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2012年2月8日水曜日

Mutter / Beethoven Violin Sonatas


ベートーヴェンはね、聴けば聴くほどに味が出てきて、そりゃもうどんだけすごい作曲家だったのかと、今更のように感心してしまうのです。

ヴァイオリン・ソナタについては全部で10曲が残されていて、もともとヴァイオリンの高音のキーキーする感じが好きではなかったので、それほどまじめに聴いていませんでした。

ほんと、どうもすみませんでした。大変失礼をしました。このジャンルでも、やはり素晴らしい曲をのこしていたんですね。タイトルがついているのは2曲で、その「春」と「クロイツェル」が特に有名。

ベートーヴェンはピアニストとしては、かなりテクニックのある演奏者であったと言われています。ですから、ピアノソナタなどは、まさにベートーヴェンの頭の中でひらめいた音符を自分でも確固たる自信をもって書き連ねていったはず。

しかし、ヴァイオリンについてはどうしたんでしょぅか。ヴァイオリンという楽器の特性を知り抜いて、理論の中で最大の効果を発揮できる譜面を書いたのでしょうか。

少なくとも、チェロソナタにも言えることですが、ピアノ・パートは単なる伴奏とは言えないのが、ベートーヴェンの最大の特徴でしょぅか。クロイツェルの例を待たずとも、ヴァイオリンという単音中心の楽器の合間をピアノが隙無く埋めていき音楽全体の空間を濃厚な時間軸で進めていくのです。

ヴァイオリンもさまざまなテクニックを要求され、一台の楽器とは思えないさまざまな音を紡いでいくのです。最初に聴いたのがムター盤だったので、なおさらヴァイオリンの響きが強調され印象深く感じました。

ムターは現代女流ヴァイオリンの頂点にあり、ヴィブラートを多めに用いて艶のある演奏を聴かせてくれますが、時にやり過ぎの感もあります。そこを堅実なオーキスのピアノにより、適度の抑制を残してバランスを保っている。

クレメールとアルゲリッチは、その点ヴァイオリンとピアノのバランスは対等で、どちらも攻めるところを激しく攻めて、互いに挑発しあうような駆け引きがものすごい緊迫感を出しているのです。

両者が互いを知り尽くして、1+1=3にも4にもなろうかという怒濤の演奏で、自分としてもムター盤よりもより聴く頻度は高くなります。ただし、軽く聞き流すには向かないので、多少時間的には制約を受けるかもしれない。

この二つの演奏は、どちらも気分によって繰り返し聴きたくなるわけで、ちょっとでも興味は持たれた方は、絶対にどちらもそろえることを是非にお勧めします。