクパク。

うん? 何か違う。何だろう。確かにニュータンタンメンの味・・・なんですが、何か足りない。

そう、優等生すぎる。麺やトッピングがごちゃごちゃに混ざった残りスープじゃないんです。あのB級グルメ感が無くなって、このためにクリアに作りましたという味なんです。

まぁ、しょうがないかな。やっぱり、お店の味はお店でないと堪能できないということだと思いました。

2025年6月4日水曜日

背番号3


長嶋茂雄さんが亡くなりました。

自分は、どっぷり「巨人・大鵬・玉子焼き」世代(これがわかる人は年がばれる)。そして、その時の巨人はON時代であり、王と長嶋は少年たちほぼ全員の憧れのスターです。

男の子は全員が野球少年。まだサッカーは、走り回っているだけの疲れる華のないスポーツです。長嶋選手の引退は、本当に困民的セレモニーで、誰もがその一言一言を心に刻んだのでした。

自分が女子医科大学の膠原病リウマチ痛風センターに在籍していた時、長嶋さんは病棟にしていた青山病院に脳梗塞で極秘入院してきました。厳重な箝口令がしかれていたようで、我々の下っ端は噂を囁きあっていました。重篤であったため、より高度な治療をするため転院になったのも、秘密裏に行われたようです。

あれから20年以上、不自由な体でも野球のためにできることを惜しまずにご尽力されてきたことには、本当に頭が下がります。しかし、ついにこの日が来たのかと思うと、寂しさが湧いてくることを止めることはできません。

合掌

2025年6月3日火曜日

クレイジークルーズ (2023)


企画・製作はNetflixで、2023年に配信された映画。「大豆田とわ子と三人の元夫」でペアを組んだ監督の瀧悠輔と脚本の坂元裕二が担当しています。

豪華客船のバトラー(執事)として様々な接客を行っている冲方優(吉沢亮)は、横浜に寄港して恋人が乗船してくるのを楽しみにしていました。しかし、横浜で乗り込んできたのは盤若千弦(宮崎あおい)で、冲方にあなたの恋人と私の恋人が浮気していると告げ、証拠のSNSのやり取りを見せるのです。

映画プロデューサーの保里川藍那(菊地凛子)は若手俳優の井吹真太郎(永山絢斗)と不倫旅行中。ヤクザの組長の娘である萩原汐里(蒔田彩珠)は、元組員の湯沢龍輝(泉澤祐希)と駆け落ち。そして医療界で絶大な権力を持つ久留間宗平(長谷川初範)は、息子夫婦(安田顕、高岡早紀)と孫娘の玲奈(大貝瑠美華)、家政婦の佐久本桂子(菜葉菜)とその息子で玲奈の相手をする奏翔(潤浩)を引き連れての学会旅行です。

冲方の恋人は、直前に仕事が入ったと嘘の連絡をして船には乗りませんでした。そのことを知った千弦は船を降りようとしますが、船はすでに横浜を出港してしまいました。

暗くなって、嫁にプールサイドに連れだされた宗平は、嫁が不貞をして産んだ子が玲奈であることを知っていると伝えると、嫁は発作的に宗平をプールに突き落としてしまいます。そのすぐ後に保里川、井吹、汐里、湯沢の四人、そして千弦と奏翔がプールに行くと、丁度誰かが悲鳴と共にプールに落ちてしまうのを目撃してしまいます。

宗平の息子は宗平の遺言状に遺産はすべて佐久本に譲るとなっていることを知っていたので、宗平の遺体を部屋に隠し、冷房を強くして何とか発覚を遅らせようとするのでした。冲方は船長(吉田羊)に、誰かがプールに落ちて死んだようだと報告しますが、事件があって横浜に帰ることになると困るので、全員が何も見ていないと証言するのです。

混乱を招いた冲方は謹慎処分を受けてしまいますが、それをいいことに、千弦と共に事件解明のため自由に行動することにしました。

一見、犯人が分かっている殺人事件ですが、そこはなかなか一筋縄ではいかないストーリーの展開になっていてますが、ミステリーとしてはそれほど上等な物とは言えません。どちらかというと、それぞれのカップルの利害打算がそこそこ面白く、どんどんカップルが入れ替わったりするのが楽しい仕掛けになっています。

中心になっているのは冲方と千弦の浮気された同志が、事件解明と言う共同作業を通じて段々惹かれあっていくところ。ちょっとしゃれた感じのセリフのやり取りが、気が利いていてよく考えられている脚本だと思います。

ですから、あくまでも犯人捜しよりもロマンスの行方を気にして見たほうがよさそうな作品です。つまりどちらかというラブコメと考えれば、、そこそこ面白い作品です。どうせ船長に吉田羊をもってきたのなら、女船長にもロマンスがあってもよかったかもしれません。それにしても多くの登場人物の名前が簡単に読めないのが辛い。

2025年6月2日月曜日

ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜 (2023)


躍進目覚ましいNetflix映画。原作は、麻生羽呂・原作、高田康太郎・作画による日本のマンガで、脚本・三嶋龍朗、監督・石田雄介で実写化されました。タイトルが示す通り、ゾンビが出てくるんですが、邦画で似たような作品で思い出すのが、やはりマンガ原作の「アイアムヒーロー(2016)」です。両者を見て日本のゾンビ映画も完成度が高くなったと思いますが、こちらはどちらかとコメディに寄せていて、怖さより楽しさが勝っている感じです。

アキラ(赤楚衛二)がやっと就職した会社は超の上に超がつくブラック広告代理店でした。上司の小杉(北村一輝)はスーパーパワハラ人間で、アキラは次第に小杉に逆らえない人間になっていくのです。

ところが、ある日突然に街中で人間がゾンビと化し、襲われて噛まれた人間もゾンビになってしまうというパニックが発生します。アキラはゾンビから逃げながらも、これで会社に行かなくてもよくなったと喜んでしまうのでした。どうせ自分もゾンビになってしまうのなら、いっそのことできるだけやりたいことをやってやろうと思い立ち、ノートに「ゾンビになるまでにしたい100のこと」を書き始めるのです。

コンビニで偶然出会ったシズカ(白石麻衣)は、生き延びるために独力で自分を守ると言い、やりたいことをするために無鉄砲に突進するアキラにあきれてしまいます。親友のケンチョ(柳俊太郎)をゾンビに囲まれた部屋から助け出し、アキラは昔からなりたかったスーパーヒーローになるため、茨城の水族館にある、噛まれても大丈夫なサメの皮膚で作ったスーツをもらいに行くと言い出します。

二人でドンキホーテで必要な物資を調達することにしますが、店の前にはゾンビの群れが集まっていて、しかもそこに逃げる人々の乗ったバスが突っ込んでくるのでした。ゾンビに襲われたバスにはシズカも乗っていて、バスは茨城の水族館が食料もたっぷりあって安全だというので向かうところだったと話します。

何とかゾンビを撃退した3人は、キャンピングカーで茨城に向かうことにします。途中で、アキラがしたいと思っていた温泉に入ったり、パラグライダーを楽しんだりするうちに、しだいに彼らの間には仲間意識が芽生えていくのでした。しかし、やっと到着した水族館は、何と偶然そこで仕事をしていて助かった小杉が、逃げてきた人々を言葉の暴力で支配するブラックな状況だったのです。

いつものように原作は未見なのですが、少なくとも映画ではゾンビ化の原因とかは触れられていません。ゾンビを倒すことが主眼のストーリーでは無いので、それはそれで良しとします。つまり、ブラックな環境で考えることを停止してしまったアキラが、再び人間性を取り戻し、本当にやりたかったことをやれる自分に成長するというところがテーマです。

シズカの素性についても、ほとんで触れられていませんが、何らかの理由で勉強を辞めてしまった医学生?らしい。シズカは、アキラと対照的にズケズケと物が言えるのに、生きるためにできるだけ忍耐を選んでいました。しかし、どんどん前向きなアキラと行動を共にしていくうちに、彼女もまた成長していくのです。

ちょっと優しさが強めのアキラ役の赤楚衛二はぴったりですし、北村一輝も顔が濃くて声に威圧感があるので(ゴメンナサイ)、この強面上司ははまっています。市川由衣や筧美和子といった美人系女優さんがゾンビ化してしまうのも見どころになっているかもしれません。

2025年6月1日日曜日

新幹線大爆破 (2025)


新幹線大爆破」は50年前、1975年に名優・高倉健の主演で作られた映画で、任侠路線からの転換を模索していた高倉が、安いギャラでもいいから出演したいと熱望して犯人役を演じたもの。当時ハリウッドで流行していたパニック物を日本に持ち込んだ先駆けとしても評価され、JR(当時の国鉄)が協力拒否したものの、佐藤純爾監督らの様々なアイデアによって、かなりのリアリティを再現できたことも評価されています。

すでに安全神話が成立していた新幹線が、制御不能の恐怖の走る箱と化すというアイデアは監督を中心としたスタッフの話し合いで煮詰まっていきました。新幹線の速さが革新的で日本の高度成長の到達点のような憧れを持って喜ばれていた時代ですから、80km/h以下にスピードを落とすと爆発するという、もう止まることができない状況は多くの日本人に根源的な恐怖を植え付けたのでした。

今回、半世紀を経て再び同じタイトルでNetflixがリブートしたわけですが、今風の雰囲気を取り込んだ単純なリメイク作であれば、二番煎じ以上の評価はされなかったかもしれません。しかし、一見、前作と同じように事件が進行するものの、以前の事件が新たな事件の引き金となっている内容で続編的な色を濃くしたこと、そして今回はJRが全面的に協力したことで高く評価できる作品になっています。

監督は「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」の樋口真嗣、脚本は中川和博・大庭功睦です。また草彅剛、のんという、ある意味芸能界で一度排斥されながら、地道に活動し再評価された二人の出演も話題性だけでなく評価されるポイントになっています。

前作では高倉を主演に迎えたこともあり、犯人側の視点が盛り込まれ、高度成長の日本の中でその波に乗り切れなかった人々の悲しみが取り上げられていました。しかし、今作の特徴は、東北新幹線が100km/h以下になると爆発するという究極の恐怖に集中するため、あえて人物像には深入りしていないところにあります。

人を描いていないという批判はおそらく監督らは覚悟していたと思いますが、確かに前作をしらない人に対しては「何故新たに同じような事件が起きたのか」という情報不足は否めない。本編の中でも昔の事件について最小限の紹介はされていますが、そこを理解するためには数分間のあらすじの挿入では不十分ですから、はっきり言うと前作を絶対に見てから本作を見ることを強くお勧めします。

緊迫した事態に対応する実直(すぎるくらい)な車掌に草彅剛、スピードを緩められずジェットコースターのような車両の運転手にのん、危機管理能力と決断力がある総括司令長に斎藤工、乗客にはスキャンダルからの復活を狙う国会議員に尾野真千子、SNS成金のYouTuberに要潤、修学旅行の帰りの女子高校生に豊嶋花、ヘリコプター墜落事故で多数の死傷者を出して社会的に糾弾される社長に松尾諭などが出演しています。

JRの協力もありますが、CGなどの映像技術の進歩により、止まれない密室となった新幹線の映像は迫力があり、それは前作の比ではありません。俳優たちの演技も素晴らしく、ドラマとしての格を何段階も上げることに成功しています。

ただし、やはり前作を知っている者からすれば、それを超えているとまでは言えないし、見ていない者には理解しずらいところが多い作品だとは思います。それはある程度しょうがない部分で、現代風のエンターテイメントとしては評価されることは間違いありません。