2010年5月28日金曜日

専門医

専門医という制度は、自分が医者になった頃にはまだありませんでした。ただし、専門医制度を作るという動きは各学会にあって、自分の在籍していた大学でも、教授が将来制度が稼動したときのことを考えて研修医ノートというのを作って医局員に配布していました。

研修医ノートには、自分が担当した患者さんのリストを書く欄、執刀した手術の記録を書いておく欄、参加した学会や発表した演題を書く欄などがあって、これだけ見ればすぐにでも申請ができるようになっていました。今だったら、個人情報の関係でとても許されないかもしれません。

整形外科の場合は、日本整形外科学会がその認定を行うのですが、まず学会の会員になって6年を経過していること、そして主治医をした患者さんのカルテと手術記録を20人分を出して申請するものでした。そして、筆記試験と面接試験をうけることになるのです。

実は、最初のチャンスでは自分は不合格でした。自分のそのままの実力で合格しないと意味がないとつっぱったことを考えていて、いわゆる「過去問」というものには見向きもしませんでしたし、あらかじめ勉強することもなかったのです。

しかし、筆記試験は相当に細かいところを突っ込んでくる問題が多くて、通常の診療の中では知らなくてもいいようなことが多かった。しかも、面接試験では部屋に入るなり、「お辞儀が悪い」と言われて、小笠原流のお辞儀の仕方をくどくどと説明される(あの面接官はどこの大学の教授だったのかしら?)始末で、あえなく撃沈。

そこで、先輩から茶色い表紙の過去問の乗っている本をもらって、次の年は万全を期して望みました。ところが、試験会場では周りを見ると、みんな緑色の表紙の本を持っているではありませんか。後で知ったのですが、数ヶ月前に新版が発売されていたのです。試験は新版から多くの問題が出題されていたということです。

まぁ、いろいろありましたが何とか専門医の資格を取ることができましたが、じゃあどんな役に立つのかというと・・・・ほとんど現状では役に立ちません。つまり専門医を持っていても特に有利な点はほとんど無いといっても言いすぎではありません。

かえって専門医資格を維持するために使うお金や時間(教育研修講演をひたすら聞く必要があります)のほうが膨大で、休みが取れない開業した医者にとってはけっこう大変なことなのです。とりあえずとったからには、何とか維持していくしかありません。というわけで、とにかく単位をとり続ける努力をし続けるわけです。