狼が来たぁ~、と何度も言っているうちに次第に言葉を信じなくなるという話はよくあるわけです。まぁ、信じないまで、耳に慣れてしまい注意しなくなることは怖い。
世界各国での広がりは、いちいち数えていてもきりがないという状況であり、WHOは警戒レベルをPhase6へ引き上げていないものの、実質的にはパンデミックと言っても過言ではありません。
いよいよ、日本国内でも人から人への感染例が出ました。当然予想されたことで、いまさら驚くことはありませんが、だからといっていわゆる「水際作戦」がまったく無駄ということではありません。
少なくとも、蔓延していく時間稼ぎにはなりますから、ある程度の準備をするためには時間は無いよりもあった方がいい。特に、新型インフルエンザに対する対策は去年からいろいろなところで議論されていましたが、最終的にどうするという具体的な案はいまだ不明な点が多い。
実際、現状では(メキシコを除いて)死亡者はそれほど多くなく、比較的弱毒と考えられていますからいいようなものの、国も本気で感染の拡大を防ぎたいのなら、すべての疑わしい患者を一般の病院や診療所にまわさず、積極的に一カ所に集約すべきでしょう。
もっとも、現実的にはそのあたりの対策のつめがまだできていないというのが現実です。少なくとも、予想される鳥インフルエンザによる死亡率よりは低いわけですが、通常のインフルエンザよりは高いことも間違いない。十分に注意をするに越したことはありません。
今の時期に季節性インフルエンザがいないわけではありませんが、それなりの症状を呈した方はそれなりの確率で新型インフルエンザなのかもしれません。保健所や公立病院が発熱相談を受け付けていますが、心配ないから一般の医療機関に受診しろと指示されても、その中には新型インフルエンザの患者さんが混ざっていることは十分にあります。
5月はじめから品薄になっているマスクは、大変手に入りにくい状況になっています。自分たちのような整形外科のクリニックでは、実際にインフルエンザを心配する患者さんが訪れるわけではありませんが、様々な状態の患者さんが出入りするわけですから、それなりの注意は必要です。
また、タミフルなどの抗ウィルス薬も同じく5月はじめからまったく手に入らない状態です。薬の問屋さんにあった分は、どうも国がすべて備蓄用に押さえてしまったようです。
すでにワクチン開発が始まっていますが、当面誰でも簡単に接種できる状態になるには相当な時間がかかると思われます。この辺はメディアでもまったく触れていませんが、ワクチンが使えるようになった時の優先順位というものがあることはご存知でしょうか。
国の運営にかかわる仕事をしている方(政治家とか役人)、市民生活の維持に必須の仕事に携わっている方(警察官とか消防関係など)、そして実際の治療にあたる医療関係者などが最優先というのは、理解してもらえると思います。
じゃあ、その次は。体力がなく生命の危険にさらされやすいお年寄りでしょうか。たぶん、実は違います。こどもなどの若い人が優先されます。このあたりのことは微妙な話ですから、自分がいろいろ言うべきではないかもしれませんが、国民の間で一定のコンセンサスを得ておかないと大きな問題になるでしょう。
よけいな不安をあおることは慎むべきですが、少なくともいろいろな準備の一つとして、みんなが考えておかないといけないことは山ほどあります。景気が悪い時期だけに、経済の停滞を招きたくないというのも当然ですが、いざとなれば一定期間の経済活動の停止もあり得るわけです。
とにかく、自分だけはならないというような根拠のない自信を持たず、みんなが冷静に一定の行動をとることが大切です。