エフゲニー・スヴェトラーノフ(Yevgeny Svetlanov、1928-2002)は、ロシア人でロシア人作曲家の作品すべての録音を目指していたくらい、国家が認めるお抱え指揮者の一人みたいな存在。
1954年にモスクワ交響楽団でデヴューし、1965年からはソビエト国立交響楽団、後のロシア国立交響楽団の首席指揮者を務め続けました。
何しろ大戦後、ソビエトとアメリカを中心に東西冷戦体制に突入し、鉄のカーテンで遮られてソビエト連邦の音楽業界の話はあまり西側諸国には入ってきませんでした。剛腕スヴェトラーノフが話題になるのは、ベルリンの壁崩壊、ソビエト連邦解体後の90年代からでしょう。日本でも、度々NHK響と共演し、CDも多数残されています。
ちなみに、昨年亡くなった中村紘子とスヴェトラーノフ/ロシア響のラフマニノフP協第3番は隠れた名盤です。
1990年 第6番
1992年 第1番、第7番、第9番、第10番(アダージョのみ)
1994年 第3番 オルガ・アレクサンドリア(Ms)
1995年 第5番
1996年 第2番 ナタリーア・ゲラシモワ(S)、オリガ・アレクサンドリア(Ms)
1996年 第4番 ナタリーア・ゲラシモワ(S)
1996年 第8番 オリガ・アレクサンドリア(Ms)、ガリーナ・ボリソワ((Ms)、アレクセイ・マルティノフ(T)、アナトリー・サフューリン(Bs)、ディミトリー・トラペズニコフ(T) 他
特に第6番は、ネットでは爆演で名高いのですが、全体を通して言えるのは、妙に遅かったり、やたらと速かったりと、この人独特の間みたいなものがある。
素人の耳でも、アンサンブルの乱れみたいなところに気がつくことがありますが、勢いが優っていて、小っちゃい事なんか気にする必要は無いと暗黙のうちに諭されているようです。
また、チェレスタなどの、通常楽器を修飾するような音も、マイクに近いのかよく聞こえたりするのが面白いかもしれません。
マーラーはかつて「指揮者は曲を好き勝手に解釈して演奏する」と言って、楽譜に細かい指示をたくさん書きこんでいました。スヴェトラーノフは、そんなことにはお構いなしで、自分の正しいと思う道をひた走るということのようです。
ある意味、最も独特のマーラーなのかもしれませんが、そういう捻り方も時と場合によっては面白いわけで、はまった人には名演の数々という評価になりそうです。