2025年5月25日日曜日

きな子〜見習い警察犬の物語〜 (2010)

2002年に香川県の丸亀警察犬訓練所で生まれたラブラドールレトリバーのきな子は、警察犬になるべく訓練を受けるものの、そのズッコケぶりがたまたま地元のテレビで紹介されたことから人気者になりました。2010年の7回目の競技会で優秀な成績を出し、2011年にやっと正式に警察犬になりました。

この映画は、きな子と訓練士になるために共に奮闘する女性をモデルとして作られたもので、主としてフジテレビ系ドラマを手掛けた小林義則が監督、「シン・ゴジラの浜田秀哉が脚本を担当しています。

優秀な警察犬をたくさん育てた望月遼一(遠藤憲一)の娘、杏子(夏帆)は自分も訓練士になるため、母(浅田美代子)の反対を押し切って父の後輩、番場晴二郎(寺脇康文)の訓練所に見習いとして入所します。

訓練所は番場の妻の詩子(戸田菜穂)、料理好きの息子の圭太(広田亮平)、生意気な娘の新奈(大野百花)ら家族が協力して運営されていて、唯一の先輩訓練士として田代渉(山本裕典)がいました。

見習いは朝早くから夜遅くまで犬舎の管理ばかりで、犬を訓練するような時間はありません。番場も積極的に教えるふんいきではありませんでした。杏子は警察犬には向いていないとほったらかしになっているきな子を育てると決心し、田代に相談しながら少しでも空き時間を作りきな子と関わるようになっていきます。

初めての試験になりましが、きな子はジャンプを失敗したり匂いの嗅ぎわけができなかったりで、杏子はがっかりします。しかし直後にきな子は倒れてしまい、試験に向けて休む暇がなく過労によるものと判断されました。番場は試験の失敗はきな子が未熟なのではなく、訓練士が未熟だからだと杏子に言うのでした。

ただ、そのきな子が失敗する様子をたまたま取材していた地元テレビ局が放送したところ、きな子は人気者になりいろいろなイベントに呼ばれるようになるのです。杏子は、訓練士としてきな子を警察犬にできないことに心が折れ、訓練所を辞める決意をするのでした。

杏子が去ったことできな子も番場の家族も寂しい日々を送っていましたが、いつもは生意気なことばかりを言う新奈が、こっそりきな子を連れて杏子の元に向かうのでした。しかし、その頃香川県には暴風雨が迫っていたのです。

警察犬はドラマチックなストーリーが作りやすいのか、映画・ドラマに登場することが多いように思います。ただし、今作では訓練士と犬の未熟者同志の成長というよくある話ですが、大部分はノンフィクションらしいので、きな子と杏子がお互いに信頼を築いて努力することには敬服するしかありません。

ですが、内容は展開が強引なところが気になる。そもそも杏子ときな子が遊んでいるシーンは多いのですが、実際に訓練しているところはほとんどありません。番場も「勝手にどうぞ」と言ったきりで、まともに教えている場面が無い。警察犬と言う特殊な能力を引き出すためにはそれ相応の方法があるはずなんですが、これでは物足りません。

実在のきな子を知っている人からすれば、映画公開の時点ではきな子はまだ警察犬になれていなかったことは既知の事実ではあるのですが、映画の終わり方についても中止半端で「えっ? ここで終わり?」という感じです。

映画ですから、一から十まで映像で見せたり、台詞で説明したりする必要はありませんが、杏子ときな子の成長がテーマなので、その結末はもう少していねいに描いてもらいたかったと思います。結局、結が定まらないうちに起承転だけで作られた映画という印象でした。