2009年5月11日月曜日

クリニックの経営による収入

前回のクリニックの支出に続く第2弾。とは言え、収入は実に簡単。

日本ではほとんどすべての医療機関が保健医療を行っていますから、その収入については厚労省が2年ごとに決めてくる医療の「定価」、つまり診療報酬点数というものに依存しているわけです。

ある患者さんが初めて医療機関を受診すると「初診料」がかかり、1ヶ月以内に同じ医療機関を受診すれば「再診料」がかかります。

別の病気でかかっても、1ヶ月以内であれば再診ですが、同じ病気であっても患者さんの意思で1ヶ月以上あけて受診した場合は初診の扱いとなります。

内科は一番多い症状は「腹痛」と「かぜ」で、たいてい何度も再診をするような病気は少ない。整形外科は老化現象による膝や腰の痛みの患者さんが多く、正直に言って根本的には治らない。

従って、症状が軽くなるまで再診することが多くなります。骨折などの場合は、だいたい治るまでの2ヶ月間くらいの間は1週間~2週間に1度くらいの再診してもらうわけです。

収入の大きい物はレントゲン検査。最初に機器を購入するのに、安い物で300万円くらい。うちのように透視ができるタイプだと600万円くらいかかりますが、メンテナンス費用は除いて基本的には検査をする度に追加の支出がありません。

自分の場合には、初診で必要と思えばもちろんレントゲン撮影はしますが、同じ症状で1年以内の再診・再初診ではたいてい撮りません。明らかに以前より悪化している場合には別です。例えば腰痛では、明らかに筋肉が原因と思える場合にはレントゲン検査をしない場合があります。

異常が無いと思うのに検査をすることは原則としておかしいのですが、開業してから気が付いたのは、患者さんは異常が無いという安心も欲しがっているということでした。ですから、自分が不要と思っても患者さんの希望があればレントゲン検査で、大きな異常がないということを確認することは悪いことではありません。

血液検査は検査会社へ検査の代金を払います。ギプスなどの処置では、ギプスを購入して用意しておかなければいけません。注射も薬剤や注射器、点滴の器具などを購入しておかなければならない。つまり必ず支出を伴う物であるということを忘れてはいけません。

手術はあくまでも局所麻酔で正味10分間程度で終わるようなものに限って行います。本来、手術室と呼べるような設備で行うことが望ましいわけですが、このような簡単なものはいちいち大きな病院に依頼しても、なかなからちがあかないことが多い。

本来は外科系の医者にとっては、最も持てる技術を出せるところなので、一律の値段が決まっているというのは納得できないところもあります。うまい医者がやっても、へたな医者がやっても値段は同じ。もっとも、クリニックレベルでは、そんなことを言ってもしょうがありませんが。

いずれにしても、手術というのはリスクも伴うことですから、がんばれば収益としては悪くはありませんが、小さなクリニックではあまり拡大することはできません。

保険診療とは別に、いわゆる自費診療というのがあります。保険なら患者さんはかかった医療費の1割~3割を負担すればいいわけですが、自費診療ではすべてが患者さんの負担になります。自信のある医者なら、すべての医療行為を自費診療にして、値段は言い値にしてもかまわない。

これは、まさにブラックジャックの世界になってしまうわけですが、腱鞘炎を治すから100万円と言っても誰も受診しないでしょうから現実的ではありません。

ただし、保険医療はいま出ている病気に対して行う物というきまりですから、予防的な治療には保険を使うことができません。予防接種のようなものは自費になります。インフルエンザの予防接種をうちでは毎年秋に行ってきましたが、毎年2000円という最低ランクの値段でやってますので、ほとんど儲けはありません。

ガンのような病気では、よく自費診療で保険の認められていない治療を行う医療機関がありますが、保険で認められていないということは、最新の知見に基づくものだとしても効果・安全性の上でスタンダードとは言えないものが大多数だということは忘れてはいけません。

まぁ、整形外科診療所では自費診療でできるようなことはほとんどありませんので、あまりこのあたりに期待してもしょうがない。けっきょく、地道に一人一人の患者さんを治療していくしかありません。小さな信頼の積み重ねでリピータを作っていけるように努力していくしかないんです。