キャノンボール・アダレイといえば、チャーリー・パーカーに次いでアルト・サックス奏者としてジャズの世界では認知されています。
アルト・サックスがまるでおもちゃに見えるような、大きな巨体から繰り出される流麗なソロは、ファンキーな雰囲気の代表格としてふさわしい。
すぐに思い出されるのは、マイルス・デイビスのレギュラー・グループとして参加した「マイルストーンズ(1958)」と「カインド・オブ・ブルー(1959)」での演奏で、コルトレーンと対等に見事なソロを聴かせてくれました。
もちろんBlue Noteのブランドとしての代表作ともいえる「サムシング・エルス(1958)」も素晴らしいのですが、これも実質的にはマイルスのアルバム(CBSとの契約上キャノンボール名義にしたと言われています)。
一般的には、60年代の弟ナットと組んだコンボでの演奏や、「マーシー・マーシー・マーシー」のようなヒットを飛ばしたソウルフルなジャズ・ロック路線が代表作として挙げられます。
このアルバムは、実質的にはドラムのケニー・クラークをリーダーとするセッションですが、1955年初夏にフロリダからニュー・ヨークに出て来たばかりのアダレイ兄弟を、いち早く紹介することが目的で、実際にキャノンボールが大きくフィーチャーされたデヴュー盤と言えます。
実は、まだジャズの右も左もわからない頃に、廉価版で安かったという理由で最初にキャノンボールに出会ったのがこのアルバム。しょっぱなのタイトル曲が一発で気に入り、以後幾度となく聴いてきました。
リーダーのクラークは、立場をわきまえてでしゃばりすぎません。当時すでに名が知れたドナルド・バートのトランペットものりのりですし、ピアノのホレス・シルバー、ベースのポール・チェンバースの安定したサポートも悪くありません。
特に「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」はバラードのスタンダードですが、ほぼキャノンボールの独壇場で、ゆったりした場面でも、実に優雅に独創的な演奏が聴き物です。