診療報酬点数表は、日本の保険医療の「定価」を定めるもので、2年に一度厚生労働省が改定をしていきます。1点10円で計算しますが、その内容は複雑で、医療関係者でもすべてを熟知している人はそうそういない。
点数の付け方によって、国が医療をどの方向へ誘導しようとしているかがわかります。たとえば、前回の改定では、病院勤務医とくに救急医と小児科医の負担を軽減することが目標としてめだっていました。
例えば、夜間の救急を開業医も少しは担当しろということで、遅い時間の診療に加算点数をつけたりしました。しかし、単純に点数を増やすだけではそう簡単には問題は解決しない物です。どこかお役所の考えていることは、どうも現場を知らずに机上の空論というところが少なくない。
今回の改定では、在宅関連がかなり補強されていて、在宅医療をやってくれればお金をいっぱいだしますよ、というカラーが相当強調されています。
ずーっと昔には、いわゆる薬漬け診療という言葉がありました。薬価差益ということばもありました。つまり医療機関は、診療点数で決まっている価格よりも安い値段で薬を購入し、その差額が収益になっていたので、薬をやたらと出すようになったわけです。
このような過剰診療が、医療費を圧迫する原因の一つであったことは間違いない。お役所は、医薬分業を進めて、医療機関は自分のところで薬を出すことはまれになった(院外処方)わけです。しかし、今度は薬局側に莫大な差益を落とすことになりました。
その一方で、実は患者さんの側からも知らずに過剰診療を期待する部分もあるのです。例えば、擦り傷。たいていの擦り傷なんて、水でよく洗ってほったらかしでも治ってしまいます。毎日のようにガーゼを交換するというのは、治りかけの組織を毎日はがして治りにくくしているようなものです。
ところが、自分も実際に経験したことですが、毎日処置をしないと何もしてくれないと不満を持たれることがあるのです。このあたりは、意識改革を少しずつしてもいくしかありません。
もちろんそれだけのことでは語れないような問題を含んでいるのですが、何にしても今の診療報酬点数のシステムでは、何かをしないと医療機関は収入を得られないわけで、どうやっても過剰診療の根っこが消えていないわけです。