オランダといえばコンセルトヘボウにどうしても目や耳がいきがちですが、当然他にもしっかりとしたオーケストラはあります。
エド・デ・ワールト(Edo de Waart, 1941-)はオランダの指揮者で、コンセルトヘボウ管のオーボエ奏者でしたが、1964年にミトロプーロス指揮コンクールで優勝し(アバド優勝の翌年)、ニューヨーク・フィルでバーンスタインの助手をしました。その後ハイティンクのもとコンセルトヘボウ管弦楽団の指揮者助手として実力を蓄えました。
そこからは、ロッテルダム・フィル、サンフランシスコ響、ミネソタ管などの首席指揮者、音楽監督などほを経て1989年にオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者に就任しました。この時期に、ワールトは一気にマーラーの交響曲全集をライブで完成しました。
1995年以降は、シドニー響、香港フィル、ミルウォーキー響、ロイヤル・フランダース・フィル、ニュージーランド響などで活躍し続けています。超有名とはいえないまでも、着実に実績を積み重ね多くのレコーディングもこなしています。
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団(Radio Filharmonisch Orkest, RFO)は、オランダ放送協会(NOS)が戦後に設立したもので、ハイティンクも音楽監督を務めたことがあります。ワールトの後は、ズヴェーデン、シュテンツが監督を務め、2019年からは美人の女性指揮者カリーナ・カネラキスが就任したのも話題になりました。
マーラー全集は、第10番は含まれません。すべてライブ・レコーディングで、場所はコンセルトヘボウ。ホールの豊かな響きが、より音楽の奥行きを深めています。
1992年 第5番
1993年 第4番 第2番 第1番
1994年 第6番 第7番 第8番
1995年 第3番 第9番
話題性と言う点では、やや低くなってしまいますが、コンセルトヘボウだけではないオランダのオーケストラの底力を感じます。
全体的には素直な演奏ですが、録音のせいなのか管楽器が少し弱い感じがところどころであります。第10番と「大地の歌」まで含まれていれば、全集としてかなり評価が高まったかもしれません。