2020年10月14日水曜日

John Coltrane / The Complete 1961 Village Vanguard Recordings (1961)

今さら言うまでも無く、ジョン。コルトレーンは、わずか数年の中でジャズの演奏概念を大きく変えてしまった巨人です。

マイルスの最初のレギュラー・グループに抜擢されたときは、「いもテナー」と言われ、実際何とか吹いてます感がありました(Prestige時代)。しかし、マイルスらのより演奏の自由を拡大したモード奏法を取り込み自らの拡張をした(Atlantic時代)後は、もう他人が用意した箱の中には納まらない演奏を行いました(Impulse時代)。

しかし、そのあまりに駆け足でエネルギーを爆発させたせいなのか、若くして病魔に倒れわずか10数年の活躍で、より伝説化する結果になったことはすでに半世紀たった今でも悔やまれる。

実はどんどんフリー化していく晩年の延々と続くブローについては、自分は凄いなとは思いますが良いなとは思えない。音楽の理論的な枠を取り払い、好き勝手に演奏する方向性は、クラシックの世界でもあるのですが、「わかりやすさ」が無くなっていきます。

そこに価値観を持つことを否定はしませんが、もしも・・・もしもを言い出したらきりが無いのは買っていますが、コルトレーンが生きていたらいずれフリーの限界にぶつかっていただろうと想像します。

それはともかく、その変革の過程で数々の名作を生みだしたことは否定できません。マイルスの元を辞して、新たにソプラノサックを手にして独自の世界を模索したあと、最初の成果を示したが1961年の一連のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ演奏ではないかと思います。

伝説のレギュラー・クアルテット結成前夜ですが、エリック・ドルフィーも加わり爆発的なエネルギーがほとばしる壮絶な演奏を繰り広げます。

当初発売されたLPレコードは「ライブ・アット・・・」と「インプレッションス」に分散していましたが、その後すべての録音をまとめたCD4枚組の完全盤が登場しました。オリジナルは、コルトレーンに的を絞って編集されていて、他のメンバーのソロがカットされていました。

これらが元々の状態になって、特にドルフィの活躍は目を見張る、いや耳を立てる凄さです。また、それがコルトレーンの火に油を注ぐ演奏にもつながっていることがわかります。ノーカットで冗漫な部分も否定できませんが、これは是非完全盤で楽しむべきだと思います。