夏季臨時休診

夏季臨時休診のお知らせ 8月14日(金)~8月19日(水)臨時休診します。

2021年3月31日水曜日

犬ヶ島 (2018)

ウェス・アンダーソン監督が、再びストップ・モーション・アニメーションに挑戦した作品は、何と日本が舞台になっています。

前作「ファンタスティック・Mr.フォックス」は、秋のイメージで全体に黄色味を帯びた色調をベースにしていましたが、今回は場面によってけっこう多くの色使いを見せてくれます。

基本的には犬たちの台詞は英語で、人間の台詞は日本語。もともと犬が日本語を話すことは無いので、吹き替え版よりも字幕版でみることをお勧めしたい。

今回も、アンダーソン作品常連の方々が声の出演で多数登場しています。中心となる犬たちの声は、リーヴ・シュレイバー、ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラムが担当。雌犬の声はスカーレット・ヨハンソン、アンジェリカ・ヒューストン、サポートで登場する犬は F・マーリー・エイブラハム、ティルダ・スウィントンらです。

人間の役を担当しているのは、コーユー・ランキン、野村訓市、高山明、伊藤晃、オノ・ヨーコ(!)、村上虹郎、野田洋次郎、渡辺謙、夏木マリといった面々。交換留学生でアメリカから来た女の子は、グレタ・ガーウィグで、彼女だけは英語(たまに片言の日本語あり)。

まずは、プロローグ。昔々、犬が大嫌いな時の君主小林は、犬を絶滅させようとしましたが、少年侍が小林を討ち取り犬たちを救った・・・そこで一句、「人間に 我背を向ける 窓の霜」。なんだかわかったようなわかんないような俳句です。

20年後の日本、メガ崎市という場所が舞台になります。その暴君の子孫にあたる小林市長は、犬を駆逐するため、密かに犬の病原体をバラまき、おかしくなった犬たちをことごとく沖合のごみの島に捨てていました。

その最初の一頭になったのがスポッツで、両親が亡くなったため市長の養子になったアタリ少年の護衛犬です。アタリは何とかスポッツを助けようと、一人果敢に犬ヶ島に渡り、島に捨てられた犬たちに助けられながらスポッツを探すことになります。

そして、いろいろこーなって、あーなって、昔の言い伝えを再現するようなことになって、アタリ少年が詠む俳句が「何故ゆえに 人類の共 春に散る花」です。これもまた、わかったようでわかんない。

とにかく、男の子が大切にしている友情とか、勇気とか、情熱とか、いろいろなものをアンダーソン流の笑いを混ぜながら表現しています。対象が犬であることで、かえって恥ずかしい感じもなくストレートに描けているのではないでしょうか。

一見、犬派 vs 猫派のような内容ではありますが、そこにはほとんど焦点をあてなかったことで、人間を含む動物全体に対して訴える普遍的な内容になったように思います。

登場する日本趣味は、日本人からすると大袈裟な感じがしないでもないのですが、和太鼓演奏、銭湯っぽい風呂、大相撲、ヤンキーに女の子、握り寿司作りとか、映画として違和感が出るほどのものではなく、むしろ楽しめるものになっています。

これまでの作品を全部見てみると、これほどまでに映像に対するこだわりがある監督というのは珍しい。一目でこの映画の監督を言い当てられるというのは、すごいことです。普通なら似たような雰囲気で、登場する俳優も同じなので飽きられてしまいそうですが、一つ一つの作品が確実に新しい何かを感じさせてくれます。

あえてランキングをつけてみると、「グランド・ホテル・ブダペスト」、「ダージリン急行」、「ファンタスティック・Mr.フォックス」あたりをベスト3にしておきますが、習作的な初期の数本を除いて、どれも甲乙つけがたい作品ばかりです。今後もアンダーソン監督の映画は注目する価値があります。

アンダーソン監督の最新作は「The French Dispatch」で、コロナの影響で遅れていましたが、今年の夏の公開が決定したようです。相変わらずの面々が繰り広げるスタイリッシュ・コメディに期待大です。



2021年3月30日火曜日

グランド・ブダペスト・ホテル (2014)

8本目のウェス・アンダーソン監督作品で、監督のこだわりがつまった、今のところ最高傑作の呼び声が高い映画です。

初めて導入されたアンダーソンのこだわりは、スクリーンサイズを一つの作品の中で変えてしまうという手法。この映画では、スタートの現代で一人のファンが作家の墓を訪れ、1985年に作家が自分の書いた小説を思い出し、1968年に小説の元ネタを知る、そしてそのネタは1932年に始まるという構成になっていて、それぞれの時代で異なるスクリーンサイズを用いることで時間軸の変化を示しています。

現代は1.85:1のビスタ・サイズ(いわゆるワイド画面)ですが、周りを黒枠で覆って全体を狭く見せています。1985年になると、その黒枠を拡大してより狭くなる。1968年は2.35:1のシネマスコープ・サイズで上下に黒い部分が残り左右は画面いっぱいに伸長します。そしてメインの1932年は137:1のスタンダード・サイズとなって、上下は一杯になりますが、左右に黒枠が入る。

普通なら、字幕を付けて説明するだけとか、古いものほど彩度を下げ、場合によっては白黒にするというのが簡単。あるいは、現代と1985年は削除しても話は成立するところなんですが、アンダーソン監督は、自分の美意識であるピンクを中心にした色彩豊かな情景を最優先として、ここでは映画の入れ物を変更するという斬新な方法で時を遡る雰囲気を表現しようとしています。

横長のシネマスコープ・サイズでは、アンダーソン監督のカメラの横への平行移動によるシークエンスの連続的な移動が実に効果的ですが、面白いことにスタンダード・サイズでは正方形に近くなり、人の動きやカメラの移動が画面の上下に変わってくる。この場合は高低差や前後の奥行に幅が出てくる演出に変わってくるのです。

さて舞台は、東欧の架空の国ズブロフカという国、高級リゾートとしてかつて栄えたグランド・ホテル・ブダペストです。1968年、今はさびれたこのホテルに作家(ジュード・ロウ)が訪れました。そこで、ホテルのオーナーであるムスタファから、何故このホテルに関わるようになったのかの経緯を聞くことになりました。話し込む二人の後ろで、手持ち無沙汰に座っているのはカメオ出演となったクリエイターの野村訓市氏。ホテルのフロントを受け持つのはジェイソン・シュワルツマンです。

1932年、ここには訪れる客から絶大なる信頼を寄せられるグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)というコンシェルジェがいました。徹底的なサービス精神は、時には老婦人のお相手すら厭わない。そこへ身寄りのいないゼロ(トニー・リヴォロリ)という名の青年が、新米のロビーボーイとして登場し、グスタヴにホテルマンのイロハを叩き込まれるのです。仲間のホテルマンにはオーウェン・ウィルソンが混じっています。

ゼロは町で人気の三段重ねシュークリーム職人であるアガサ(シアーシャ・ローナン)と仲良くなります。アガサの右の頬にはメキシコの形の赤痣があるのですが、監督のこだわりの一つなんでしょうけど、何故かはまったく不明です。メディアの特典映像に、このシュークリームのレシピが動画付きで詳細に紹介されています。

ある時、長年の付き合いがあるマダム・D(ティルダ・スウィントン)が急死し、何とその遺産である高価な絵画がグスタヴに贈られることになったのです。グスタヴとゼロが汽車でマダムの邸宅に向かう途中、すでにファシズムが迫ってきていて、二人は列車の中で秘密警察?ヘンケルス(エドワード・ノートン)によって検閲を受けます。

息子のドミトリー(エイドリアン・ブロディ)は激怒し、用心棒兼自称探偵のジョプリング(ウィレム・デフォー)と共に、グスタヴを罵倒するのでした。帰り際に、グスタヴはゼロと一緒に絵画を盗み出してホテルの自室に隠しました。ホテルの弁護士であり、かつマダムの遺言執行人を演じるのはジェフ・ゴールドブラム。なお、マダムの屋敷のメイド役で レア・セドゥが登場します。

ドミトリーらは、グスタヴを陥れマダム・Dの殺人容疑で刑務所に送ることに成功しました。しかし、ここでも親切なコンシェルジェ魂で仲間を作り、外からのゼロの協力もあって脱獄に成功。

ここで登場するのが、「鍵の秘密結社」という謎の組織。どうも有名ホテルのコンシェルジェが横につながって、時には政局にも影響するような活動を秘密裏に行っているらしい。まず、グスタヴが電話をしたのはビル・マーレイ演じるムッシュ・アイバン。アイバンが連絡を取るのがムッシュ・ジョルジュで、ウォレス・ウォロダースキー(ダージリン急行、ファンタスティック・Mr.フォックス)。続いて登場するのがワリス・アルワリア(ダージリン急行)が演じるディーノやボブ・バラバン(ムーンライズ・キングダム)演じるマルチンです。

鍵の秘密結社の結束力と情報網によって逃亡した二人は、事件の鍵を握るマダムの執事が雪山の上の修道院に隠れていることを突き止め向かうのです。ここまでは、アンダーソン監督らしい実にスタイリッシュな笑いを含んだサスペンス・コメディという感じですが、ここからはまるで往年の「007」みたいなアクション・コメディに変貌します。

いろいろな映画のオマージュ感じさせるシーンを散りばめ、複雑な構成の割にはスピーディに息つく暇を与えず展開させる編集が見事です。多くのアンダーソン一座の面々が登場するので、こういう常連の俳優を見つけるのも、アンダーソン作品の楽しみの一つ。

この雰囲気が気に入ると、もうアンダーソン・ワールドは病みつきになること間違いなしです。

2021年3月29日月曜日

SAKURA 2021 @ たまプラーザ


たまプラーザ駅の北側、東急SCのある駅前通りも桜並木があって、この時期はやわらかいピンク色に染まります。

昨日はあいにく雨でしたが、日中は大したことはありませんでしたが、夜からは強い雨になり花散らしの雨になってなければいいんですけど。

温かい日差しが射せば、駅前の広場でゆっくりしたいところですけど、雨で寒いし、そもそもコロナのこともありますから、そうもしていられません。

とは言っても、人出は多い。見かけたレストランなども、普通に人が入っている印象でした。とにかく注意するしかないですけどね。

2021年3月28日日曜日

SAKURA 2021 @ 荏田南町


荏田南町の丘の上に、荏田介護老人保健施設あすなろがあります。施設に続く道沿いに、たくさんのソメイヨシノの苗木が植えられたのは、施設が開所した2005年のこと。

たまたま、うちのクリニックと開院の時期がほぼ同じで、どらも「あすなろ」を名乗ったのは偶然ですが、以来この桜の成長は自分のことのように興味深く見てきました。

今では10m以上の高さになったたくさんのソメイヨシノが、春になると咲き誇って丘をピンクに染め上げるのは壮観です。

今年も上の方から咲き始め、下の方もだいたい満開になってきた感じです。私有地ですから、勝手に中に入ってお花見をするわけにはいきませんが、この付近の桜の名所として定着しています。


2021年3月27日土曜日

SAKURA 2021 @ 早渕川土手


横浜市営地下鉄センター南から、うちのクリニックのあるベルヴィル茅ケ崎ビルを通り越した裏にはホームセンターのコーナンがあって、そのさらに裏には早渕川が流れています。

ここも、土手沿いに桜が並んでいるので、毎年この時期は目の保養にもってこい。

ソメイヨシノよりも開花が早めで、色も赤みが強いので、山桜系ではないとか思うのですが、本当のところはあずかり知らぬところです。

去年までは、この土手は桜の下に菜の花がたくさん咲いていたのですが、きれいに整地されてしまったのか、今年はまったく菜の花はありません。

ピンクと黄色のコントラストがよかったので、残念です。


2021年3月26日金曜日

SAKURA 2021 @ 茅ヶ崎城址公園


都内は満開のようですが、横浜北部のこのあたりでは、今年の桜は8分咲きという感じ。週末は満開となり、一番の見ごろになりそうです。

コロナ渦の影響で、お花見をしようという雰囲気にはなりませんが、そんなことは花には関係ありません。

本来なら、春到来のメイン・イベントのはずで、たくさんの人を見下ろすことが無くても、誇らしげに咲いています。


2021年3月25日木曜日

ムーンライズ・キングダム (2012)

これは、まさにウェス・アンダーソン監督による「小さな恋のメロディ(1971)」みたいなもの。

「小さな恋のメロディ」は、劇場でも見ましたし、その後テレビでも見ました。少年と少女が幼い知恵を絞って、追いかけてくる大人たちから逃げて駆け落ちする話。最後はトロッコに乗って、たぶん自由な世界に向かっていくところで終わっていました。ビージーズの挿入歌も素晴らしく、サントラ盤も購入した記憶があります。

屋内のシーンについては、もう完成されたアンダーソン・ワールドは安心して見ることができます。カラフルな色彩使いと左右対称の完璧な構図はいつも通り。そこを横への平行移動と、回転するカメラがスムーズに場面を見せてくれます。

今作の問題は屋外と、暗いところでのシーンが多いこと。意識的にセットを構成することができにくいし、そもそも色彩も上がりません。今までの作品よりカット割りが多い感じはしますが、それでも人物を真横からとらえたり、自然の風景をうまく利用した対照的構成はこだわり抜いている。

舞台設定は1965年。ニューイングランド沖にあるニュー・ペンザンス島(架空の島)。両親がいない12歳のサム・シャカスキー (ジャレッド・ギルマン)は、里親から出されてこの島のボーイスカウトのキャンプで共同生活をしていましたが、仲間からは変人扱いされ嫌われ者でした。

島に両親(ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド)と3人の弟と住む12歳のスージー・ビショップ(カーラ・ヘイワード)もまた、うるさく自分を認めてくれない親や大人たちに不満を抱いて本の世界に没頭していました。

たまたま知り合った二人は、1年間にわたって文通を続け、ついて駆け落ちを決行します。とは言っても、島という限られた範囲での行動は限界があるので、このあたりは微笑ましい。

島でただ一人の警官であるシャープ警部(ブルース・ウィリス)やボーイスカウトのウォード隊長(エドワード・ノートン)は、二人を探し回り、やっとのことで島の知られていない入り江でキャンプをしているところを発見しました。

二人は離れ離れになりますが、ボーイスカウトの仲間たちは、サムに対して取ってきた態度を反省し、二人を逃がすことに成功します。しかし、その頃島には大型のハリケーンが近づいていました。

毎度おなじみのビル・マーレイ、二人の結婚を認める臨時神父のちょい役でジェイソン。シュワルツマンといったお馴染みが登場。スージーのカーラ・ヘイワード、隊長のエドワード・ノートン、司令官のハーヴェイ・カイテル、福祉局員のティルダ・スウィントン、ナレーション役のボブ・バラバンらも新しくアンダーソン一座に加わることになります。

主人公の子役二人は初めての映画出演ですが、何しろ怖くない警官を演じるブルース・ウィリスを含めて、これだけ名優で脇を固めていることで隙の無い作品を作り上げています。

スージーが持ち歩くトランクの中には、架空の小説の本が6冊。いずれも、半分本気で話が作ってあるあたりは、小道具にこだわるアンダーソンの遊び心がよく表れています。またスージーはいつも双眼鏡を使いますが、これもこだわりの一つ。遠くは見えても、近くは意外と見えていないということ。サムは近眼で眼鏡をかけているので、こっちは逆に近くは見えても遠くは見えない。

この二人の恋がいつまで続くのかはわかりませんが、こどもの時って誰しもがこれと同じとまではいかないにしても、何か冒険に出たくなることがあったはず。大人になると守りに入って、冒険はできなくなってしまう。この映画は、二人を通じて見るものに何かを思い出させてくれて、温かい気持ちになれるのです。

2021年3月24日水曜日

ファンタスティック Mr.FOX (2009)

ウェス・アンダーソン監督り新境地を開いた傑作は、何と全編がストップ・モーション・アニメーションの手法で作られました。

ストップモーション・アニメーションは、静止している物体を1コマ毎にわずかに動かしながら撮影する(コマ撮り)ことで、まるで動いているように見える技術です。通常の映画なら30コマ程度必要なので、例えば60分の動画を作るのに、30コマ×60秒×60分で10万8千回の撮影が必要で、かなりの忍耐と労力を要することは想像に難くない。

古くはレリー・ハリーハウゼンによる怪物が登場する映画、「シンバッド七回目の航海(1958)」や「アルゴ探検隊の大冒険(1963)」などが思い出されます。最近は、ほとんどCGに取って代わられてしまいましが、他の方法では代替えできない味があります。

アンダーソンは、「ライフ・アクアティック」でほとんどの水中生物を、ヘンリー・セリックの助けでこの技法を用いて撮影しました。おそらく、この時にセリックから手ほどきを受けて、今回の映画に生かすことを思いついたのでしょう。

それぞれの登場人物(動物)は10~30cm程度の大きさの精巧な人形で、これを一コマずつ微妙に動かすことは大変です(実際は24コマ/秒)。アンダーソン映画の特徴的なシークエンスはここでも取り入れられているのですが、カット割りすれば簡単なところを、平行移動で表現するのは特に難易度が高い。

原作は、児童文学作家のロアルド・ダールによる「父さんギツネバンザイ」で、ダールの映画化されたほかの作品としては「チャーリーとチョコレート工場」、「BFG」、「魔女がいっぱい」などがありますし、「007は二度死ぬ」や「チキチキ・バンバン」の映画脚本も書いています。

まず、声優陣がすごい。主役のMr.フォックスはジョージ・クルーニー、Mrs.フォックスがメリル・ストリープ。顔出しの無いアニメですから、日本語吹き替えで観てもいいんですが、この二人の声が実にはまっている。息子のアッシュは、天才マックスのジェイソン・シュワルツマン、アナグマの弁護士はビル・マーレー、敵のネズミはウィレム・デフォー、学校のコーチはオーウェン・ウィルソンというアンダーソン一座の面々です。

彼らはスタジオでマイクの前に勢ぞろいして録音するのではなく、実際に屋外だったりどこかの家の居間で、キャラクターの動きにできるだけ近い演技をしながら台詞を言い、その時に発生する音も同時に収録するという方法が取られていることも特徴的です。

フォックスは結婚と子供の誕生を機に、泥棒家業から足を洗い、新聞記者として生活しています。しかし、野生動物の本能から、人間のビーン、ホギス、ハンスの食糧倉庫に盗みに入り、怒った彼らと全面戦争になる。

そこに夫婦の愛、父親のように強くなれない息子の悩み、仲間との信頼など、定番中の定番ともいえるテーマが嫌味なく収まっているのは、やはり良質な原作によるところが大きい。ですが、短いエピソードの集まった原作を、雰囲気を継承しつつ一つの流れにつなげていったのは、脚本を書いたアンダーソンとノア・バームバック(「ライフ・アクアティック」の脚本)の手柄でしょう。

これらの経験は、次のストップ・モーション・アニメーション制作にもつながるのです。

2021年3月23日火曜日

ダージリン急行 (2007)

ウェス・アンダーソンの5作目の監督作品。これまでの10年間の作品で、少しずつその特徴を積み重ねてきましたが、ここでそのすべてが融合した映画が完成したようです。

冒頭、アンダーソン一座のメンバーであるビル・マーレイがビジネスマンとして登場。彼はインドのどこかで、タクシーに乗って駅へ急いでいる。到着したら、列車が発車したばかりで、マーレイは駆け出して何とか乗り込もうとするのですが、彼の足では追いつけない。基本的にマーレイの出番はおしまい。何て贅沢な役者の使い方でしょうか。

走るマーレイの横を抜いて、列車に乗り込めた男がいます。いきなりのスローモーションを駆使しての横への平行移動のシーンとなり、ここまでの数分間でアンダーソン・ワールドがすでに全開という感じ。

彼が乗り込んだ列車が「ダージリン急行」で、彼の名前はピーター。演じているのは、「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞を受賞しているエイドリアン・ブロディ。後ろの雑多な二等客車から少しずつ前に移っていき、特等のコンパートメントの一部屋に入ると、そこにいたのは弟のジャックで、天才マックスを演じたジェイソン。シュワルツマンが演じます。彼はこの映画の脚本にも参加しています。

さらに登場するのが、お馴染みオーウェン・ウィルソンが演じる長男のフランシス。彼が、このインドの旅を計画して、父親の葬儀以後疎遠になっていた兄弟を集めたのです。フランシスは、この「心の旅」を通じて再び兄弟の絆を取り戻したいと説明します。

彼らは食堂車に行って、それぞれの悩みを打ち明けあいます。フランシスは、この直前にバイク事故で顔中傷だらけで、頭に包帯を巻いたまま。ピーターは、もうじき子供が生まれるというのに妻との離婚を考えている。ジャックは元カノのことで悩んでいたりします。

ここもあえて同席する彼らとは無関係のインド人を加えることで、対称性を意識した絵作りをしてくるところはうれしい。この最後までセリフのの無いインド人を演じるのは、これもお馴染みとなったクマール・パラーナ。

フランシスは長男としてリーダーシップをとろうとしますが、どの組み合わせでも二人になると、もう一人を悪く言うという、兄弟間の信頼関係が無くなっていることがよくわかる。ジャックは特等を世話する係のリタに言い寄ったり、停車駅で毒蛇を買い込んだり、ついには喧嘩をしてスパイス・スプレーをバラまいて列車から強制的に降ろされてしまいます。

フランシスは、旅の本当の目的が、父親の葬儀に来なかった奥地の修道院にいる母親に会いに行くためのものだと話し、彼らは荒れ地のような田舎を歩いていく羽目になりました。途中で、川で溺れた少年たちを助けるのですが、一人だけは死んでしまいます。遺体を抱いて村に行くと、彼らも葬式に参列することになります。

父親の葬儀のことを思い出し、一つの気持ちにまとまっていたことを思い出した三人は、母親のいる修道院に到着しました。母親は、これもアンダーソン一座のアンジェリカ・ヒューストン。母親は、過去は終わったことと言い、言葉を使わず自分を出すように言います。

夜になって、列車の回想シーンが登場し、ジャックの元カノが一瞬登場しますが、これが何とナタリー・ポートマンという贅沢さ。母親は翌朝姿を消してしまいました。三人は再び、列車に乗り込みます。走り出した列車に飛び乗る際に、持っていたたくさんの荷物は放り出してしまいます。「オー・シャンゼリゼ」の歌が聞こえ、エンドロールが流れます。

ストーリーを書き出してみると、どう見てもコメディではなく、アンダーソンのおそらくテーマである家族再生の話。今回は天才的な常識を逸脱した人物は登場しませんが、三人の兄弟の考え方の違い、あるいはインドの異文化とのミスマッチが笑いを誘う作りには感心します。

自然に用いられているインドのカラフルな景観は、まさにアンダーソン素材として実にうまく取り入れられています。また、カメラの平行移動はさらに進化して、回転するような移動によってカットで繋ぐところも連続したシーンになっているのも面白い。

実は、この映画の前日譚として「ホテル・シュバリエ」という短編が作られており、ここではジャックと元カノのナタリー・ポートマンの逸話が描かれていて、ポートマンの見えそうで見えないお宝映像が出てきます。

2021年3月22日月曜日

緊急事態宣言解除


https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

緊急事態宣言が解除されます。

現状は、緊急事態宣言による感染者数の減少は底をついた感があり、このまま続けていてもその実効性については甚だ疑問が生じています。

従って、解除されるのは「もう安心です」という意味ではないことを、誰もが認識しておく必要があります。現実には、新規感染者数は少しずつ増加している状況であり、実効再生産数(一人から何人に感染しているかを示す)も1を超えています。

これ以上宣言を延長していると経済がもたないという意見がありますが、宣言解除が「経済活動の再開」と理解することは間違いだと考えます。解除されても、今までの同じような注意深い行動が必要だということです。

ワクチン接種はしないよりはましだと思いますが、切り札というのもなるかはまだ五里霧中という感じがします。実際、横浜市については、医療関係者向けはいつになったら始まるのかいまだによくわからない。ましてや、一般の方向けはどうなっているのでしょうか。

クリニックでも、当然、引き続き感染症対策は続行し、注意深く診療を続けます。そのために、来院した方々にいろいろとご不便をおかけしていますが、何卒ご理解いただきご協力をお願いいたします。

2021年3月21日日曜日

ヤッターマン (2008)

あ~、なんか久しぶりに能天気な映画を見ちゃった、という感想しかない。こういう映画のニーズがあることはわかるけど・・・

1975年に始まったタツノコプロ制作のテレビ・アニメ「タイムボカン」の後番組が、1977年~1979年の「ヤッターマン」ということで、当時はずいぶんと人気があった。リアルタイムとしては、高校生だった頃の「タイムボカン」は多少見ましたが、「ヤッターマン」は知ってはいましたがほとんど見ていませんでした。

この映画を最も楽しんだのは、自分より一世代下の方々じゃないかと思います。ですから、監督をした1960年生まれの三池崇史が「できる限り当時のアニメの雰囲気をそのまま実現した」ということは、三池さんは当時はかなりのアニメ好きだったのかと。

内容は確かに、ほぼ30分物アニメを4本つなげたような感じで、紹介編、活躍編、決戦前編、決戦後編という感じ。ヤッターマン1号(櫻井翔)、ヤッターマン2号(福田沙紀)、ロボットのヤッターワンとオモッチャマが、ドクロベエが率いる泥棒一味である、ドロンジョ(深田恭子)、ボヤッキー(生瀬勝久)、トンズラー(ケンドーコバヤシ)と対決というお決まりの展開。

映画としてメインのストーリーは、海江田博士(阿部サダヲ)が探しているドクロストーンを巡って、善玉・悪玉が戦うというもので、行方不明になった博士の娘の翔子(岡本杏理)がヤッターマンと行動を伴にします。

ギャグ・アニメとしてはそこそこ面白かったのですが、それを実写版、それもアニメの雰囲気のままにするというのは・・・だったら最初から劇場版アニメで良かったんじゃないのと言いたくなる。そもそもほとんどがCGで描かれてますからね。

それほどバカバカしい内容で、俳優さんがリアルに全力でギャグをするのは「頑張りましたね」とは言えるけど、一方で「可哀そうに」という感じも無くはない。

アニメ版声優の小原乃梨子さんたちが寿司屋の客で特別出演したり、阿部サダヲが「ファイトクラブ」さながらに一人格闘したり、最後の最後に実際には作られていない「来週の予告」を流したりと、いろいろアイデアを盛り込んでいるのはわかります。

まぁ、はっきり言って、この映画の一番の見所は深田恭子のドロンジョ・コスプレ。深キョン・ファンの方は必見です。そこんとこ以外は・・・まぁ、いいか。

2021年3月20日土曜日

お彼岸


今年は、3月17日の水曜日から3月23日の火曜日までが春のお彼岸。

そして中日となる春分の日は、本日、3月20日です。

春分の日というと、3月21日というイメージがあるんですが、それは昭和の人間の証拠。昭和の時代には、8割がた21日だった。

暦の関係で少しずつずれが出て、20日と21日の割合は平成になると半々に近くなっています。

今後の30年間は、20日の方が多くなり、21世紀後半は21日は無くなります。

ふぅ~ん、ってなもんですが、なんにしても日ごろ忘れがちの祖先を思い出して、心を落ち着けて穏やかに過ごしたいものです。

2021年3月19日金曜日

アンダーワールド ブラッド・ウォーズ (2016)

目下のところ、シリーズ最新作、第5作目がこれ。

まだその手があったのか、という感じでヴァンパイア族とライカン族の抗争に集中した話になっていて、前作でモダン化しすぎたシリーズ・カラーが復活しました。

前作で登場したセリーンの娘、イプはその血を求めて相変わらずライカンから狙われています。セリーンは、イブの身の安全のため別れ、その行方すら知りません。ライカン族を新たに統率し強力にしたのはリーダーのマリウスで、彼はイブの行方を求めてセリーンを襲撃してくるのです。

ヴァンパイア族はあいかわらず古き因習に縛られ、血の純潔を絶対視して、掟を破ったセリーンは追放されました。しかし、新たに元老院のメンバーになったセミラは、マリウスの力が脅威になってきた現状を考えると、セリーンを呼び戻し処刑人の訓練に当たらせることを考えていました。

前作で、セリーンをサポートしたデヴィッドの父親トーマスは、元老院に意見できる存在なので、セミラはトーマスからセリーンを戻すことを提案させます。しかし、セミラの真の目的はセリーンの血を得ることで、自らが元老院を支配しようと画策していたのです。

罠にはまったセリーンは、仲間殺しの汚名を着せられ、セミラによって監禁され血を抜かれます。トーマスとデヴィッドはセミラの企みを察知しますが、デヴィッドがセリーンを連れ出す際、トーマスは盾になってセミラに殺されてしまうのでした。

セリーンとデヴィッドは、北の一族、ヴァルガのもとに避難しますが、そこでデヴィッドが死んだ三長老の一人アメリアの息子であり、一族をおさめる正当な後継者であることが明かされました。

しかし、そこも安全な場所ではなく、たちまちマリウスが率いるライカンの大群に襲われます。マリウスはセリーンが本当にイブの居所を知らないことがわかると、ついにセリーンを殺してしまいました。引き上げられたセリーンの遺体は、ヴァルガらに伝わる秘法により「聖なる世界」へ転じられます。

デヴィッドは、マリウスが元老院を襲撃すると考え、自分の運命を受け入れ戦いに戻っていきます。セリーンの血を飲んで力を得たセミラが、本性を出して元老院を服従させようとしているところに、デヴィッドが戻り、セミラの悪行を暴きますが、ちょうどそこへマリウスのライカン軍が屋敷の襲撃を開始しました。

ライカンは屋敷内に侵入し壁を打ち抜くことで日光を導き入れたため、ヴァンパイアたちは圧倒的な劣勢に立たされます。そこに「聖なる世界」から半分白くなった髪の毛で戻ったセリーンが、さらなる力を得て登場し、ついにマリウスとの一騎打ちとなるのでした。

戦いの中でマリウスの血を口にしたセリーンは、マリウスの強大な力がマイケルを殺して得た血液を飲むことで得ていることを知り大きな衝撃を受けます。マイケルの血液が底をつくため、今度はイブの血液を求めていたことを知るのです。

前作と本作はいずれも90分程度にまとめられていて、比較的スピーディに話が展開します。ヴァンパイア族とライカン族の戦いに集中したストーリーで、過去の因縁の代わりに、セリーンとイブの血を巡る戦いに絞ったことが映画を明快にしました。

また、そこへヴァンパイア族の中にビクターに代わる新たな裏切り者をつぎ込んだことで、話に立体感が加わっています。ちなみにセミラを演じるのがララ・パルヴァーというイギリスの女優さんで、最初ジョディ・フォスターかと思うくらいよく似ています。

最後にセリーンの独白で、両族の抗争が終結したこと、セリーンを含めて新たな長老が選出され、一族の再建を図っていくことが語られます。ということは、ほぼシリーズとしては完結という雰囲気。

ただし、もともと第6作まで予定があるようなアナウンスがあり、実際に最後のシーンはイブ?がセリーンに会いに来たところで終わっていて、いかにも続きがありそうな気配を漂わせています。とは言っても、主役のケイト・ベッキンセイル自身は「やり尽くした」と発言しており、次回作への出演は消極的。

女性が活躍するアクション映画としては、それなりに楽しめましたが、さすがにこれ以上続けてもストーリーが迷走するか、二番煎じに終わりそうなのでやめておいた方がよいかもしれませんね。

2021年3月18日木曜日

アンダーワールド 覚醒 (2012)

シリーズ第4弾。戦いの舞台は再び現代。第1作から10年近くたちましたが、主役のケイト・ベッキンセイルの若々しさは変わらずで頼もしい。

第2作で、ヴァンパイア族とライカン族の戦いの後始末をして、長年にわたって人間族に気が付かれないようにしてきたアレクサンデル・コルヴィナスが死んでしまったため、ついに彼らの存在が明るみになってしまいました。

人間族は、ヴァンパイア族とライカン族の掃討作戦を展開。セリーンとマイケルもこの粛清から逃げ延びようとしますが、捕獲され研究材料としてアンディジェン社に冷凍保管されてしまいます。

ある時、突如解凍されて覚醒したセリーンは、視覚共有できるマイケルが逃がしてくれたものと思い、その視覚情報を頼りにマイケルを追跡しますが、ライカンに襲われている少女を発見するのです。

マイケルの視覚だと思っていたのは、実はこの少女イブのもので、彼女はセリーンとマイケルの間にできた混血種だったのです。そして、セリーンは、何と捕獲されてから12年間が経過していたことを知るのでした。

粛清からの生き残ったヴァンパイア族の一人デヴィッドの助けで、彼らの隠れ家に逃げましたが、そこにもライカンが襲撃してきます。しかも、通常の2倍くらい大きな個体となり強力な破壊力の前にイブを奪われてしまいました。

アンディジェン社は、何と生き残ったライカンの巣窟で、彼らは検査でライカンを陰性として粛清から除外して勢力を拡大していたのです。しかも、混血種として強力なイブの血液を使って、強化ワクチンを作り、かつ銀への免疫力さえも獲得しようとしていたのでした。セリーンはイブを助けるため、一人アンディジェン社に乗り込むのでした。

前作までの1000年にわたる因縁の物語は終結し、今作では世界観を形作る基本知識になってしまいました。現代社会で、医科学的な生き残りを展開するライカン族に対して、ヴァンパイア族は古き時代の因習にとらわれて弱体化している感じ。

さすがに長老3人が死んでしまうと、骨格となるストーリーが無くなってネタ切れ感は否めない。そこを救ってくれるのが、ケイト・ベッキンセイルのアクション・シーンと、巨大化した怪獣映画のようなライカンの登場というところでしょうか。

ヴァンパイア族とライカン族と人間族の三つ巴の争いと謳い文句にありますが、実際には人間族は粛清以降は安心してしまったのか、あまり活躍はしていません。もっとも、そこに深入りすると展開がぐちゃぐちゃになりそうですから、それはそれでよしとします。

アンディジェン社で、セリーンは何といまだに冷凍されたままのマイケルを発見します。しかし、セリーンは冷凍カプセルに一発の銃弾を撃ち込んで、イブを救うことを優先します。戻ってみるとカプセルは空になっていました・・・ということで、次作へつなぐつもりのネタを残して終わります。