客演は初期のTEAM NACSではお馴染みの3人。劇団イナダ組から川井"J"竜輔と小島達子、そして劇団SKグループから小山めぐみが参加しています。劇団SKグループは、戸次らと同期の北海道学園大学演劇研究会のすがの公が、1998年に立ち上げた演劇ユニットです。イナダ組ともメンバーの交流が深く、当時の札幌演劇界を盛り上げていました。
舞台となるのは、近未来の地球。多くの地域が砂漠化し、そのゴミ溜めのような土地の中にエンジャイルと呼ばれる死刑囚だけを集めた刑務所がありました。そこへ新たな囚人として送られてきたタクマは、囚人たち自身で娯楽を提供するチェリーさくらんぼ劇団に入ることになります。
チェリーサクランボのリーダーはモリサキ、こどもとの再会だけを夢見るシゲ、収監されて40年たつ最古参のオオイズミ、変態芸が得意なヤスケン、そして女囚のメグミとタツコで、誰もが大量殺人の罪を犯していました。
一方、別の時間軸では、時は現代。メグミはヤスケンとの婚約を発表するために、家にタツコ、オオイズミ、シゲ、タクマらの友人たちを招待しました。扉を開けると隣の部屋からヤスケンが飛び出るサプライズのはずでしたが、そこにいたのは緑のジャージのJでした。Jが静かに退場すると、その後にはヤスケンが死んでいたのです。
エンジャイルでは、チェリーさくらんぼによるショーが行われ大盛況でした。そこへ現れたのは、モリサキへの暴力行為で半年間懲罰房に入っていたJで、彼は「次のショーを楽しみにしている」と言って去っていきます。そして、看守に頼んだこどもへの手紙が捨てられているを発見したシゲは、怒りに震えるのです。
看守がシゲが脱走したことを報告します。そして、新たに看守のJが派遣されてきます。看守のJは何故かタクマを探しているのです。ほどなくシゲの遺体が発見され、チェリーさくらんぼは解散命令を受けてしまいます。
部屋を片付けていたメグミが扉を開くと、死んだはずのヤスケン、そして緑のジャージのJが現れメグミは腰を抜かすのです。実は緑のジャージのJは死神で、明日死ぬはずだったヤスケンを間違えて早くに死なせてしまったので、とりあえず生き返しておいたと言うのです。ヤスケンとメグミは、二人の最後の夜を過ごすのでした。
チェリーさくらんぼは最後の公演の練習をしていると、看守が登場しタクマの死刑執行命令を読み上げます。連れていかれるタクマをみつめていたのは、緑のジャージのJでした。モリサキは、全力でエスケーパー(脱獄して逃げる人)の劇を始めるのです。看守のシゲはエンジャイルの囚人の扱い方に疑問を抱いていたので、タクマを逃がしますが、所長のオオイズミは看守のシゲにタクマを射殺することを命令するのでした。
時空の異なる2つの場所でストーリーが進行するのですが、7人の俳優のうち両方の場所で同じ役をするのは川井"J"竜輔だけです。他の6人は、全員が看守であり、囚人であり、そして現代の人々を演じますが、それぞれの直接的な関連はありません。
それぞれのストーリーだけなら珍しいものではないかもしれませんが、死神というたった「一人」の存在をかませることで、生きることの大切さを両方からリンクさせていくというのは、森崎博之の「天才」的な発想によるものです。
また、舞台装置を初めて立体的に組み、3次元的な高低・奥行きを利用した森崎の演出も冴え渡っています。チェリーさくらんぼのショーで歌われるのはTHE BOOMの「気球に乗って」で、音尾のギターと森崎のハーモニカの伴奏で全員で歌い上げます。そして、その直後の安田の狂気はほとんどアドリブで行われているようで、舞台にいた全員がマジで笑い出している。まさに「変態安田」ここにありというエネルギーの爆発が見事です。
最後のシーンも、ステージを2つに割って照明の色を変え、左はチェリーさくらんぼの脱獄の芝居、右には実際に脱獄するオトオの行動をリンクさせるところは唸ってしまいます。そして、結末はまったく反対になる演出もさすがだと思いました。
まだまだ新米の演劇集団にもかかわらず、札幌の2か所で全20ステージを行い、そのほぼすべてを満席にするというのは、人気が先行しているだけでなく、見事なチーム・ダンスなどを含めてエンターテインメントとしての完成度がスバ抜けていることを実感できるものでした。
それぞれのストーリーだけなら珍しいものではないかもしれませんが、死神というたった「一人」の存在をかませることで、生きることの大切さを両方からリンクさせていくというのは、森崎博之の「天才」的な発想によるものです。
また、舞台装置を初めて立体的に組み、3次元的な高低・奥行きを利用した森崎の演出も冴え渡っています。チェリーさくらんぼのショーで歌われるのはTHE BOOMの「気球に乗って」で、音尾のギターと森崎のハーモニカの伴奏で全員で歌い上げます。そして、その直後の安田の狂気はほとんどアドリブで行われているようで、舞台にいた全員がマジで笑い出している。まさに「変態安田」ここにありというエネルギーの爆発が見事です。
最後のシーンも、ステージを2つに割って照明の色を変え、左はチェリーさくらんぼの脱獄の芝居、右には実際に脱獄するオトオの行動をリンクさせるところは唸ってしまいます。そして、結末はまったく反対になる演出もさすがだと思いました。
まだまだ新米の演劇集団にもかかわらず、札幌の2か所で全20ステージを行い、そのほぼすべてを満席にするというのは、人気が先行しているだけでなく、見事なチーム・ダンスなどを含めてエンターテインメントとしての完成度がスバ抜けていることを実感できるものでした。