2014年2月16日日曜日

クリニックと病院

関節リウマチの話をたくさん書いてきましたが、どんな病気でも同じことではありますが、リウマチを心配している方と、すでにリウマチと診断された方では、おのずと知りたい情報は違ってくるものです。

心配している方の場合は、リウマチとはどんな症状かとか、どのように検査をするのかとか、一般的には診断学の情報が重要でしょう。一方、リウマチが確定している方は、むしろ治療学を中心として、これから自分がどうなっていくのかを知りたいものです。

ですから、医学の中で診断学と治療学はどちらもたいへん重要で、片方だけでは意味をなさない。診断学が進んでくると、より診断の精度が上がり、治療に対しても必要性が増してくる。治療学の進歩は、より早期の発見の重要性が増して、診断学の向上にも関係してくるわけです。

21世紀のリウマチ学は、まさにこのような診断学と治療学の抜きつ抜かれつの進歩の上に成り立っています。このため、より専門性は高くなり、実地医療の現場では重視されている「ホームドクター」という存在からより遠くなっていることは否めません。

ホームドクターが診断をして、治療については専門医に送るという形が理想と考えられることが多いのですが、こういう形はなかなか連携のシステムの中でうまく機能していないというのが現実です。

クリニックの専門医と大学病院の専門医の間の連携と言うのも、なかなか難しい。セカンドオピニオンの場合はいいのですが、一人の患者さんを複数の医者が同時に診るというのは、医者も患者さんも混乱しやすいものです。

ですから、重症化や合併症などの問題があって、より多角的な高度の医療を必要とする場合に、より大きな病院に転医していただくというのが、現実的な病診連携といえるでしょう。

今年の4月には診療報酬点数の改定が行われるのですが、厚労省は大学病院が一般の患者さんを診ることをさらに制限していく方向性を出しています。医師は原則として診療を拒否できないわけですが、紹介患者以外は受診できないようなシステムがさらに強化されることは明らかです。

そうなると、クリニックの医師の役目もさらに重要になってくるわけですが、原則として関節リウマチについては、基本的には外来で完結する病気ですから、クリニックであろうと大学病院であろうとやることはかわりありません。

ですから、専門性を出しているクリニックについては、大学の医師と同じだけの知識と経験の維持が必要になってくるわけです。非専門医も、リウマチのように専門化が進んだ領域については、できるだけ早く専門のクリニックや大学病院に送ることが求められているわけです。

医学の進歩という観点で考えると、これが必ずしも最良の流れかというと、多少疑問が残ることも否定できません。大学の場合には、診療とともに研究・教育という重要な役割があるわけで、患者さんの病気が偏ることはこれらの点に不利であることは明らかです。

特殊な治療を必要としない患者さんはいないとなると、最も病気の典型的な状態を知らないということになります。また、より病気の状態が悪くなれば、たいてい遠くにある大学病院にまで通院ができなくなり、そういう患者さんもいなくなってしまうわけです。

大学病院の医者が知っているのは、ほどほどに重度の患者さんか、あるいは本当に特殊な病気の方だけということにもなりかねません。今後は、高齢化社会にも対応した、ホームドクター~専門クリニック~大学病院という、それぞれの立場の明確化が必要になってきそうです。