2020年2月3日月曜日

Gilbert Kaplan LSO / Mahler Symphony #2 (1988)

立て続けに全集を聴いていくのは、マーラーソンみたいな感じで、ちょっと息切れしてきました。何しろ、交響曲だけでもまじめに聴くとだいたい連続で半日かかる。

全ての空き時間を使っても、一日に数時間がいいところですから、一人の指揮者の全集を聴きこむには1週間は必要かと。とは言え、他にもすることはいろいろありますから・・・。

ということで、全集の話はちょっと休憩して、話は一気に変わりますが、「Insttitional Invester」というアメリカの経済雑誌をご存知でしょうか。

創刊は1967年ですから、すでに57年前からある由緒正しき雑誌ですけど、もちろん最も不得意なジャンルである経済の話をしようとしているわけじゃありません。

この雑誌の創刊に携わったのが、当時26歳の青年であるギルバート・キャプランです。彼は雑誌を成功させた後、30代になってショルティに弟子入りしました。元々、音楽教育を特に受けていないのに、ストコフスキー指揮の「復活」に感激し、いつかは自分で指揮棒をふりたいという夢を持ったのです。

1982年、40代なかばに私財を投じて自らコンサートを行ったら大評判になり、その後世界中の名だたるオーケストラから客演を依頼され、「復活」専門の指揮者として有名になりました。

1988年にロンドン響と録音されたアルバムは、話題が話題を呼び、何とマーラー録音史上最も売れたアルバムと言われています。

しかも、楽譜の総譜とパート譜の細かな違いに気がつき、直筆譜を買い取り徹底的に研究して校訂を行いました。これはキャプラン稿として2005年に刊行され、国際マーラー協会のお墨付きとなり、現在演奏される最も信頼すべきスタンダードとなっています。

校訂楽譜が出版される前の2002年には、校訂稿に興味を持った問い合わせをきっかけに、なんとウィーンフィルとDGに録音を残しました。さらに室内楽版の編曲も行ったりするなど、マーラーというより「復活」専門オタクの鑑というべき存在です。

演奏は、素人の遊びと簡単に片づけられるレベルの物ではありません。ストコフスキー(これがキャプランの人生を変えたのかも)、ショルティ、バーンスタインと「復活」録音があるロンドン響が、素人の遊びと一蹴せずに本気で付き合っている演奏で、下手にいじくるのではなく真正面から正々堂々と挑んだという印象。

もちろん、これが「復活」のベストとは言えないでしょうけど、居並ぶ巨匠たちの間で、同等に扱われるだけの価値のある演奏です。

キャプランは、唯一のレパートリーである「復活」だけに後半生を捧げ、2016年の元旦に74才で亡くなりました。