2008年のseason 1が「チーム・バチスタの栄光」、2009年にスペシャルとして「ナイチンゲールの沈黙」、2010年にSeason 2で「ジェネラル・ルージュの凱旋」、2011年にSeason 3で「アリアドネの弾丸」、2014年にSeason 4で「螺旋迷宮」と続き、そしてFINALとしてこの映画が作られています。
映画は「螺旋迷宮」の流れを引き継いでの解決編と、「ケロべロスの肖像」の事件が同時に進行する形なので、ドラマを見ていないとややついていけないところがあります。テレビでは後藤法子が一貫して脚本を手掛け居て、 今井和久、星野和成らが演出をしていますが、映画でも同じスタッフが担当しています。
東城大学病院では厚生労働省と協力して、世界最高の性能を誇るリヴァイアサンと呼ばれるMRI機器を導入し、アメリカから東堂(生瀬勝久)を招聘してAi(オートプシー・イメージング、屍体の画像診断により解剖で解明できない死因を特定する技術)を積極的に推進する国際Aiセンターの発足が間近に迫っていました。
その頃、厚生労働省からAi推進担当として奔走していた白鳥(仲村トオル)の上司で理解者の船橋が、大学教授、製薬会社役員らと共に全部で9人が密室で謎の死を遂げます。意識不明で1人生き残った榊医師(二階堂智)は東城大学救命センターに運ばれ、速水(西島秀俊)や滝沢(松坂桃李)らの治療を受けることになります。
法医解剖で死因が特定できないため、東堂の進言により始動したばかりのリヴァイアサンでAiを行うと、重水による中毒死であることが判明し、Aiの有効性がはからずも証明されるのです。しかし、不定愁訴外来担当の田口(伊藤淳史)のもとに「センター開設式で、ケロべロスの塔を破壊する」という脅迫状が届くのでした。
田口に接近してきた雑誌記者の別宮(桐谷美玲)は、不審死を遂げた人々が過去の薬害事件の関係者であるといい、わかったことがあれば情報を提供してほしいといいます。白鳥は別宮の態度に不審なものを感じ、彼女もまた母親がその薬害の被害者の一人であったことをつきとめるのです。
阿部寛・竹内結子ペアの映画版に比べると、警察が(形だけですが)絡んでくるのは納得です。伊藤淳史の田口は、竹内結子に比べてかなり活発に行動していて、中村トオルの白鳥は阿部寛に比べてやや横柄さが少ない。テレビ向けに中庸な設定になったのかもしれません。その分、キャラの面白さは阿部・竹内に軍配が上がるように思います。
ただドラマを見ていない立場としては、やはり「螺旋迷宮」の流れが不自然で、一つの映画の中で別々の事件が同時進行しているような印象になるので、どちらかに集中したほうが中身が良くなったのではないかと感じてしまいました。
Aiは原作者がシリーズを通して命題にしているものなんですが、法医解剖よりも優れているのかと言えば、必ずしもそうではないと思います。両者には一長一短があり、相互に補完できるものだと思うので、ちょっと肩入れし過ぎのような気がしました。