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2012年3月19日月曜日
Maisky / Schubert Songs without Words
シューベルトは、まぁ短い生涯を考えると、膨大な作曲を残した物です。若くして病に侵され、さぞかし悲痛な面持ちで毎日をすごしていたことでしょうか。そういうところは、もしかしたら太宰治にもイメージがかさなるところがあるかもしれない。
しかし、彼の作った曲の大半は、けっして暗くはありません。美しいメロディが多く、音楽の楽しみを実によく表している。ベートーヴェンのようなごつい雰囲気はなく、モーツァルトのようなバカ騒ぎ的なところもない。これは、彼の代表的な得意分野である歌曲からきているところが大きい。
シューベルトの作った歌曲の膨大な数は驚き物ですが、歌曲全集というとCDで40枚くらいは必要になっています。もちろん「冬の旅」のような有名な歌曲集もありますが、その大半は世俗歌と呼ばれる、今で言えばポップスの範疇に入る物。
オペラのような壮大なスケールのものも好まれたのでしょうが、ちょっとピアノの伴奏で歌う小品もずいぶんと需要があったのでしょう。「野バラ」のように大ヒット曲もあれば、まったく受けなかったものもあったりしますが、いずれにしても、毎度書いていることですが、自分の場合はどうしても声楽に馴染めない。
由紀さおりさんが歌ってくれればすんなりと耳に入ってくるのでしょうが、残念ながらクラシックの歌唱がどうしてもだめなんです。そのあたりは、もしかしたらリストも同じだったのかもしれません。と、言うのは、リストはシューベルトの歌曲をピアノ独奏用にたくさん編曲していて、自分もけっこう楽しめるのです。
ただ、やはりピアノだけだと、せっかくの旋律が多少埋もれてしまう感じがします。そこで、大変便利なのがマイスキーのチェロが歌のパートをひいてくれるこのアルバム。
チェロの多少低めで太い音質が、ちょうどテノールくらいの質感で再現されて、大変心地よいのです。クラシックだと、どうしても原典至上主義的なところがあって、こういう編曲物は邪道と考えがちですが、より音楽の本質をしっかりと聴かせてくれたりするので、なかなかあなどれません。