2018年12月17日月曜日

The Hidden Figures (2016)

直訳すると「隠れている数字」ということですが、確かにそれだとこの映画の内容が伝わりにくい・・・と思った配給会社がつけたタイトルが「ドリーム」です。

ただし、これがけっこう大問題になった。初めにつけたタイトルは「ドリーム 私たちのアポロ計画」というもので、実はこれはその前のマーキュリー計画の話なので、アポロ計画は無関係。

いろいろと批判が噴出して副題が公開の間際に削除されたわけですが、それでも「ドリーム」はどこから来たのか?

おそらく、黒人3人のコーラス・グループのシュープリームスを題材にした映画「ドリーム・ガールス」を意識したことは間違いない。

できるだけ興行成績を上げるために、いろいろと邦題を考えるんでしょうけど、これに関してはあまりいただけません。それでも、映画そのものが良かったので救われました。

アメリカの威信を賭けた宇宙開発で、最初に人を宇宙に送り出したマーキュリー計画を天才的な頭脳で支えた3人の黒人女性の話です。基本的には実話ですが、もちろん映画的な創作・脚色は混ざっているようです。

まず驚くのは、現代では、特に日本人からは想像できない黒人に対する合法的な差別が「自由の国」アメリカにあったということ。まるで、アパルトヘイト時代の南アフリカじゃないですか。

その中で、積極的な人権運動をするわけではなく、黙々と自分の頭脳をフル回転して責務を果たし、認められていく三人に対して、惜しみなく拍手を送りたくなります。

そして、もう一点も今のようなコンピュータは無い時代、すべての高度で微細な計算をすべて人がこなしていたということも驚きます。当然と言えば当然ですが、60年代は確かに大型電子計算機が導入される本当の黎明期です。

どうしても、実際に宇宙に行ったパイロットたちに焦点が当たりやすいところですが、影で支えていた地上スタッフの努力の量も相当なものだったということ。

映画は、三人の女性たちの葛藤だけでなく、家族との小さな幸福も交え、ストーリーがテンポよく展開していきます。アカデミー賞などでは無冠に終わりましたが、十分に名作として讃えることができる作品です。