この公演は「ロックメン」と呼ぶ札幌で活動する各劇団のメンバーで結成した演劇ユニットによる「旗揚げ公演」として行われた、戸次重幸の作・演出の舞台です。ただし、旗揚げとなっていますが、その後は活動実績はありません。メンバーは戸次以外は、劇団イナダ組から川井"J"竜輔と江田由紀浩、ff男盛りレコーズの岩尾亮、劇団RUSHの高橋逸人、そして劇団深想達嘘の城谷歩の男性6人組です。
夏だというのに、日本アルプスの3000m級の高山の頂上付近は天候か急変して猛吹雪となりました。山田登(岩尾亮)は、山小屋に飛び込んできますが誰もいる気配がありません。そこへ山川進(江田由起浩)、さらに年配の山浪歩(城谷歩)、武道修行中の山上生(川井"J"竜輔と)が避難してきます。
彼らは暖を取りたいのですが、火をつけるものを持ち合わせていない。その時、奥の部屋から全身白い毛むくじゃらのイエティ(戸次重幸)が飛び出してくる。イエティは何と言葉がわかるらしい。しかも、マッチを持っていて人間たちをからかうように無駄に燃やしてしまうのです。山上が飛びかかると、このイエティは意外と弱い。
そこに登場したのは自信が持てない修験者の山出修(高橋逸人)で、今度こそイエティに勝つと意気込むのです。だいぶ前から、何度か勝負を挑んでいたのですが、勝ったためしがないらしい。でも幸いなことに山出はライターを持っていました。山田が暖炉の薪に火をつけようとした時、イエティは「やめといた方がいいよ」と言います。イエティの言うことを無視して火をつけた途端、まぶしいくらいの光が発せられ、山小屋は時空を超えて次元を移動してしまうのです。
基本的に、遭難して山小屋に集まった者たちが、時空トラベルに巻き込まれるというシチュエーション・コメディであり、ドタバタ感が強い作品です。一応、仲間となったらお互いを思いやり大事にするというメッセージはあることはありますが、その主張は薄めで個々の欲望が優先されている部分が目立ちます。
ですから、あまり深く考えずに単なるコメディとして楽しめばいい。戸次目当てで見ると、なかなか登場しないので、ファンの方は辛抱強く待つ必要があります。それぞれの演技は安定していますが、イナダ組の二人は経験値が高いように思います。ユニット名の「ロックメン」は、メンバーの岩尾が「岩男」になって英語になったところから来ています。
ちょっと気になるのは舞台の広さ。この手の話を展開するには広すぎるような感じがします。広い一室だけで、やや閑散とした感じ。音声だけで伝える隣の部屋で起こることは、けっこう重要な部分なので、上手1/4を隣室、下て1/4を屋外とかにして使うのもよかったように思います。ただ、予算はだいぶ増えてしまいますけどね。