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2013年6月16日日曜日

J.E.Gardiner / Beethoven Complete Symphonies

80年代から90年代にかけて、クラシック音楽の分野では、それぞれの作曲家が実際に思い描いていた音を再現したいという機運が高まってきました。

現代の通常使用される楽器というのは、モダン楽器と呼ばれ、時代と共に改良(一部改悪?)を重ねてきて、例えばベートーヴェンが活躍した18世紀末から19世紀はじめの頃のものとは似て非なる部分がけっこうあるわけです。

ベートーヴェンの32曲あるピアノ・ソナタだけで見ても、後期にいくにつれてどんどん使用できる鍵盤の数は増えていて、楽器の改良が盛んに行われていたことがしられています。

そもそもメトロノームも、だいぶ性能に違いがあったらしく、楽譜に指定されている速さは今のメトロノームで合わせるとだいぶ遅くなるらしいです。

オーケストラの人数も、現代のベルリンフィルのような重戦車のような大人数ということはありえない。もっとコンパクトな人数で演奏されていたわけですし、確かにカラヤンの演奏をモーツァルトが直接聴くことができたら、たいそう驚くことでしょう。

一部の演奏家は、博物館などに所蔵されていた昔の楽器を借りたり、そこから復元した楽器を用いて、また学問的な研究成果を踏まえて、作曲された時代の音を可能な限り再現しようと試み始めました。

そういう音楽は古楽(こがく)、使用する楽器を古楽器、その演奏法をピリオド奏法と呼ぶようになりました。しかし、実際にタイムマシンでも無い限り、本当に当時の演奏がどんな音を出していたかはわかりません。

音楽を聴く環境、会場とかも違うし、そもそも聴く側の感性も時代と共に変化している部分も必ずありますから、あまりこだわりすぎてもどうかと思うところもすくなくありません。

ただ、バッハの頭の中でイメージされていた音楽がどういうものかというのは、少しでも知りたいと思うのはファンとしては自然な気持ちです。どちらの方が正しいとかという問題ではなく、音楽に対するそういういろいろなアプローチがあってもいいということでしょう。

ですから、自分の場合も、古楽を否定するつもりはなく、聴いて良ければどちらでもいいというスタンスでクラシックを楽しんでいます。

ヴィバルディの「四季」は、誰もがメロディを知っている代表的な曲の一つです。日本では、70年代にイ・ムジチのモダン楽器による演奏で一気に人気となりました。今では、ピリオド・アプローチしたものがたくさんあり、また有名バイオリン奏者に焦点を当てたものも少なくない。

古楽器により「四季」はイタリアのイル・ジアルディノ・アルコーニのものを持っていますが、早いテンポできびきびした演奏なのですが、実は自分はまったくおもしろくない。今では時代遅れとなった感があるイ・ムジチの方が、華やかで四季の色合いもわかりやすくいいと思うのです。

ベートーヴェンの交響曲では、自分の場合はモダン楽器による、かなりゆったりとした荘厳なベーム/ウィーン・フィルとか、若さの勢いがあるバーンスタイン/ニューヨーク・フィルなどが、けっこうよく聴く方でした。

しかし、ガーディナーの1991年~1994年の録音で、名盤とされる全集がピリオド奏法によるものとしては、なかなか良いのです。オーケストラの名前は、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク。なんか、とても覚えにくい名前ですが、要するに「革命と浪漫の管弦楽団」という意味でしょうか。

きびきびした演奏と、少ない人数にもかかわらず古楽器の響きが負けておらず、しかも楽器の一つ一つの音が鮮明になっていて、曲の本質が直接耳に届いてくるような感じがします。

もともと大編成のオーケストラ作品があまり好みではないので、自分にはちょうどいい感じなのかもしれません。古典~ロマン派くらいまでのオーケストラ作品は、かえってピリオド奏法のものを漁ってみるのもいいかもと思ったりします。