2025年5月22日木曜日

中島みゆき / 歌会 Vol.1 (2025)

中島みゆきは、札幌の出身で1953年生まれですから、もう今年73歳。初めて知ったのは、1975年のヤマハのポプコン(Popular Song Contest)ですから、もうデヴュー以来の50年の付き合いということになります。

荒井由実に代表されるニューミュージックや吉田拓郎らのフォークソング全盛の時期に、ニューミュージックのような甘い感じがしない、でも普通のフォークとも何かが違うという、まさに中島みゆきワールドが最初期からありました。大半の歌がかっこつけた色恋沙汰がテーマになりますが、中島みゆきが作る歌はラブ・ソングでも人間の業のような深みが感じられるところが「かっこいい」感じがしたものです。

ですから、中島みゆきの歌では歌詞がすごく大事。一つ一つの言葉を噛み締めるような聴き方をしないともったいないので、そういう意味ではややハードルが高いかもしれません。今のようなサブスク中心で歌が使い捨てのように扱われている時代だからこそ、中島みゆきの存在感はより際立ってきているように思います。

本作はコンサートのライブ映像としては、「歌旅(2007)」、「縁会(2012-13」、「一会(2015-16」に続く4作目です。2020年にラスト・ツアーとして初めた「結果オーライ」がコロナ渦により開始してすぐに中止となり、2024年1月~5月に、東京・東京国際フォーラムと大阪・フェスティバルホールで行われた4年ぶりのコンサートを収録しています。

ステージの袖から颯爽と登場する、凛としたみゆき姐さんのかっこよさは健在。「結果オーライ」ツアーのセットリストの最後だった「はじめまして」からスタートして全19曲が歌われてます。歌声や動きはまったく変わりなく、今回も期待を裏切りません。

ただし、さすがに70代となって、良くも悪くもやや年を取ったなという印象はあります。一番の変化はずっと眼鏡を使用していること。ライブだけのことなら眼鏡はいらないと思うので、おそらく歌詞などを表示するモニターを見るためでしょうか。近眼鏡なのか老眼鏡なのかはわかりませんが、これだけで年齢を感じさせてしまうのはもったいなかったと思います。

中島みゆきの映像作品の嬉しいのは、必ず字幕付きで歌詞を確認できること。何て歌っているのかわからない歌手はたくさんいますが、中島みゆきは比較的よく歌詞を聴きとることができます。それでも、文字として表示できるとその内容のより深い理解が可能になりますし、何よりも本人が歌詞を大事にしていることが伝わってきます。

もう一点、毎回ビデオを購入する上で嬉しいのは、収録曲の重複が少ないということ。誰もが知っている一部のヒット曲は何回か登場しますが、ほとんどの曲は過去の映像作品と被りません。ライブと言うと、やたらとベスト盤的な選曲になりがちですが、中島みゆきの場合は、ライブと言えども一つのコンセプト・アルバム的な選曲がなされているのだろうと思います。

小田和正は声が出なくなっているのは明らかだし、吉田拓郎は引退してしまったし、松任谷由実も新作のペースはかなり落ちました。自分の青春時代に色を付けてくれたアーティストたちも、さすがに年老いてしまったのは当然と言えば当然ですが、中島みゆき姐さんはまだまだいけそうな気がするし、いくことを期待します。今回もあえて「Vol.1」としているからには、Vol.2、Vol.3・・・とやって欲しいですね。