ロッシーニ(1792-1868)とともに、19世紀前半にイタリアを代表するオペラ作曲家として有名だったのが、ドニゼッティ(1797-1848)。オペラの作品だけでも70くらいあるようで、数だけならライバルのロッシーニやベッリーニよりも多くの作品を残している。
ところが現在ではほとんど顧みられることはなく、CDを探してみてもごく限られた数曲のオペラしか出てこない。ましてや、そんなドニゼッティのピアノ曲なんてものは・・・いや、それがあるんですね。なかなか、マニアックな趣味をくすぐるような演奏ばかりを録音してくれているのがピエトロ・スパダさんというイタリアのピアニストが全集を出していました。
実は「ノクターン」の創始者として有名なジョン・フィールドのピアノ全集を唯一録音していて、これがなかなか良いのです。半年前くらいに購入してから、スパダの他の作品を探していて気になっていたのがこのドニゼッティだったのです。
ドニゼッティの時代はベートーヴェンよりも少し後、シューベルトと同い年、シューマンよりもちょっと前というところ。一番自分的には美味しい時代ということで、いわゆる古典派からロマン派への移行期になるわけです。
ところが、いつものHMVではほぼ入所困難状態でなかばあきらめていたのですが、こういう時はAmazonが本当に役に立つのです。世界中から、売れ残っているほぼ廃盤みたいなCDの情報がけっこう入ってきているので、HMVでは無理でも割と簡単に手に入ったりするのです。そんなわけで、法外なコレクター価格ではなく、正規のリーズナブルな値段で新品をゲットすることができました。
さて、内容はというと、まさに予想通りです。ベートーヴェンよりも明るく、シューベルトほど理屈っぽくなく、シューマンほど甘すぎず、ほどほどにイタリアンなピアノ曲集なのです。どちらかというと古典派に近いのだろうと思うのですが、おそらく自分で演奏する方にもわかりやすいものなのではないでしょうか。
逆に言うと、同じ頃にショパンが、ピアノ曲を芸術音楽として完成させていたわけですから、当時としてもやや流行に遅れていたのかもしれません。いろいろなピアニストがこぞって演奏したくなるほどの強烈なインパクトは無いのかもしれませんが、肩肘はらずに楽しむことを音楽の基本と考えるなら十分に成立する内容ではあります。