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2019年1月20日日曜日

君よ憤怒の河を渉れ (1976)

高倉健の東映退社後、最初の映画は西村寿行原作のアクション物のサスペンス映画でした。健さんは、大手映画会社のヒット作量産体制によるマンネリ化に対して、危機感を感じていたわけで、徳間書店が企画した一本立て興業作品の先駆けとなる本作の出演を快諾したわけです。

監督は「新幹線大爆破」に続いて佐藤純彌があたり、健さんは濡れ衣を着せられた検事という新しい役どころに挑戦しました。しかし、アクション・ドラマとしては、かなり展開が強引であることや、シリアスな場面でのあまりに呑気なBGMは映画としての格を落としたことは否めません。

人間性を演じ切る健さんの特徴も生かし切れてなく、今一つ主人公に感情移入しにくい感じがします。健さんは、珍しいラブシーン(というほどのものではないけど)や、廃人となったふりをする演技など、今までにない役柄に挑んでいる点は面白い。

いきなり街頭で強盗・強姦犯人とされた検事の杜丘(高倉健)は、無実を証明するために捜査を担当する矢村警部(原田芳雄)のもとから逃亡します。偽証した男を追って北海道にわたりますがすでに警察の包囲網がしかれていました。牧場主(大滝秀治)とその娘、真由美(中野良子)の助けを得て、やったことがないセスナを操縦して東京に戻ります。

代議士の自殺事件に疑問を持っていた杜丘は、単独で捜査をつづけていたため、黒幕の長岡(西村晃)にうとまれ罠にかけられたのでした。長岡の息のかかった病院に乗り込みますが、院長(岡田英次)により監禁され、精神を破壊する薬を投与されます。

実は杜丘は薬を服用したあと、すぐに吐き出すことでじっと機会を待っていたのですが、そこへ真実を知った矢村警部がやってきて院長は自殺します。二人は国外に逃亡しようとしていた長岡のもとに向かい、長岡を射殺するのでした。

・・・と、まぁ、あらすじはこんな具合なんですが、やはり、逃亡の経過を追いかけていくところに重点が置かれていて、それぞれのキャラクターの描写は不十分です。主人公の杜丘、真由美、矢村のいずれも、無茶な行動をする理由がよくわからない。

ただし、原田芳雄は、「新幹線大爆破」のオファーがあったのですが、「新幹線が主役の映画は嫌だ」と断ったそうですが、完成した映画を見て悔やんだそうです。ですから、この映画の出演は快諾したという逸話が残っていて、当時のニヒルなキャラが立っています。

また、文化大革命後の中国で最初の外国映画としてこの作品が上映され大ヒットとなったことは有名な話で、中国では健さんはヒーローとして人気を呼びました。2017年には「マンハント」のタイトルでジョン・ウー監督がリメイク、矢村役で福山雅治が出演したことは記憶に新しいところです。