DGから登場するアルゲリッチの集大成シリーズは、過去にソロ、協奏曲、室内楽、デッカ音源ものと4つあります。今回はまさに盟友と呼ぶにふさわしいヴァイオリンのクレメールとチェロのマイスキーとのデュオが発売されました。
全13アルバムをすべて収録しており、もう火花の散るような両雄の駆け引きが堪能できます。この3人はテクニック的にも音楽性も、時代の頂点を作った人たちですから、いずれをとっても流し聴きできるようなやわな録音はありません。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、あまりに過激な駆け引きで一部の評論家には「やりすぎ」と不評だったりしました。つまりヴァイオリン・ソナタなのに伴奏のピアノが前面に出すぎで、品がないという評価だったのです。
しかし、もともとベートーヴェンはヴァイオリンとピアノをほぼ対等に据えることで、音楽的な駆け引きを期待して作曲していたわけで、そこを深く切り込んだ演奏は正当な解釈だと言えます。
ベートーヴェンのチェロ・ソナタも同じで、チェロとピアノの互いにつつき合うところが面白い。アルゲリッチはところどころで、マイスキーを食ってしまうくらい。このあたりは2枚のライブ盤でより顕著で、聴いていてたいへんスリリングに展開は本当に聞き入ってしまいます。
バッハのチェロ・ソナタ、シューマンのヴァイオリン・ソナタとチェロのための音楽、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタなど、もうどこまでで楽しめるセットなのです。