というのも、40年以上前にすでに亡くなっているわけで、現在ほとんどCDなどの話題も無いのです。いつものHMVでも取り扱っているのはわずかに数枚のCDのみ。
純粋なドイツ人で、反ユダヤの信奉者であり熱烈なヒトラー支持者であったという過去が影響しているのは否定できません。
クラシック音楽を聴く上での指南書として愛読している本にその名前を見つけてから、興味を持っていましたが録音が古いと言うこともあって今まで手を出していませんでした。
さすがに最近ちょっとマニアックな方向性が強まりすぎているCD収集ですので、もう少し名演奏を聴いてみてもいいかなと思いました。ナイの晩年期の録音集成を購入してみました。
もとからバリバリのベートーヴェン弾きとして名を馳せた人ですから、CD10枚のうちの大半がベートーヴェンなのです。1882年生まれですから、ほとんどが1960年以降の録音なので80歳を超えているということになります。
これはすごいことです。さすがに素人耳にも指がおぼつかないようなところもあるのですが、80歳ごろからの晩年10年弱の中での録音とはとても思えません。
全体にゆっくりめのテンポのソナタで、年齢的なところから来る部分もあるのでしょうが、それが強い確固たる意志による表現手法であるように聞こえます。
高齢とは思えない強靱な運指に支えられ、自分にとってのベートーヴェンはかくあるべきという信念が感じられるのです。
ケンプのベートーヴェン、アラウのベートーヴェン、グルダのベートーヴェン・・・そして、ネイのベートーヴェンというようにかつての巨匠の演奏には、いずれも自分だけにしかできない解釈という物が合ったように思います。
最近の現役ピアニストの演奏は美しい録音ではあるのですが、そういう冒険心のようなところがちょっと足りないかもしれないと思ったのは自分だけでしょうか。