厳密にはマーラーは現チェコ出身であり、そしてチェコ出身の指揮者でラファエル・クーベリックに続いてマーラー交響曲全集を完成させたのがヴァーツラフ・ノイマン(Vaclav Neumann, 1920-1995)です。
ノイマンは、元々大規模オーケストラが苦手だった自分としては結構以前から親しんだ指揮者。
チェコの国民的作曲家の代表と言えば、ドボルザーク(1841-1904)で、「新世界」に代表される民族的な親しみやすいメロディは昔からお気に入りです。Supraphonというチェコの有名なレコード会社があり、そこのノイマン指揮チェコフィルの全集は、自分のドボルザーク交響曲のスタンダードになっています。
ノイマンはチェコフィルのヴィオラ奏者でしたが、1947年に当時の首席指揮者だったクーベリックの急病により指揮者デヴューしました。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管監督を経て、1968年からチェコフィルの音楽監督に就任し、以後1995年に亡くなるまでその関係が続きました。
マーラーには、ゲヴァントハウス時代に数曲、その後2度の全集録音がありますが、最初は1976~1982年にチェコフィルのホームであるルドルフィヌム(芸術家の家)で行われました。そして2度目は日本との関わりがあって、キャニオン・レコード(現Exton)が1992年から制作しましたが、残念ながら逝去により第7番と第8番が収録されずに終わりました。
Gewandhausorchester Leipzig
1966年 第6番
1967年 第5番、第9番
1968年 第7番
Supraphon盤 チェコフィル
1976年 第10番(アダージョ)のみ
1977年 第5番、第7番
1979年 第1番、第6番
1980年 第2番、第4番
1981年 第3番
1982年 第8番、第9番
1971年 大地の歌 チェコフィル、ヴィエラ・ソウクポヴァー、ヴィレム・プジビル (Radio Servis盤)
1983年 大地の歌 チェコフィル、クリスタ・ルードヴィヒ、トーマス・モーザー (Praga盤)
CANYON (EXTON) 盤
1992年 第1番
1993年 第2番、第5番、第4番
1994年 第3番
1995年 第6番、第9番
ドボルザークの全集で、ノイマンの指揮は奇をてらったことはせず、大変素直な演奏をしていますが、マーラーでも基本的な姿勢は変わりません。変に盛り上げようとか、ここは泣かせようというような邪念の無い真摯に音楽に向き合う演奏です。
そこが物足りないという感想を持つ方もいるかもしれませんが、逆に作曲家に対するリスペクトが溢れているようにも思え好感が持てます。
特に1995年の第9番は、ノイマン自身のラスト・レコーディングとして有名。第7番を収録する予定だったのがオケメンバーの都合で延期になり、ノイマン自身の希望で急遽録音されたというエピソードがあります。Supraphon盤に比べて、CANYON盤は音質が格段と良くなっていますし、録音が終わった数日後に突然ノイマンが亡くなったことは、この演奏を聴く上でより深い感慨を避けることはできません。