2019年1月13日日曜日

ちはやふる 上の句・下の句 (2016)、結び (2018)

映画でも、内容を簡潔にわかるように分類するというのは普通のこと。そこで「ちはやふる」なんですが、「青春物」とか、「恋愛物」とか、「コメディ」などなど、いろいろなジャンルが当てはまる。

ただし、一番ふさわしいものを一つだけ挙げるなら、直接的なスポーツではありませんけど「スポ根物」というのがいいかと思うくらい、登場人物の頑張りがすごい。

もともとは少女漫画ですが、当然原作は呼んだことはありませんし、本来マンガが原作の実写化映画の多くは、マンガの人気にあやかってヒットだけを狙っているような、映画としては駄作が多いのであまり興味が無い・・・んですが、ひょんなことから見てしまったこの映画、なかなか只物ではありません。

監督は小泉徳宏で、あまり作品は多くない若手の一人。ところが、たくさん出てくる主要人物のキャラクターの描き方がうまい。脚本も担当していて、3作でのぶれがなく、またストリーごとの主人公たちの成長の過程も納得できる作りはたいしたものかも。

基本的には、小さい時に競技かるたのチームだった三人(広瀬すず、野村周平、新田真剣佑)が、敵味方に分かれ団体で、あるいは個人で対戦していく中で成長していく話。競技かるたという、ややマイナーな競技をわかりやすく説明してくれているし、また興味深く話を追いかけていくことができました。

当初は、高校1年生の前後編の2部作で終了する予定だったようですが、高校3年になった続編が作られることになり、登場人物もリアルに2年間での成長が映画の中にうまく投影されています。続編は2匹目のどじょう的なものが多く、やらなきゃよかったのにと言いたくなる映画が多いものですが、ここでは続編を作った意義がはっきりしていて、3作続けてみることで映画としての完成度の高さを実感することができます。

あらすじとかは、いろいろなネット情報におまかせするとして、まず痛快なのが主人公の千早を演じる広瀬すずのはっちゃけぶり。かるたに対して真っすぐで、一度やると言ったらとことん突き進むところがめちゃめちゃいい。

ひそかに千早に好意を抱く太一(野村)は、何をするにも千早のため。結局、かるたを続けているのは千早のためで、最後に自分の進み先が見えなくなってしまう。新(真剣佑)は、名人の祖父が亡くなり、祖父のためとがんばっていた目標を失いますが、千早たちをみて、自分のためにかるたを再開する。

とにかくうまいと手をたたきたくなるのは、最終的な部分を直接的にえがかないところ。スポ根としては、最後に勝利を手にして万歳で終わる。あるいは、恋愛ものとしては、三人の三角関係に決着がついて、どちらかが潔く手を下ろしてさわやかに去っていくというところ・・・

これらをいずれも、アニメーションで処理することで、むしろ主人公たちの成長していく姿を印象付けたと言えます。今まで、皆からもらってばかりだった千早が、最後の最後、今度は自分がみんなに上げる番だと悟っていく流れは素晴らしい。映画のラストシーンは、そんな千早の将来をチラ見せして終わるのも粋な計らいです。

難しいことを言わずに、とにかく楽しんで、出てくる登場人物の全員を応援して、そしてさわやかに見終えることができる映画でした。