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2020年10月29日木曜日

マンハッタン無宿 (1968)

イタリアで成功を収めたクリント・イーストウッドは、1968年にハリウッドに戻り、立て続けに「奴らを高く吊るせ!」、「マンハッタン無宿」、「荒鷲の要塞」に出演しました。それぞれ、アメリカ製西部劇、ニューヨークの刑事物、戦争アクションという具合。

マンハッタン無宿・・・というのは、ずいぶんと謎の邦題ですが、もともとの原題は「Coogan's Bluff」で、これもまたぴんと来ないタイトル。

クーガンはイーストウッドが演じる、アリゾナから犯人引き渡しのためニューヨークに出てきた、西部丸出しの保安官の名前。bluffはブラフ、つまり虚勢とかはったりと言う意味なので、あえて直訳すると「かっこつけクーガン」というところでしょうか。

無宿は、江戸時代に「戸籍」から外されて、住所不定になった人の事で、一般に博打打とかヤクザな稼業に入ったものを指すことが多い言葉。日本の時代劇ではよく使われます。

それはともかく、この映画はイーストウッドの監督としての師匠になるドン・シーゲルと初めてタッグを組んだ作品として記憶に留めます。賞レースとは関係ないB級映画監督というくくりで語られることが多いシーゲルですが、それなりに興行収入を稼げる佳作をたくさん送り出しました。

低予算であるがゆえにテキパキと早撮りで、比較的直線的にストーリーを進め、見せるところはバシっと決めて見せる。まさにシーゲルは映画職人で、イーストウッドは徹底的にこの方式を受け継いだと言えます。

冒頭シーンは、まさにマカロニウエスタン。砂漠の中を砂煙が向かって来るんですが、馬に乗ったカウボーイかと思いきや、ジープに乗った保安官。このあたりは、イーストウッド・ファンは思わずニヤっとしてしまうところをうまくついています。

終盤のバイクでの追跡シーンは、おそらくイーストウッドがほとんど自ら走っているようです。固定カメラ、車載カメラ、演者の頭に装着したカメラなどで撮ったスピーディな映像を組み合わせて、スリル感を高めるところはさすがシーゲルというところ。

ちなみに90年代に破産した航空会社のパンナムの旅客用ヘリが登場します。発着は、当時有名だったニューヨークのパンナム・ビルの屋上で、日本人が海外旅行に憧れていた時代を思い出させます。