2025年5月19日月曜日

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ (2009)

今でこそ旭山動物園の名前は知らない人はいないくらい有名になりましたが、以前は廃園寸前までになり、スタッフらの努力により復活したというのは、幾多のメディアでも取り上げられました。ここでは、一部オリジナルの部分も加味しつつ、実話に基づいた再生ストーリーが展開されます。脚本は與水泰弘、監督はマキノ雅彦。マキノ雅彦は俳優・津川雅彦の別名で、マキノ雅弘は叔父にあたります。

慢性的な財政難を抱える地方都市、北海道の旭川市では、市営の旭山動物園はお荷物になっていました。極寒の地ですから、冬季は休園となり、市長(平泉成)は園長の滝沢(西田敏行)に毎度嫌味を言うのです。

スタッフは、韮崎(長門裕之)、三谷(六平直政)、柳原(岸部一徳)、臼井(柄本明)らのベテランに、新たに新人として吉田(中村靖日)が加わりました。市長の姪、小川真琴(前田愛)は動物保護運動をしていて、仲間と一緒に旭山動物園に乗り込んできて、「檻に閉じ込めている動物を開放しろ」と叫ぶのです。

滝沢は、強い信念を持って動物園の意義を説き、檻に入れるのは動物たちを守るためであると話します。獣医学部の学生である真琴は、滝沢に共感し卒業すると動物園に就職するのでした。

ゴリラのカップルにこどもができないのは自分のせいと悩んだ柳原は担当から外れますが、間もなくしてメスのゴリラが病死してしまいます。チンパンジーがこどもを産んだことを喜んで、ゾウに報告に行った韮崎は近づきすぎて一撃され亡くなってしまいました。

敷地に侵入したキタキツネが持ち込んだエヒノコックスによって、残ったオスのゴリラが感染症になり死んでしまいます。市はこれ幸いと動物園の廃園を検討し始めます。スタッフは、冬には冬の見せ方があると冬季休園をやめ、夜行性動物を見せるため夜間の開園も行いました。各飼育員それぞれが、得意な動物の話を来園者の前で行うサービスをしたりして、何とか集客を増やそうとします。

町に出て動物園の存続を訴えるビラ配り、学校などを回って動物についての講演を行ったりしましたが、丁度市長が交代になったのを機に、滝沢は大勝負に出ることにするのでした。

こういうちょっと不器用ですが、熱い男を演じさせたら西田敏行はぴか一です。動物たちにも、スタッフにも分け隔てなく接して、信念を貫く園長にはぴったりの配役です。新人飼育員の吉田を演じた中村靖日も、一癖ある役柄ですが、うまくはまっています。

さすがに俳優たちが直接動物に触れるわけにはいきませんから、一部は人形や着ぐるみを使用しているようですが、あまり違和感はなく良く出来ています。動物が出てくる話は、かなり忍耐が必要なことが多いと思いますが、初監督作となったマキノ雅彦は、俳優としての多くの経験からか見事にこなして見せました。