2025年5月14日水曜日

電車の広告


GWに東京に出る用事があったので、久しぶりに田園都市線に乗ったんですが、電車内の様子の変化に驚きました。

壁面の挟みまれた広告がほとんど無い。

新型の車両だったのか、広告があった場所には液晶パネルが、ずら~っと並んでいます。順繰りに映し出されているのは短いニュース数篇、天気予報、そして広告です。

ただ、一周3分程度なので、30分ほど乗っている間に同じものが何度も繰り返されるので、いい加減飽きてしまいました。

紙の広告もごくわずかにはありますが、存在感はかなりありません。それにも増して少ないのが中吊り広告、扉と扉の間に1か所しかありません。

コロナ禍の時期に交通機関利用者が激減して、いっきに広告が減ったことはありましたが、おそらくこれをきっかけの一つにして、紙媒体のメディアは激減したのではないでしょうか。

時代の流れ、と言ってしまえばそれまでですが、デジタル好きの昭和人ですけどアナログが無くなっていくのは寂しさを感じます。

2025年5月13日火曜日

茶の味 (2004)

石井克人は、多くのCMディレクターとして活躍していますが、1999年に「鮫肌男と桃尻女」の監督・脚本で注目されました。この映画でも、原作・脚本・監督・編集とほぼすべての役柄をこなして、4年間かけて作り上げています。

里山の町(ロケは栃木県芳賀郡茂木町)を舞台に、春野一家の日常をのんびりと描いています。起承転結は何となく有るような無いような、時々意味不明のシュールなシーンとユーモアを交えながら進行する作品です。

高校1年生の春野一(佐藤貴広)が全力疾走するシーンからスタート。一は片思いの女の子が引っ越してしまい、彼女が乗っている3両編成の電車を追いかけているのですが、間に合うわけもなく、頭の中から電車が飛び出して消えていくのです。

この冒頭からして、何だこれは?!的な状況で、妹の小学生の幸子(坂野真弥)は縁側に座っていて、右を見ると窓からのぞいていた離れのおじいちゃん(我修院達也)が窓を閉める。幸子が見るのをやめるとまた窓が開く、ということを延々と繰り返しています。それとともに、幸子の前には巨大な幸子が出たり引っ込んだりしているのです。

父親のノブオ(三浦友和)は催眠療法士で、母親の美子(手塚理美)は家でアニメーターの仕事をしています。おじいさんは急に独特な歌を歌ったり、美子の作画のポーズのアイデアを実演したりする、それなりに変わり者。

美子の弟で東京で録音技師をしているアヤノ(浅野忠信)が、しはらく同居していて、こどもたちに呪いの森の話をします。それはアヤノが小学生の時、森で土に半分だけ埋まっている卵を発見して、その上に野糞をしたら、血だらけの刺青をした男がいつも自分の周りに現れるようになったというもの。しばらくしてまったく姿を見せなくなったのですが、実はそれは人の頭蓋骨で、発見され上に乗っていた糞が取り除かれたため成仏できたらしい。

幸子は逆上がりが出来るようになりたくて、林の奥の今は立ち入り禁止になっている公園で練習をしています。もしかしたら、アヤノの話のように逆上がりが出来れば、巨大化した自分は現れなくなるかもという淡い期待を持っていました。

ノブオの弟の一騎(轟木一騎)も東京で漫画家になっていましたが、自分の誕生日祝い用だっと言って、アヤノの手伝ってもらい、おじいちゃんも巻き込んで「山よ、山よ・・・」と叫ぶ変な歌を作り上げました。

学校に鈴石アオイ(土屋アンナ)が転校してきて、一は一目惚れしてしまいます。アオイが囲碁部に入部したことを知ると、日頃からノブオやアヤノと碁を打っていたので、かぜんやる気を出した一も入部します。やっと、一はアオイと対局することができて嬉しくてしょうがない。帰り道は、雨が降っていて相合傘。バス停で別れるとき、一はアオイに傘を渡して、雨の中を嬉しそうに走り出すのでした。


・・・というシーンがこれなんですが、まぁ、実に楽しそうだこと。

美子の仕事は大成功で喜んだのも束の間、おじいちゃんが亡くなりました。おじいちゃんは家族の一人一人の様子を大きなパラパラまんがにして残していました。幸子のは、逆上がりができて笑っているものでした。幸子は再び公園に行って練習をしていると、やっとコツがわかって逆上がりに成功します。

すると巨大な幸子は消え、代わりに巨大なヒマワリが登場して、どんどん大きくなって幸子を飲み込み、日本を飲み込み、そして地球も飲み込んでいくのでした。宇宙でヒマワリは飛散すると、あとには美しい夕焼けが広がっていて、それぞれの場所でみんなが心静かに眺めるのでした。

まず、最近よく言われる「伏線回収」とかにこだわる人には絶対無理な映画です。ちょっと幸せな気分になれる何かほのぼのとした時間を過ごしたい方には、超おススメの映画です。美しい風景をたっぷりと見れて、ゆったりとした無駄とも言えるたくさんの間合いは、好きな人にはかなりはまると思います。143分という長めの作品ですが、自分はまったく飽きることなく見ることができました。

俳優さんたちの演技は、実に自然で気負いがなく、もしかしたら脚本にはセリフは書かれていなくて、全部アドリブじゃないかと思えるくらい普通の会話です。当然、説明っぽいセリフも皆無で、映像や前後の展開で見る者が想像することが期待されています。

だからと言って、この映画が描きたいことは何だとか、あまりつきつめて考えない方が良さそうな作品です。それぞれの年齢や立場によって、漠然と抱えている不安みたいなものをパッチワークのようにつなげていったものかもしれません。

2025年5月12日月曜日

チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像 (2014)

海堂尊原作の医療サスペンス「田口・白鳥シリーズ」の映画化、第3弾です。ただし、前2作と違って、これはテレビドラマ・シリーズの完結編として、テレビからの出演者が登場します。

2008年のseason 1が「チーム・バチスタの栄光」、2009年にスペシャルとして「ナイチンゲールの沈黙」、2010年にSeason 2で「ジェネラル・ルージュの凱旋」、2011年にSeason 3で「アリアドネの弾丸」、2014年にSeason 4で「螺旋迷宮」と続き、そしてFINALとしてこの映画が作られています。

映画は「螺旋迷宮」の流れを引き継いでの解決編と、「ケロべロスの肖像」の事件が同時に進行する形なので、ドラマを見ていないとややついていけないところがあります。テレビでは後藤法子が一貫して脚本を手掛け居て、 今井和久、星野和成らが演出をしていますが、映画でも同じスタッフが担当しています。

東城大学病院では厚生労働省と協力して、世界最高の性能を誇るリヴァイアサンと呼ばれるMRI機器を導入し、アメリカから東堂(生瀬勝久)を招聘してAi(オートプシー・イメージング、屍体の画像診断により解剖で解明できない死因を特定する技術)を積極的に推進する国際Aiセンターの発足が間近に迫っていました。

その頃、厚生労働省からAi推進担当として奔走していた白鳥(仲村トオル)の上司で理解者の船橋が、大学教授、製薬会社役員らと共に全部で9人が密室で謎の死を遂げます。意識不明で1人生き残った榊医師(二階堂智)は東城大学救命センターに運ばれ、速水(西島秀俊)や滝沢(松坂桃李)らの治療を受けることになります。

法医解剖で死因が特定できないため、東堂の進言により始動したばかりのリヴァイアサンでAiを行うと、重水による中毒死であることが判明し、Aiの有効性がはからずも証明されるのです。しかし、不定愁訴外来担当の田口(伊藤淳史)のもとに「センター開設式で、ケロべロスの塔を破壊する」という脅迫状が届くのでした。

田口に接近してきた雑誌記者の別宮(桐谷美玲)は、不審死を遂げた人々が過去の薬害事件の関係者であるといい、わかったことがあれば情報を提供してほしいといいます。白鳥は別宮の態度に不審なものを感じ、彼女もまた母親がその薬害の被害者の一人であったことをつきとめるのです。

阿部寛・竹内結子ペアの映画版に比べると、警察が(形だけですが)絡んでくるのは納得です。伊藤淳史の田口は、竹内結子に比べてかなり活発に行動していて、中村トオルの白鳥は阿部寛に比べてやや横柄さが少ない。テレビ向けに中庸な設定になったのかもしれません。その分、キャラの面白さは阿部・竹内に軍配が上がるように思います。

ただドラマを見ていない立場としては、やはり「螺旋迷宮」の流れが不自然で、一つの映画の中で別々の事件が同時進行しているような印象になるので、どちらかに集中したほうが中身が良くなったのではないかと感じてしまいました。

Aiは原作者がシリーズを通して命題にしているものなんですが、法医解剖よりも優れているのかと言えば、必ずしもそうではないと思います。両者には一長一短があり、相互に補完できるものだと思うので、ちょっと肩入れし過ぎのような気がしました。

2025年5月11日日曜日

肉汁ジュワ~・・・とならないハンバーグ


グルメ番組でハンバーグが紹介されると、もう決まり文句として登場するのが「中からあふれる肉汁」という誉め言葉。

でも、あれって、ふだん肉を煮たりすると出てくる、いわゆる「あく」として捨てまくっているやつです。それをありがたがるなんて・・・とは思いますが、ハンバーグでは実際見た目の美味しさがアップすることは間違いない。

ところが、家で作るとこれがなかなかうまくいかない・・・という経験は、料理する人ならみんな経験するところだと思います。

そもそも、肉は60゚c弱から変性が始まり、温度が上がるにつれて収縮していきます。この時に、肉から染み出る水分、血液、そして融けた油などが混ざり合ったものが肉汁です。

つまり、温度を60~70゚cに保てばいいわけですが、何しろ相手は挽肉です。しっかり中まで火を通すことは衛生管理上必須の事。また、高温で焦げるメイラード反応は、香ばしさをアップして肉料理の美味しさのポイントの一つです。

・・・と、理屈ではわかっているんですが、これが本当羅難しい。

今回はフライパンは使わず、丸めた生のハンバーグの表面を、まずバーナーで表面をあぶりました。これは香ばしさを出すことと、まず表面を収縮させて、中の肉汁が外に出にくくする目的です。

そして、加熱はオーブンを使いました。これがよくわからない。ググると200゚cで15分という目安があったんですが、厚みとかでいくらでも違ってくる。そこで予熱有の200゚cで20分という設定にしてみました。生焼けが怖いので、どうしても長めの時間をしてしまいます。

その結果・・・見事に肉汁は外に出きってしまいました。しっかり中まで火が通りまくった、美味しいハンバーグをいただくことになりました。

2025年5月10日土曜日

ジェネラル・ルージュの凱旋 (2009)

海堂尊のミステリー小説の「田口・白鳥シリーズ」を原作としているのが、映画やテレビドラマとなった「チーム・バチスタ」関連作品です。本作は、シリーズ3作目を原作として、テレビでも2nd seasonとして制作されています。監督は前作に引き続き中村義洋、脚本は斉藤ひろしと中村義洋が担当しました。舞台が同じ東城大学病院なので、1作目のキャストが引き続き登場します。

不定愁訴外来担当の田口公子(竹内結子)は、チーム・バチスタ事件解決の功績からか、不本意ながら病院長(國村隼)から院内倫理委員会委員長に指名されてしまいます。ある日、田口のもとに院内メールとして手書きの告発文が贈られてきました。

告発文には「救命センターの速水晃一(堺雅人)は業者と癒着している。婦長の花房(羽田美智子)も共犯だ」と書かれていました。速水はどんな救急依頼も断らず、ベッドが足りなければ強引に各科に患者を押し付けていくため、センター内からも他の診療科からも嫌われていたのです。

しかたがなく、関係者の聞き取りを始める田口でしたが、たまたま業者の磯部(正名僕蔵)が何かの包みを速水にこっそりと渡しているところを目撃してしまいます。そこへ救急車で運ばれてきたのは、交通事故に遭った厚生労働省技官の白鳥圭輔(阿部寛)でした。白鳥は下肢の骨折でギプスを巻かれて入院となりますが、田口に「俺とところに告発文が来た」というのです。

見ると、その告発文はワープロで作成されていて、ほとんど田口の受け取ったものと一緒の内容でしたが、ただ花房婦長の件は書かれていませんでした。白鳥は田口に、何が起こっているのか、あんたを助けてやると言い出して、車椅子で病院内をうろうろして、例によって関係者に高圧的・威嚇的・攻撃的に質問を浴びせかけるので、田口はひやひやし通しでした。

磯部はソフトボールの試合で田口と対戦した時の写真を、CDROMに入れて田口に渡します。しかし、そのすぐ後に磯部は屋上のヘリポートから転落死するのでした。事故も自殺も考えにくく、殺人の可能性が濃厚になったため、白鳥は経営効率ばかりを口にする三船事務長(尾身としのり)、精神疾患センター設立を画策する沼田(高嶋政伸)らの動向にも注目するのでした。

タイトルは、速水が救命のために「将軍(general)」のように振る舞い指揮をとることからきていますが、「ルージュ」の意味はは本編を見てのお楽しみです(ミステリーには直接関係はありません)。

救急医療は1次(軽傷)、2次(待機できる要入院)、3次(命に関わる、または高度医療が必要)に救急は別れていて、今は病院の能力に応じて救急車を断るということは「合法化」されています。しかし社会的な要請もあって、3次の現場では時には過酷な労働環境を強いられます。反面、患者さんが亡くなってしまうと診療費は回収できない場合も珍しくなく、病院の不採算部門と言われる場合もあります。

また、多くの予定で縛られている各科では、救急が割り込んでくると通常業務を圧迫する要因になることも当然あり、全体のコンセンサスがしっかりとまとまっていない病院では、この作品のベースになるような対立が起こり得るのです。それに対して精神科は、一般には机と椅子と電子カルテがあれば診療が成り立ち、コスパのよい代表的な診療科と言えるので、原作者の取材力の力は評価できるところです。

とは言え、殺人事件が疑われる段階で警察がほぼ登場しないというのは無理があります。白鳥・田口だけで速水の癒着の件の真相を究明するのはいいとして、エンタメ性を濃くするために原作には無い殺人事件を盛り込んだからには警察力は絶対に必要だと思います。

傲慢な白鳥が今回は比較的早くから登場し、お上の意向と関係なく救急に従事するスタッフから軽くあしらわれておちょくられるところは、阿部寛のコミカルな部分がほどよく描かれて楽しい場面になっています。

圧巻は、最後の大規模災害が発生して、病院が一丸となって受け入れるかなり長い時間を使った場面。直接ミステリーとは無関係ですが、救急医療とはどんなものかを端的に描いていて、ストーリー全体の真実味を底上げすることに成功していると思います。

2025年5月9日金曜日

チーム・バチスタの栄光 (2008)

2008年2月に映画が公開され、同じ年の秋ドラマとしてテレビでも放送されました。さらに、矢継ぎ早に映画もテレビを続編を製作したので、ずいぶんとこのタイトルは耳にしました。映画は、斉藤ひろしと蒔田光治が脚本、そして近年のヒット・メーカー、中村義洋が監督しました。

東城大学病院の心臓外科は、バチスタ手術の第一人者である桐生恭一(吉川晃司)を引き抜き、驚異の手術成功率でこの分野で一躍トップに躍り出ました。桐生をトップに、桐生の義弟である病理医の鳴海(池内博之)、バイパス手術の第一人者である垣谷(佐野史郎)、桐生を崇拝する助手の酒井(玉山鉄二)、麻酔科医の氷室(田中直樹)、人工心肺を操る臨床工学士の羽場(田口浩正)、手術室看護師の大友(井川遥)の7人でチーム・バチスタと呼ばれています。

心臓移植の代替として、バチスタ手術は肥大した心臓の壁を部分切除するのですが、成功率は一般に60%と言われていました。チームは成功率100%を誇っていましたが、術中死が3例続けて発生したため、桐生は病院長に調査を願い出ます。不定愁訴外来を担当して、いろいろな患者の愚痴を聞く役目をしていた田口公子(竹内結子)は調査を命じられ、しぶしぶ関係者をまわって話を聞くことにします。

鳴海は元々は優秀な外科医だったのですが、何故か桐生のサポートに徹しているのが不思議。垣谷は桐生が登場したことで、次期教授候補から外れて面白く思っていない。酒井は垣谷を軽視しているし、氷室は他の手術の麻酔もあり疲弊しています。羽場も急に怒り出す性格だし、大友は優秀な前任者と比較されて、感情の起伏が激しい・・・という具合に、全員が何かしら問題があるものの、明らかな原因はわからないままでした。

そこへ突然割り込んできたのが厚生労働省技官の白鳥圭輔(阿部寛)でした。白鳥は田口に、ただ聞いてるだけでは何もわからない、こちらからいろいろ仕掛けて、積極的に態度に出る部分が必要だと言い、再び彼らのもとを回り、かなり高圧的で意地の悪い質問ばかりをするのでした。そして、また次も死人が出るから、それまでに桐生と鳴海の以前の職場を調査すると言っていなくなります。

しかし、次の患者が前日に容態が悪くなったために、緊急にバチスタ手術が行われることになりました。田口も状況を監視する中で、白鳥の予想通り、患者は心拍を再開することなく死亡してしまうのです。

心臓手術は、術中に意図的に心停止を起こさせ、人工心肺によって患者の生命を保ちます。呼吸と心拍が停止している限られた時間内に心臓に対して手術操作を行い、終了したら人工心肺を停止して心拍の再開を待ちます。場合によっては電気ショックを用いるわけですが、この再開するかどうか見守る時間の緊張感はものすごい物だろうと思います。

映画ではこのスリル感はうまく描けているように思いましたが、そもそも何で白鳥がしゃしゃり出て来たのか、そしてそれを殺人だと考える理由などがはっきりしません。また警察ではありませんから、物的証拠は少なく状況証拠の積み重ねで推理していくという状況は、多少もやもやするところがある。

それでも、だれるところはなく、最後まで緊張感を持続させているのは監督の力量というところでしょうか。阿部寛と竹内結子はホームズとワトソンという役回りですが、原作では本来田口は男性です。ただし竹内結子の柔軟な演技力が幸いして、バランスの良いコンビになっているので、テレビの仲村トオルと伊藤淳史とは違った魅力がありました。

2025年5月8日木曜日

メゾン・ド・ヒミコ (2005)

監督は犬童一心、脚本は渡辺あやと言えば、「ジョゼと虎と魚たち」という名作を生みだした二人で、この作品でもゲイのための老人ホームという誰も思いつかない舞台で進行するヒューマン・ドラマを作り上げました。

かつで銀座で人気になったゲイバー「卑弥呼」のママ、吉田照男(田中泯) - 通称ヒミコは、急に店を閉じ、海岸沿いの古いホテルを買い取り、ゲイ専用の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を始めました。

町の細川塗装で働く吉田沙織(柴咲コウ)のもとに、しつこく電話をしてくる岸本春彦(オダギリジョー)が姿を現し、メゾン・ド・ヒミコで日曜日だけ雑用をするバイトをしてくれないかと頼んできます。実は沙織はヒミコの娘で、母と自分を捨てた父を許せないでいたのです。しかし、ヒミコが末期のガンで死期が近いことから、ヒミコのパートナーである春彦は、何とか父娘の関係を修復したかったのです。

メゾン・ド・ヒミコに通い出した沙織は、住んでいるゲイの老人たちと噛み合わず、時には嫌悪するようなことがありました。しかし、それぞれの老人には、それぞれのこれまでの人生があり、彼らがひたむきに生きてきたことを少しずつ知るのです。

近くの男子中学生たちは、そんな老人たちをバカにしてからかうことがしばしばあり、ついに道に面した壁に悪態を落書きします。沙織は細川専務(西島秀俊)に落書き消しの仕事を依頼します。やって来た細川に春彦は自分がゲイであることを告げ誘いをかけますが、細川は笑って受け流します。

入居者の一人である山崎は、女装をしたいが自信が持てないでいました。沙織は女性でもできない女装があるといい、好きな服や着たい服を着ればいいと話し、女装した山崎を町のクラブに連れ出します。しかし、かつての山崎の部下に見つかり、さんざんバカにされた山崎は倒れこんでしまうのです。沙織は激昂して「謝れ」と迫るのですが、春彦に止められます。そして春彦は沙織にキスをするのでした。

沙織は、ヒミコの持ち物の中から母親の写真を見つけます。それは離婚する前ではなく、比較的新しい写真であることに気がつき驚きます。沙織はヒミコに「母と私を捨ててすまないと思ったことはないのか」と尋ねます。ヒミコは「あなたのことが好きよ」と告白するのでした。

まず、ものすごく静かに時間が進む印象の映画です。音楽を担当したのは細野晴臣ですが、本当に珍しいくらい途中で音楽が流れません。音楽で盛り上げて登場人物の心情を表現してやろうなんていう、多くの映画に登場する姑息な手段を潔いくらい使いません。人物の一言一言、一挙手一投足に多くの意味があり、その合間の無の時間にもいろいろな意味を持たせているようです。

ゲイ専用老人ホームという特殊な環境の下でのストーリーですが、実際は長年のわだかまりを持つ父娘の話であり、弱者となった人々の互いを思いやる心の大切さについての話です。

それにしても、本来舞踏家だった田中泯の演技には脱帽するしかない。俳優としての仕事は2002年の「たそがれ清兵衛」が初めてで、まだまだ「新人俳優」の時期のこの作品で、ヒミコという他のゲイとは一線を画するカリスマ性を見事に演じていると思います。舞踏家として、言葉抜きの全身を使った表現者の面目躍如というところでしょうか。

2025年5月7日水曜日

病院へ行こう (1990)

監督は「おくりびと」の滝田洋二郎、脚本は「私をスキーに連れてって」の一色伸幸です。病院を舞台にしたバブル期の「あほくさい」ややブラックなコメディ・ドラマ。医療の中で起こる様々なことを皮肉っぽく描いています。

広告代理店で働く新谷公平(真田広之)は、仕事を理由に妻の春子(斉藤慶子)のことはほったらかし、愛人を作って好き放題の生活をしていました。ある夜、新谷は帰宅すると春子が見知らぬ男と下着姿で野球拳に興じているところに出くわし、揉み合いとなって階段を転げ落ちて大学病院に搬送されます。その日は春子の誕生日だったのです。

救急の当直だったのは吉川みどり(薬師丸ひろ子)で、点滴すらまともにできない超新米の研修医でした。大腿骨骨折で入院となった新谷の隣のベッドには、なんと如月(大地康雄)という一緒に転落した男が入院していました。そこへ春子が訪れ、新谷には無言で離婚届、如月には「ご迷惑をおかけしました」とお菓子を置いて去っていきます。

手術は無事に終わったものの、仕事のストレス、春子との関係、隣に寝ている如月などのストレスが積もり積もって、新谷は胃潰瘍を発症。自分はガンなのではないかと、さらに疑心暗鬼になっていくのです。

一方、如月は手術せずに快方に向かっていましたが、胸部のレントゲン写真で、怪しい影が見つかるのです。みどりはそのことをまともに伝えられずもじもじした態度をしていたことから、如月はみどりが自分に気があると勘違いしてしまうのでした。

みどりの彼氏役は尾身としのり、同じ病室の個性的な面々には螢雪次朗、ベンガル、荒井注らがにぎやかに登場します。

薬師丸ひろ子は、ブームが落ち着き演技者として成長していく過渡期の作品だと思います。真田広之はアクション俳優として人気が出ましたが、薬師丸より早くに転換期を迎えていて、ここでも新たな一面を見せて楽しませてくれます。

例によって、ちょうどこの映画の次期に研修医をやっていた医療関係者の立場からすると、ずいぶんとあり得ないストーリーを作ったものだと思います。まぁ、ドラマだからと割り切ればいいんですが、どうしてもあらが見えてしまいます。また、この頃の映画の独特のテンポみたいなものがどうしてもピンと来ない。

まぁ、昭和から平成に時代が移り変わる頃の世相を眺める程度にはいいんですが、出演者のファンでなければ見なくても困らない映画の一つというところでしょうか。でも、それなりにうけたということか、小泉今日子主演でPart 2も作られています。

2025年5月6日火曜日

やます家 @ センター南


センター南周辺では、名店「おおつか」が閉店して1年。近場で美味しい蕎麦を食べれないとがっかりしていたんですが、意外と近くに古い店を発見しました。何で今まで見つけられなかったんだろう? と、不思議なんですが、やはりネット検索の穴みたいなものがあるんでしょうね。

と、とうわけで、センター南駅の南東方向、直線距離で500mくらい、茅ケ崎南3丁目の住宅街にある「やます家」さんに出かけました。セブンイレブンの対面の道を入ってすぐなんで、場所はみつけやすい。

外見は古くからありそうな一軒家で、いかにも蕎麦屋と言う感じ。椅子席と座敷の両方があって全部で30席弱くらいでしょうか。初めて行く店では、必ず天ぷらとざるをたべることにしています。なので、今回も注文したのは天ざるで1300円。

蕎麦は白い更科風ですが、太さはあります。やや蕎麦の香りが少ないように思いましたが、すべすべした感じで喉越しの食感は悪くありません。かえしは醤油と出汁のバランスが程よくミックスされ、誰にもうけそうな味です。

天ぷらは、サツマイモ、にんじん、ピーマン、茄子、海老の5品で、しっかり油ぎれしたさくっとした揚げ方はいい感じだと思います。天つゆが別についてきて、これは蕎麦のかえしより甘めになっていました。できれば塩をつけて欲しかった。

昔ながらの街の蕎麦屋としては、十分に及第点の店だと思います。今回は注文しなかった桜海老のかき揚げを食べたくなります。

なお、店主の趣味なのか相撲関連の飾り物がたくさんあって、中には千代の富士(現・九重親方)のサイン色紙、最新の番付表などが目に付きました。おかげで待っている間もいろいろ楽しめました。

もともとは夜も営業していたようですが、「人手不足のため昼間だけ」という張り紙がしてありました。家族営業なのか、継ぐ人がいなければ次第に消えてしまう店なのかな、と思うとちょっと寂しい感じがします。

2025年5月5日月曜日

ラストマイル (2024)

昨年夏の話題作で、脚本・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子の鉄壁コンビによる作品で、特に話題になったのはこのコンビによる大ヒット・ドラマ、「アンナチュラル」と「MIU404」と世界観を共有して、それぞれのキャストも登場しました。

巨大通販サイトを運営するDAILY FASTの西武蔵野ロジスティックセンターに、最大の特売期間であるBLACK FRIDAY前日に新しいセンター長として舟渡エレナ(満島ひかり)が赴任してきます。しかし、着任早々、DAILY FASTからの荷物を開封したとたんに次々と爆発する事件が発生し、死亡する人も出てしまいます。

エレナは、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)に、次から次へ指示を出し、絶対に配送作業を止めないと宣言するのです。エレナの上司、統括部長の五十嵐(ディーン・フジオカ)は、事件により作業効率が落ちていることを問題視して、エレナに圧力をかけてきます。

警察の捜査によって、恨みを持つ者として5年前にチームマネージャーをしていた山崎佑(中村倫也)を容疑者とし、機動捜査隊の志摩(星野源)と伊吹(綾野剛)がアパートに踏み込みますが山崎はいませんでした。そして、何と5年前から植物状態で入院し続けている山崎を発見します。山崎は、5年前のBLACK FRIDAY前日にロジスティク内で飛び降り自殺をしたのでした。

エレナが発見したDAYLY FASTの偽サイトの線から、警察は爆弾製造したものを見つけ逮捕することができました。犯人は、頼まれて全部で12個の爆弾を製造したと証言します。すべての商品を検品するしかなくなったエレナは、遅れてでも出荷することに執念を燃やします。

梨本は出荷に執着するエレナに疑問を感じ従業員名簿を調べると、山崎佑のデータがエレナによって消去されていること、そして新センター長は本来別の者が来るはずだったことを知ります。梨本は直接エレナに「あなたは誰なんです」と詰め寄るのでした。

「アンナチュラル」のUDIラボは、爆発で亡くなった方の解剖を担当することで登場します。三澄ミコト(石原さとみ)、中堂系(井浦新)羅お馴染みのメンバーが登場し、事件の真相解明に大いに役立ちます。


野木・塚原チームの仕事としては、物流問題、過重労働問題などを盛り込んでいるところはさすがですが、本来、2時間8分の映画で描くには扱っているテーマは深いし、出てくる謎も多いので、せわしない印象はぬぐえません。1時間ドラマで4-~5回くらいはかけてもいい感じなので、ネット配信とかの方が向いている感じです。

せっかく「アンナチュラル」チームと「MIU404」チームが参加していますが、これも話題性優先で、別に彼らである必然が感じられませんでした。もっとも両ドラマのファンにとっては、出てくるだけで嬉しくなってしまうのは、術策にはまってしまったというところ。

逆に言えば、テンポが良く中だるみしないノン・ストップ・サスペンスという褒め方もできます。通販大好きな身としては、自分が買いまくった裏側で起こっていることの一端を垣間見た感じがしました。

2025年5月4日日曜日

390円のカレーライス


昨今は物価高で、何でもかんでもどんどん値段が高くなって、スーパーに行くたびに驚くことも少なくありません。

この前、家で作るカレーも高級料理になったというような話題をテレビでやってました。カレーライスのような、普通に家で作っ食べるようなものが、1食1000円近くかかるようじゃ確かにおちおちと食べていられない。

もしも外食だとしたら、カレーライスは、いいとこ1000円。家で食べるなら数百円というところじゃないと、なかなかお財布が厳しいことになります。

いつも使っているのはフレーク状になったカレールーなんですが、最新の値段は6皿分で約400円でした(実質、4皿分という感じ)。この前まで300円ちょっとだったような気がするんですけど・・・

ジャガイモ、1個90円。玉ねぎ、1個80円でした。ニンジンは大きめが1本180円ですが、使うのは1/2程度。ジャガイモとニンジンは手頃な大きさに乱切り、タマネギはみじん切りにします。今回はポークカレーにしたいと思いますので、100g200円の肩ロース、300gを一口大に切ります。ここまでで4皿分で860円。

まず、タマネギをしっかり炒めて、いわゆる「飴色タマネギ」にします。この後、ルーをけちるので、ここは手を抜いてはいけません。豚肉を煮てあくを取ったら、炒めたタマネギを投入し、ここでニンニクとショウガを大さじ1くらい加えます。これは絶対に必要。

なお、ジャガイモは普通に煮ると煮崩れて量が減ってしまい寂しい感じになるので、煮る前にフライパンで表面がちょっと焦げる程度に炒めておきます。面倒ですけど、こういう手間も安く美味しく食べるための一工夫です。

肉が柔らかくなったら、ジャガイモとニンジンを追加してさらに煮込みます。頃合いを見て、火を止めたらルーを入れるんですが、いつも1袋全部使うところを、けちって2/3程度にします。その代わりと言っては何ですが、普通のS&Bの赤い缶のカレー粉と普通の小麦粉を少々追加します。ルーを減らした分コクが減るので、飴色になったタマネギのコクとニンニク・ショウガが生きてきます。少し弱火で煮込んだら完成。

ニンニク、ショウガはチューブを使いましたが、それぞれ10円として、ルーは250円です。カレー粉は20円、小麦粉は10円くらいというところ。全部足すと1,160円、1皿分は290円でした。御飯は1人前100円とすると、1皿390円になり、まぁこれなら許容範囲と言えそうですね。

2025年5月3日土曜日

憲法記念日


自分が産まれてこのかた、5月3日はずっと憲法記念日です。

昭和の頃に「明治は遠くなりにけり」とよく言われていたのが、そのまま令和の世では「昭和は遠くなりにけり」になりました。

今年は「昭和百年」とか呼ばれているわけで、そりゃ遠くなるわけだと思います。

現行の日本国憲法が公布されたのが1946年11月3日、施行されたのは1947年5月3日で、今年は施行から78周年。現在のほんどの日本人は旧帝国憲法は知らないし、そもそも「戦争を知らないこどもたち」です。

日本国憲法の原文では、最初のページに現天皇の祖父にあたる裕仁天皇の署名があり
、旧帝国時代を明確に否定する一文が掲げられています。

しかし、現行憲法は時代の変化に伴い、現実にそぐわない部分も出てきていることは否定できません。

日本人に染み付いた日本国憲法の精神は否定されるものではないことはもちろんですが、より国民が生活しやすい改良はあってもよいことだと感じます。

2025年5月2日金曜日

500円のかつ丼


蕎麦屋で食べる丼物の代表は? と聞かれたら、まぁ、かつ丼と答える人が一番多いんじゃないでしょうか。

このところの物価高の影響はひしひしと感じるところですが、外食でかつ丼を食べるとなると、最低でも1000円は覚悟しないといけません。でも、食べたい。じゃあ、作りましょうというわけで考えた。

さすがにとんかつを作る手間は面倒なので、これはお総菜を利用することにします。スーパーで売っている、一枚240円の三元豚かつを買ってきました。

もしもとんかつを自分で作るとなると、大変ですし、片付けの手間も考えると意外と割高だろうと思います。

小さめのフライパンにタマネギ1/2個(40円)と水を入れてひにかけます。味付けは、これも時短でよくある濃縮つゆの素を利用します(10円くらい)。

タマネギが煮えてきたら、とんかつをのせて溶いた卵2個(80円)を上からかけて蓋をして数分間待てば完成です。あー、簡単、簡単。

お米の価格は本当に高騰しました。1合分の米で170円ですが、麦を入れて量増しして炊いたので、丼一人前でだいたい100円くらいになるんでしょうか。

というわけで、だいたい500円弱というところで、美味しくいただきました。満足です。


2025年5月1日木曜日

180円の味噌ラーメン


自分で作ればいいんです。

・・・と、簡単に言いましたけど、実際、そんなに難しいことじゃない。

スーパーに行くと、ラーメンの麺 だけがだいたい4玉280円くらいで売っています。隣には各種のスープが1食100~200円でおいてあるので、これを使えば300円れ以下です。

ただし、300円出すなら2食で400円くらいの麺とスープがセットになっているものの方が安い。

そこで、スープを作ります。

味噌大さじ2杯くらいで30円くらい。鶏ガラスープの素を大さじ1杯で10円。鶏ガラは食塩無しのタイプを使います。よく売っているものは、食塩入りが多いので注意してください。

そして、ニンニクとショウガ少々。チューブタイプを使って、これも10円程度。

あとは全部混ぜて、塩で味を調えます。辛味噌が好きなので、豆板醤とラー油を追加しましたが、それも10円程度のものです。

全部でなんと130円くらいです。コクは足りませんが、十分耐えられる味になります。

トッピングで、もやし、豚ひき肉、長ネギを使いましたが、それもせいぜい50円くらいのものなので、目標の200円以下は十分に達成できました。満足、満足。