基本的に恋愛映画は苦手。甘ったるいセリフを聞いていると、何か、こっちが恥ずかしくなってしまう感じて、真面目に最後まで見る気になりません。
恋愛もので最後まで見れる数少ない映画の一つがこれ。だいたい、タイトルからしてかなりベタな邦題ですが、オリジナルは"An Officer and a Gentleman(士官と紳士)"というもので、邦題の方が内容を直感的に表現しているのかもしれません。
公開当時、主題歌のヒットして大人気を博した、今や大物になったリチャード・ギアの出世作の一つ。退廃的な生活を止めて、士官学校に入学した若者が、いろいろな試練を乗り越えて街の女性との恋を成就させる・・・ラストは「よくやった!!」と思わず拍手喝采したくなるハッピーエンドです。
ここで取り上げるのは、アメリカの士官学校が取り上げられているから。この時期、立て続けにいろいろな形で映画に登場しました。
キューブリックの「フルメタル・ジャケット」では、ある意味、映画の主人公でもあるパワハラ度マックスの鬼教官が登場し、新兵の人格を否定して殺戮マシーンへ作り替えていきます。
イーストウッドの「ハートブレイク・リッジ」は、今や時代遅れとなった老兵が、教官としていかにも今どきの若者らしい兵士を、彼らに媚びることなく鍛え上げていく様子が描かれました。
この映画では、士官学校は主人公の人間的成長の場です。フルメタのような鬼教官はいますが、これがまた実に人間味がある。厳格で妥協せず鍛えるのは、生徒が死なないようにするためであり、それがまた国家のためという実直さからきていることがよくわかる。
軍曹である教官にとって、生徒が卒業し下士官になることは一つの仕事を終えたことを意味し、かつての生徒に"Sir"を付けて呼ぶことが一つのけじめです。
描かれる訓練は似たり寄ったりのところがありますが、どこに視点を持っていくかによって物事のいろいろな側面が見えてくるような気がします。