2020年10月26日月曜日

アルカトラズからの脱出 (1979)

サンフランシスコ湾内、市街地から沖合2.4kmのところにある小島がアルカトラズ島です。軍事要塞などに使われた歴史があり、1934年からは連邦刑務所として各地の比較的危険な囚人を集め、一人一人の独房に収監していました。


有名な所ではギャングで名を馳せたアル・カポネがいたのは有名な話ですが、数々の脱獄事件も起こっており、おそらく一人も成功した物はいないと推定されていました。何しろ周りが潮の早い海なので、島外に出れても溺死するものと考えられています。

しかし。1962年に、フランク・モリスとアングリン兄弟の3人が巧妙な手段により脱獄し、結局溺死体も発見できず、推定脱獄成功と考えている人は根強くいます。

脱獄に味方をしたのは、建物の老朽化でした。比較的容易に独房のコンクリートが崩せたのです。結局、この脱獄事件の1年後に刑務所は閉鎖され、現在は観光スポットになっています。

このモリスらの脱獄事件を映画にしたのが、クリント・イーストウッド主演の「アルカトラズからの脱出」で、実話を元に実際の脱獄計画を緻密に再現して見せました。

イーストウッドは、この映画の3年前にも「ダーティ・ハリー3」で廃墟となったアルカトラズでのクライマックスを演じています。

監督はイーストウッドの監督の師匠ともいえるドン・シーゲル。撮影はイーストウッドの長年の相棒となる暗い色調に本領を発揮するブルース・サーティース。

さすがに緊張感の張りつめ方はシーゲルの得意とするところで、脱獄に至るまでのサイド・ストーリーも含めて、狭い舞台の中でも2時間の間気を抜くところがありません。

実際に脱獄した3人以外に、おそらくフィクションだと思いますが、怖さから脱獄しそこなうもう一人を追加することで、ストーリーがより現実味を帯びてきます。脱獄手順は、ほぼ実際の事件通りで、ある意味この根気の強さと秀逸な計画を立てた知能には感服します。

イーストウッドとシーゲルのコラボはこの作品が最後で、事前の打ち合わせを徹底的にして撮影はほぼ一発撮りというスタイルはイーストウッドにしっかり引き継がれることになりました。