しつこいようですが、インフルエンザの話題。
どうも、毎日いろいろなところから対応についてのファックスやメールが来るわけですが、毎回微妙に違っていて、いったいどうしたらいいのかわからない。その混乱ぶりといったら、すごいもんです。
話を整理すると、厚労省の対応は基本的に強毒性の鳥インフルエンザ由来の新型インフルエンザを想定しているわけですが、これについてはもともと最終的なマニュアルが整理されていなかったということです。
基本的な流れは、発熱した方は各保健所などの開設した発熱相談センターに連絡し、そこから専用に設置され公立病院などの発熱外来で治療をすることになっており、通常の病院や診療所ではかえって感染を拡大するおそれがあるため患者の受け入れをしないことが原則となっています。
ところが、実際に今流行しだしているのは弱毒性の豚インフルエンザ由来で、通常の季節性のインフルエンザと同様の対応でも十分ではないかと考えられ始めています。
実際、すべての発熱患者がインフルエンザと考えているわけはないので、一般診療所や病院に患者さんが受診している可能性はかなりある。
ですから、高い熱と呼吸器症状を呈した方が医療機関に受診したとすると、各医療機関ではインフルエンザの簡易検査を行いA型陽性の場合は、発熱外来へ送るように指示されています。
ところが発熱して24時間以内の簡易検査での検出率は30%程度といわれているので、ここでひっかからずにチェックされない患者さんは大勢いるはずです。
また、簡易検査キットは内科・小児科ではある程度在庫があるでしょうが、手に入れようと思っても、現在まったく手に入らない状態になっていますので、内科でもすぐに底をついてしまうでしょう。当然うちのような整形外科クリニックではまったく用意はありません。
簡易検査キットがない状態では、最初から患者さんを発熱外来に送るしかありません。ところが、発熱外来に送ると言っても、病院の発熱外来は防護服を着用しての診察なので、とても多くの患者さんをさばくことはできません。
さらに、診察したのが新型インフルエンザの患者さんだっとしたら、医療機関の医師やスタッフは濃厚接触者ということになります。じゃあ、予防的にタミフルを服用するかといっても、これも市場にはまったく無い状態で手に入りません。それなら、一定期間休診するしかないのでしょうか。
そんなわけで、発熱外来からあふれた患者さんが、簡易検査キットもタミフルも無い診療所にもどってくるのでしょうか。医者はすでに濃厚接触者になっているんですよ。もう、どうどうめぐりです。
公立病院の発熱外来だけでは、もともとどうにもできないことはわかっていたことなんですから、現状では一般の病院やクリニックでの通常の対応で大丈夫と考えられそうですから、感染の拡大に主眼を置いた方策よりも、実際の患者の診断・治療が確実に行えるように、現実的な選択をすべきでしょう。
そういう意味で、厚労省が体制の見直しを始めたことは、妥当なところです。しかし、そのためには簡易検査キットやタミフルといった最低限のものが手に入らないことにはどうしようもありません。早くに一般のクリニックが安心して診療できるように簡易検査キットやタミフルを市場に戻した方がいいではないでしょうか。
まだまだ、混乱はつづきそうですが、せめてマスクだけでも確保させてくださいよ、というのが切実な声ですよね。